狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『ツクツク法師/夢野久作』です。
文字3000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約8分。
ツクツクボウシの鳴き声が「ツクツク惜しい」って聞こえる理由。そこには世にも恐ろしい由来がある。それにかかわっているのが集団心理。ワールドカップで暴動が起きたりするあれ。
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
昔、あるところに、欲ばりの坊さんがいた。お経を読んで稼いだお金を大きな甕の中にためていたが、泥棒にとられるのが怖くなった。そこで甕を庭に埋め、その上に樫の木を一本植えた。
「樫の木よ樫の木よ、お前にそのお金はやるから大切に番をするんだぞ」
樫の木は大きくなり、夜になって風が吹くと、木の葉の間でチャランチャランと音がするようになった。
ある年、村が飢饉に襲われ、困った村人たちが坊さんに「お金を貸してほしい」と頼みにきた。しかし、坊さんは「お金はない」と知らん顔をした。
夜になり、あのチャランチャランが聞こえてくると、村人たちはケチな坊さんがやっぱりお金を持っていて、自分たちをだましたのだと思い込んだ。
そこで、村の中でも力が強い意地の悪い人たちが五、六人集まって、泥棒に扮して坊さんを脅かし、お金をとり上げてやろうと画策した。
泥棒に扮した人々は、ついに坊さんから樫の木の下にお金をためた甕が埋まっていることを聞きだして、それを掘り出してみたのだが……甕の中に入っていたのは、樫の木の根っこばかりだった。
坊さんは驚きながらも、「お前にやるから番をしろ」と言ったために樫の木がお金を根から吸い上げてしまったのだと悟ったが、また坊さんにだまされたと思った人々は激怒した。
坊さんはそのまま命を奪われ、甕の中に入れられて、埋められてしまった。
その後、樫の木からお金の音は聞こえなくなったが、代わりに土の下から這い出してきた蝉が、こんなふうに鳴くようになったという。
「惜しい、ツクツク。惜しい、惜しい。ツクツク、オシイ」
狐人的読書感想
ツクツクボウシの名前の由来話――蝉の怪談(?)ということで、夏にぴったりの読書で、怖いお話でしたね。
何が怖いって、ツクツクボウシに生まれ変わって「ツクツク、惜しい」と鳴くお坊さんも怖いのですが、勢いでお坊さんの命を奪ってしまった村人たちが恐ろしいです。
いわゆる、集団心理というやつです。
先日のサッカーワールドカップ(2018年ロシア大会)ではフランスが20年ぶり2度目の優勝を果たしましたが、これによって暴動が起こってしまったのは記憶に新しいところです。
日本でも初戦のコロンビア戦で大金星を挙げた際、渋谷のスクランブル交差点とか大変な騒ぎになったと聞きます。
スポーツイベントによる暴動などは、現代では一番わかりやすい集団心理の例だという気がします。あとは、株価暴落とか、インターネット上での炎上だとかがわかりやすい例でしょうか。
集団心理とは、人が集団になると、集団に特有の心理状態になってしまうことをいいます。
チームワークが高まって良い結果をもたらす場合もありますが、いじめや暴動など悪いほうに作用した場合に「集団心理」という言葉を用いることが多いように感じます。
集団心理に陥ってしまうと、
・集団による道徳性の低下、匿名性の強化
(赤信号みんなで渡れば怖くない)
・暗示にかかりやすくなる
・思考が単純になる
・感情の動揺が激しくなる
など特有の心理状態になってしまい、正常な判断ができず、普段なら絶対にやらないような悪いことでもしてしまう、というところが集団心理の怖さです。
集団心理に流されないよう、普段から自分を強く持っていよう、なんて思いますが、いざとなれば流されてしまうのが、集団心理の怖さです。
ツクツクボウシが怖くなるような、人間が怖くなるような、今回の狐人的読書感想でした。
読書感想まとめ
ツクツク惜しい、本当に怖い集団心理。
狐人的読書メモ
・ツクツクボウシの鳴き声一つで、その由来話を考えてしまうというのは凄いと思ったし、おもしろいと感じた。それとも、このような由来話がそもそも存在したのだろうか?
・集団心理に付随して「ルシファー効果」「スタンフォード監獄実験」という言葉を知って興味を覚えた。
・『ツクツク法師/夢野久作』の概要
1925年(大正14年)『九州日報』にて初出。九州日報シリーズ。初出時の署名は「香倶土三鳥」。ツクツクボウシの由来話。集団心理の恐怖。
以上、『ツクツク法師/夢野久作』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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