狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『トロッコ/芥川龍之介』です。
文字5000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約15分。
単純にノスタルジックだなぁ、と感じた。「うわ、めっちゃわかる!」という人もいる。調べてみると「人生や大人の社会で生きていくこと」が描かれている。現実の人と人との関係を思った。
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
八歳の良平は、鉄道敷設の工事を毎日見学しに行った。線路の枕木や土を、人力のトロッコで運ぶ様子がおもしろかったのだ。
二月初旬のある夕方、良平は土工たちがいない隙に、勝手にトロッコを動かしてしまい、「この野郎!」と怒鳴られてしまう。
それから、もう二度とトロッコに乗ってみようとは思わなかった良平だが、十日後、二人の親しみやすそうな若い土工を見かけて声をかけてみる。
二人は良平にトロッコを一緒に押させてくれて、下りでは一緒に乗せてくれて――いつまでも押していたい、いや乗るほうがずっといい、優しい人たちだ……。
ミカン畑を越えて、竹藪のある所を過ぎ、だんだん遠くにくると、良平は不安になってくる。
もう帰ってくれればいい、と念じるが、行くところまでいかなければ、土工たちもトロッコも帰れないのはわかっている。
途中休憩した茶店では、良平は一人取り残され、いらいらしながら、トロッコの周りをまわっていた。
つぎに休憩した茶店で、いよいよ良平は土工たちから、「もう遅いから家に帰れ」と言われてしまう。
良平は呆気にとられる。もう暗くなる、いま来た長い長い道を、これから一人で帰らねばならないなんて……。
良平は泣きたかった。が、泣いても仕方がないと思った。若い二人の土工におじぎをして、どんどん線路を走り出した。
泣き出しそうになるのをこらえながら、良平は駆け続けた。ミカン畑に来る頃には「命さえ助かれば――」と思うようになっていた。
夕闇の中、ようやく家に辿り着いた良平は、いよいよ堪え切れず、父母や近所の人たちの前で大泣きしてしまった――
二十六歳の良平は、妻子と一緒に東京へ出て、ある雑誌社で校正の仕事をしている。そして八歳のときのトロッコのことを思い出す。
社会の中で、日々の苦労に疲れた彼の前には、いまでもあのときの、薄暗い藪や坂の道が、細々と一筋、断続している……。
狐人的読書感想
ノスタルジックな物語でしたね。
正直、それ以外のことはあまりよくわからなかったのですが、調べてみると、このお話は「人生や社会で生きていくこと」を描いている作品なんだそうです。
そう言われてみれば、敷設中の鉄道線路は、自分で作り上げていく「人生の道」を連想させますよね。
……う~ん。
いつもながら、単純なようでいて、深い、芥川龍之介さんの小説のようです。
良平の、土工たちに対する態度は、たしかに大人に通じるものがありました。
子供にとっての一番身近な大人といえば、やはり親です。
親は子供の気持ちを理解してくれたり、甘やかしてくれる存在ですが、他の大人は決してそうではありません。
若い土工たちもまた、仕事の邪魔にならないから、良平がトロッコを押すことを許してくれましたが、しかしよその子の遊びの相手をする義理はないので、休憩中の茶店では良平をほったらかし、暗くなれば良平が一人遠い家まで帰るのは心細かろう……などと気遣うこともなく、「そろそろ家に帰れ」と普通に言い放ちます。
良平からすると、仲間に入れてもらえた気になっていたのに、なんだか裏切られたような、自分の気持ちをわかってくれてもいいのに……とか、思ってしまいそうですが、おじぎをして、泣くのを我慢して、家まで走り出したところに、大人の態度を見たように思いました。
こういうことって、子供と他の大人の関係ばかりでなくて、人と人の関係、すなわち他人との関係全般に適応することだと感じるんですよね。
たとえば友達というと、なんだか特別で大切なもののように言われていて、実際、特別で大切なものには違いないのですが、しかしマンガやアニメやゲームみたいな、命をかけて助け合う関係――みたいな感じ、現実の友達は、そういうものではないのだと思います。
あくまでも自分が第一にあって、利害関係の延長線上に、友情とか恋愛とかがあるように感じられるんですよね。
人との心の距離のとりかた――とでも言えばいいんでしょうか……そういうものって、子供の頃にはなかなかわからない気がします。
マンガやアニメやゲームの友情に憧れて、他人に期待し過ぎたり、それで失望したりして……それはただの甘えでしかないのですが、自分じゃなくて相手のせいにしたりして……人間関係を壊してしまうことだって、あるんじゃないかなあ……みたいな。
その点を、良平は八歳ですでに心得ているふしがあって、単純にすごいなあ、とか感じ入ってしまったのですが、ひょっとしたら、主流な読み方・感想ではないかもしれませんねぇ、これは(ひねくれものの感想か?)。
とはいえ、二十六歳の良平も、ひょっとしたらいまだに人間関係に苦心しているのかなぁ……なんて、的外れかもしれないことをシンパシーみたく思ってしまった、今回の狐人的読書感想でした。
読書感想まとめ
トロッコに学ぶ大人の社会「漫画みたいな仲間なんていない」
狐人的読書メモ
・だから、マンガに出てくる仲間たちは尊い。
・『トロッコ/芥川龍之介』の概要
1922年(大正11年)『大観』にて初出。又吉直樹さんが子供のときに読んで感銘を受けた小説らしい。僕は「うわ、めっちゃわかる!」とはならなかったけれど、凄い作品だとはなんとなくわかる。中学校の教科書などにも採用されている。多くの評価軸が存在する。
以上、『トロッコ/芥川龍之介』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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