狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『こぞうさんのおきょう/新美南吉』です。
文字800字ほどの童話。
狐人的読書時間は約1分。
人にやさしくできないときがある。心にゆとりがないとき、時間やお金がないときである。時間やお金があっても、人にやさしくできないときは、やさしさとは? と、考えてしまう。
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
(今回は全文です)
『小僧さんのお経/新美南吉』
山寺の和尚さんが病気になりましたので、かわりに小僧さんが檀家へお経を読みに行きました。
お経を忘れないように、小僧さんは道々読んでいきました。
キミョ
ムリョ
ジュノ
ライ
すると、菜種畑の中に兎がいて、
「小坊主、青坊主」
と呼びました。
「なんだい」
「遊んでおいきよ」
そこで、小僧さんは兎と遊びました。しばらくすると、
「やっ しまった。お経を忘れちゃった」
と小僧さんが叫びました。
すると、兎は、
「そんならお経のかわりに、
むこうの ほそみち
ぼたんが さいた
とお歌いよ」
と教えました。
小僧さんは檀家へ行きました。そして、兎の教えてくれたように、仏様の前で、
むこうの ほそみち
ぼたんが さいた
さいた さいた
ぼたんが さいた
とかわいい声で歌いました。
聞いていた人々はびっくりして、目をぱちくりさせました。それから、くすくす笑い出しました。こんなかわいいお経は聞いたことがありません。
そこで、ご法事が済むと、檀家のご主人は澄ました顔で、
「はい、ごくろうさま」
と、お饅頭を小僧さんにあげました。
「ごちそうさま」
と小僧さんはお饅頭をいただいて袂に入れました。
小僧さんは、帰りにそのお饅頭を、さっきの兎に分けてやることを忘れませんでした。
狐人的読書感想
和尚さんの代わりにお経をあげに行く小僧さん、途中の菜種畑で兎に遊びに誘われて、遊んでいるうちにお経を忘れてしまい、兎の教えてくれた歌を檀家さんの家で唱えたら、みんなびっくりして笑ってしまった、最後は檀家のご主人さんが小僧さんにお礼のお饅頭をくれて、小僧さんはちゃんと兎にも分けてやったという――なんだかほんわかするお話でしたね。
登場人物がみんなやさしくて、子供のすることを温かく見守る社会というか、こういう世界であったらいいなぁ、なんて思ってしまいます。
もちろん、現在も、基本的には子供を温かく見守る社会であるとは思うのですが、しかし、みんながみんな、この童話の登場人物のような人ではない、という印象を持ってしまいます。
小僧さんを遊びに誘った兎に悪意はなかったのだろうか、大事な用事の途中で寄り道をして遊んでしまった小僧さんは悪くないのか、檀家さんのみなさんは小僧さんの適当なお経を怒らなくていいのか、そもそも和尚さんは未熟な小僧さんを代役として送り出してよかったのか……
そんなこんなで、このお話に怒りを覚える人もいるんじゃないかなぁ……などと、考えてみたのです。
が、それは僕であって、僕だけかもしれません。
人のやさしさというものは、心のゆとりからくるものではないかと思っています。
昔の村社会は、のどかで時間に追われることもなくて、心のゆとりを持ちやすかったかもしれませんが、現代社会は、みんなが時間と何かに追われていて、心のゆとりが失われているように感じられることがあります。
まあ、昔の社会がいいことばかりでもないでしょうし、また現代社会が悪いことばかりでもないのでしょうし、単純に社会環境によって人の心のゆとりのあるなしを判断することはできないようにも考えるのですが。
人にやさしくなりたいと思います。そのために心のゆとりを持ちたいと願います。心のゆとりとはお金や時間によって得られると考えます。だからお金や時間を欲します。
しかし、お金や時間を手に入れたとしても、人にやさしくないときだってあるわけで、だったら、やさしさはどうやったら手に入るんだろう?
――なんて、考える人間が、やさしくなることは不可能なのかもしれません。
そうはいっても、そんな人間でもやさしさを示せたと思えるときもあって、いつもやさしい人も本当にいつもやさしいわけじゃなく、結局やさしさといっても条件や環境がうまく整ったときにだけ現れる、単なる現象と捉えるべきなんですかねぇ……。
ひねくれものが何を言っているのか、よくわからないことを書いてしまった、今回の狐人的読書感想でした。
読書感想まとめ
やさしさってなんだろう?
狐人的読書メモ
・教育的観点からも小僧さんは叱られるべき、という考え方もできそう。ゆとりがあってのんびりしているのもよいが、現実問題としてそれでずっと人は生きていけるわけではないのだから。
・まあ、一番叱られるべきはたぶん和尚さんだと思うのだけれども、この童話を読んでそういうことを考えてしまうのは、無粋かもしれない。
・『こぞうさんのおきょう/新美南吉』の概要
1948年(昭和23年)『きつねの おつかい』(福地書店)にて初出。ほんわかするお話だが、なんだか考えさせられるお話でもあった。
以上、『こぞうさんのおきょう/新美南吉』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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