狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『南京の基督/芥川龍之介』です。
文字数11000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約33分。
少女に起きた奇跡の真実は残酷なものだった。しかしそれを知らない少女は幸せそうだ。残酷な真実は告げられるべきか否か。プラシーボ効果、病は気から。信じる者は知らぬが仏?
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
宋金花は15歳、南京に住む敬虔なキリスト教徒で、娼婦だ。あるとき悪性の梅毒にかかり、娼婦仲間から「お客に移せば治る」と教えられる。
金花はそれをキリスト教の教えに背くことだと考え、客を取るのをやめる。生活はみるみる困窮していく。
ある晩、酒に酔った妙な外国人の男が、金花のもとへやってくる。話をしているうちに、金花はその男に既視感を覚える。
やがて男は金花の身体を求めてくる。金花はそれを拒んでいたが、ふとその男がキリストに似ていることに気づく。
まるで恋をするように、男に身をゆだねた金花は、夢の中でキリストに出会う。朝、目覚めると男の姿はすでになく、金花の病は癒えていた。
その翌年の春のこと、なじみの日本人旅行者が金花のもとを訪れ、その話を聞く。日本人旅行者はそのキリスト似の男の素性を知っていた。
その外国人の男は日米のハーフで、南京で娼婦を買い、しかし金を払わず逃げたことを周囲に自慢していた。そして梅毒によって発狂した。
梅毒は完治する病気ではない。だが、金花は無邪気にキリストの奇跡を信じている。金花のためには、真実を教えてやるべきか否か……。
日本人旅行者が、その後の病状を尋ねる。金花は一度も煩いがないと、暗れ晴れと顔を輝かせて、答えるのだった。
狐人的読書感想
イエス・キリストの言葉に「信じる者は救われる」ってありますよね。神様を信じれば、きっと神様が救ってくれるということです。
でも、「神様を信じて救われた!」と思えるような出来事があったとしても、それが本当に神様のおかげなのかどうかって、わからないですよね。
とはいえ「強く信じることで病気が治った!」なんて話を聞くこともあります。思い込みが人体に良い影響をもたらす「プラシーボ効果」という心理作用です。
神様を強く信じることで、苦悩から救われたと思うことができたなら、それもプラシーボ効果の作用であったと考えられそうです。
この場合、強く信じられたのは神様のおかげだとも言えるわけで、では「信じる者は救われる」ってこういうことなのかなって、気になりますがどうなんでしょうね?
この小説の主人公である金花は、娼婦をしていて梅毒にかかってしまい、ある日キリストが現れてそれを治してくれたと思い込みます。
しかし金花の生きる時代、まだ梅毒は完治しない病気であったわけで、おそらく金花は病状が良くなったと思い込んでいただけで、病気自体は治っていなかっただろうと考えられます。
日本人旅行者はそのことを悟っており、しかも金花が出会ったキリストはただの日米ハーフの人の悪い男だったということを知っています。
その事実を教えてやるべきか否かと、日本人旅行者は迷っているようでしたが、僕にはきっとそんなことはできないだろうし、実際それを教えようとする人は少ないのではないでしょうか?
キリストが出てくる話ですが、ここで「知らぬが仏」という言葉を思い浮かべてしまうのは、きっと僕だけではないように思うんですよね。
ふと、これは余命宣告やがん告知などにも似た状況のような気がしました。
あとどのくらい生きられるのかということは、知らせないほうが残酷なのか、知らせるほうが残酷なのか、知らないほうが幸せなのか、知ったほうが幸せなのか、みたいな?
ともあれ、いろいろと信じることが難しい現代、信じられるものがあるということは幸せなのか、あるいは不幸なのか……、そんなことを思わされた、今回の読書感想でした。
読書感想まとめ
信じる者は知らぬが仏?
狐人的読書メモ
・創作の際、金花のような気立ての優しい少女という人物像は、作中登場人物のうち必ず一人は描かれるべきキャラクターかもしれない。
・『南京の基督/芥川龍之介』の概要
1920年(大正9年)7月、『中央公論』にて初出。谷崎潤一郎の『秦淮の一夜』に依拠している。フローベールの『聖ジュリアン』の文学的技法や描写法の影響もあるとの見方も。完成された短編小説である。
以上、『南京の基督/芥川龍之介』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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