狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『ゲタニ バケル/新美南吉』です。
文字1000字ほどの童話。
狐人的読書時間は約3分。
母たぬきと子たぬきが化ける練習をしていると、通りかかった侍が子たぬきの化けた下駄をはいて行ってしまい……。なぜたぬきは化けるのか? もともと化けるのはたぬきじゃなかった?
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
(今回は全文です)
『下駄に化ける/新美南吉』
村がありました。村の外を小川が流れていました。川の岸には榛の木が茂っていました。
榛の木の下ではお母さんのたぬきが子供のたぬきに化けることを教えていました。
「お寺の小僧さんに化けるときは衣をつけて出るのだよ。お侍に化けるときはまげをつけて、ひげをはやして、刀をお腰にさしてね」
「それでは、お寺の小僧さんに化けてみよっと」
子供のたぬきは小僧さんに化けてみました。けれども、大変なことに、小僧さんがピンとひげをはやしていました。
「ダメだよ。おひげなんぞつけたりして。それはお侍に化けるときだよ」
お母さんのたぬきはがっかりして言いました。
そんな具合で子供のたぬきはなかなかうまく化けることはできませんでした。それでも、どうしたことか、下駄に化けることだけは大変うまいものでありました。
そこで子供のたぬきは下駄に化けました。そして榛の木の下に転がっていました。
すると向こうから一人の侍がやってきました。侍は下駄の緒を切って困っているところでしたので、
「や、これはうまいわい、ここに下駄が落ちている」
と言って、子供だぬきの化けた下駄をはきました。
木の陰からこの様子をうかがっていたお母さんだぬきは大変なことになったと、目をまん丸くして驚きました。
侍はすたこら歩いていきました。
子供だぬきは、いまにも潰されそうで、思わず、
「ぐっ、ぐっ」
と声を出しました。侍はびっくりして足もとをみると、下駄の後ろに筆の穂のようなしっぽがちょろりと出ていました。
けれど侍は構わずどんどん歩いていきました。
「ぐっぐっぐっ、かあちゃん」
子供だぬきはたまらずとうとう大きな声を出して泣き出しました。
お母さんたぬきは心配して、木の陰を隠れて侍のあとをついていくのです。
そのうちに侍は村に入っていきました。
村には下駄屋がありました。
侍は下駄を買って、子供たぬきの化けた下駄を表に出してやり、おあしをひとつやって、
「や、ご苦労だったのう」
と言いました。
子供だぬきはおあしをもらったのでさっきの苦しさも忘れて、喜び勇んで帰っていきました。
狐人的読書感想
子供だぬきはかわいくて、ハラハラのお母さんたぬきからは親の愛情が感じられて、侍はやさしくて――心温まる童話でしたね。
タイトルが『下駄に化ける』ということで、たぬきが下駄に化けるお話ですが、「なんでたぬきは化けるんだろう?」と気になったので調べてみました。
これは中国から入ってきたお話(『山海経』に書かれている中国神話)に出てくる「九尾狐狸」という妖怪が由来となっているそうです。
もともと中国できつねを「狐狸」と呼んでいたのが、日本に入ってきたときに「狐」と「狸」に分けられて、「狐狸は化ける」という話が両者に当てはめられたかたちになります。
きつねのおまけ……派生的な扱いで、妖力を得たみたいですね、たぬき。
狐人的にはちょっと興味深いお話でした。
内容で印象に残ったのは二点です。
まず、子供だぬきが小僧さんに化けようとして、ひげを生やしてしまったとき、お母さんたぬきが「がっかり」しているところです。
子供が教えたことをうまくできなかったとき、親はやっぱりがっかりしてしまうものなんだなあ、と思うと、ちょっとさびしいような気持ちがします。
自分が親なら、がっかりしたところは子供に見せないようにしたいと考えましたが、しかしそれをバネに子供が成長するっていうこともあるんでしょうか……子育てって難しく感じてしまいますね。
もう一点は、侍が子供だぬきの化けた下駄をはいて、違和感に気づいたときの態度でした。
子供だぬきの苦痛を思えば、すぐに下駄を脱いであげればいいのに……とか思ったのですが、しかし、自分がやってしまったことの責任は、自分で取らなくてはいけない、ということを、侍は教えてくれようとしたんですかね?
悪意がなくても、他人をカン違いさせてしまうことがあるので、不用意なことをしちゃいけないよ……的な?
なんとなく侍の厳しさとやさしさを見たような気になりました。
おあしをもらって苦しさを忘れ、喜んでいた子供だぬきが、また同じことをしようとしないか、ちょっと心配ではありますが……世の中、今回の侍のようないいひとばかりとも限りませんし。
親と他の大人が示すべき、子供に対する一つの姿勢を学んだように思った、今回の狐人的読書感想でした。
読書感想まとめ
なぜたぬきは化けるんだろう? その由来とは?
狐人的読書メモ
・化ける狐や狸は創作のモチーフとして興味深いし、使い勝手もよさそうに感じた。
・良いことであれ、悪いことであれ、子供はときに親の想像を超えることをする。
・『ゲタニ バケル/新美南吉』の概要
1950年(昭和25年)5月、『がちょうの たんじょうび』にて初出。子どもの読み聞かせにおすすめ。
以上、『ゲタニ バケル/新美南吉』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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