まずはあいさつ(あいさつなのでネタバレはなしで)
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
(「『狐人』の由来」と「初めまして」のご挨拶はこちら⇒狐人日記 その1 「皆もすなるブログといふものを…」&「『狐人』の由来」)
前回のブログ記事は国木田独歩 さん(⇒小説読書感想『忘れえぬ人々 国木田独歩』凄い小説なので四回読んでほしい!)、今回のブログ記事は江戸川乱歩 さん――というわけでお分かりの方もいらっしゃる(?)かもしれませんが、『文豪ストレイドッグス』つながりです。
江戸川乱歩 さんといえば探偵小説(推理小説)!
ミステリーなのでネタバレはなしでいきたいと思います。
ところで、ニヤニヤしてますよねえ……江戸川乱歩 さん――あっ、『文豪ストレイドッグス』の方の話なのですが。
あのニヤニヤ顔を見て、久保帯人さんの漫画『BLEACH(ブリーチ)』の市丸ギンを思い浮かべてしまうのは、はたして僕だけ? 確か、一護から「狐野郎」とか呼ばれたことがありましたねえ――狐人としてシンパシーでも感じているのでしょうか?
いきなり逸れた話を(現実の文豪・江戸川乱歩 さん、からの『文豪ストレイドッグス』の江戸川乱歩)、さらに逸らしてしまいましたが(からの『BLEACH(ブリーチ)』の市丸ギン)、また話を元に戻しまして、江戸川乱歩 さんの異能力は「超推理」(そっちに戻すんかい!)。ただし、実際には名探偵ばりの推理力があるだけで異能ではないんですね。だから、他のキャラと違って、能力名が実際の作品にちなんでいないのですかねえ……(ちなみにちなんでいるわかりやすい――言い回しがわかりにくい!――例はこちら⇒小説読書感想『羅生門 芥川龍之介』テストに出るはエゴ!黒獣は出ない?)。
そんなこんなで(?)現実の文豪・江戸川乱歩 さんにようやく話を戻すわけなのですが、正直ほとんど知りませんでした(こんなのばっかでごめんなさい!)。有名な方なので、お名前はもちろん聞いたことがあるのですが……近年、よくテレビアニメ化されているのが印象的です(また話が……お付き合いいただけますか?)。
『TRICKSTER ―江戸川乱歩「少年探偵団」より―』ですか、おっ、なんと第2クールが今日から始まるようで、タイムリーな話題を引き当てました。第1話が「D坂蜃気楼」となっているのもジャストですねえ……チェックしてみようかなあ……。
僕が連想したアニメは『乱歩奇譚 Game of Laplace』(左の画像は漫画版)で、こちらは見たのですが……江戸川乱歩 さんファンなら楽しめたのかなあ……(あるいは……)といった感じでしたね。ただ、amazarashi(アマザラシ)さんの歌うオープニング・テーマ『スピードと摩擦』という曲はなんかよかったです(正直その印象しか……)。
江戸川乱歩 さんのペンネームが、アメリカの推理作家、エドガー・アラン・ポー さんに由来しているのは有名な話ですよね。そして江戸川乱歩 さんに由来する名前を持つ名探偵といえば……これ以上はさすがに長くなり過ぎてしまうので(ここまでついてきてくれている方、本当にありがとうございます!)、この先は後述します(じつは名前だけでなく、この名探偵の性格的モチーフとなっているのでは――と思わされてしまった箇所を『D坂の殺人事件』の中に発見しました。ファンの方は吟味していただけるとおもしろいかも?)。
それではようやく(ホントだよ)あらすじにいってみましょう。
つぎにあらすじ(推理小説なのでネタバレはなしで)
9月初旬、蒸し暑い晩(午後8時頃)、物語の語り部である「私」は、D坂の白梅軒という喫茶店でアイスコーヒーを飲んでいます。
(この「私」、学校――年齢は25歳は超えていないようなので大学?――出たばかりなので、働いていないと言い訳していますが、それってニートですよね。で、喫茶店にいる理由も、向かいにある古本屋の美人妻を見張っているようで……それってストーカーですよね……なかなかユニーク? な人のようです)
そこに明智小五郎がやってきます。
(有名人ですね明智小五郎。例のごとく僕もお名前だけは聞き及んでおります)
ニートでストーカーな「私」と明智小五郎は知り合いなのだとか。そして明智小五郎と古本屋の美人妻は幼馴染なのだとか。
(……幼馴染な人妻ヒロイン? ――なかなかいい設定のキャラですね?)
白梅軒のウェイトレスの噂話によると(しっかりと情報収集しとるストーカーな「私」!)、銭湯で見かけた古本屋の美人妻の裸は傷だらけなのだそう。また近所のそば屋の奥さんも同様に傷だらけなのだとか。
(意味深ですね。しかし傷裸体の女性が2人も――すごいところだな、D坂……)
ともあれ、「私」が白梅軒に入り浸り始めてから1時間、明智小五郎がやってきてから30分ほど経ったところで、古本屋から万引きする人を見かけます。しかも4人。古本屋というのは万引きされやすい商売です。ゆえに普段は古本屋の主人か、その美人妻が見張っている、なのに誰も万引き犯を捕まえようとはしません。
不自然に思った(ニートでストーカな)「私」と明智小五郎は、古本屋に行ってみることにしました。奥の部屋の障子を開けて、明智小五郎が電気をつけてみると……なんとそこには古本屋の美人妻の絞殺体が!
――早速警察を呼び、事情を説明する2人。
死亡推定時刻は1時間以内。1時間前から今まで、殺害現場の部屋に表から出入りした者の痕跡はなし。では裏口は? 古本屋は長屋となっており、裏口の外には一本の路地があります。しかし路地を見通せる角にはアイスクリーム屋があり、そこの主人の証言では、通行人はいないとのこと。同じ長屋に住まう11軒の住人たちの中に、怪しい物音を聞いたり、人が争う気配を感じた者はなし……つまり表の通りからも、裏通りからも、古本屋に出入りした者はおらず――状況的密室の出来上がりです。そして現場の電気のスイッチには、それをつけるときに触れた明智小五郎の指紋しか残されていませんでした……。
有力な手掛かりとして、近所の学生2人が、犯行予想時刻に古本屋を訪れていました。その証言によれば、2人は障子に取り付けられた格子窓の隙間から、犯人と思しき男の姿を一瞬だけ見たと言います。一方は男の着物は黒かったと言い、もう一方は男の着物は白かったと言います。証言の矛盾……しかし2人に嘘をつく理由はありません。
結局その日のうちに犯人は分からず、その後「私」と明智小五郎は別れることに――帰っていく明智小五郎の着ている着物は、派手な棒縞の浴衣でした……。
10日後、ニートでストーカーな(しつこし?)「私」は、明智小五郎の部屋を訪ねます。
「私」は明智小五郎に自身の推理を披露します。
犯人の動機、密室の謎、矛盾する証言の理由――
「君、明智君、僕のいう意味が分るでしょう。動かぬ証拠が君を指さしているのですよ。」
(「私」はただのニートではなかった! 「私」はただのストーカーではなかった! ごめんなさい、「私」!)
…………。
そしてかんそう(解説含む、ネタバレは含みません)
さて、いかがでしたでしょうか? 甚だ僕の偏見混じりのあらすじになってしまいましたが……偏見はよくないですよね、本当にごめんなさい、「私」。とはいえ、この「偏見」が、『D坂の殺人事件』という小説の重要なキーワードとなっているように思います。
江戸川乱歩 さんの『D坂の殺人事件』は、無料の電子書籍Amazon Kindle版で23ページ、文字数23000字ほどの短編小説です。未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
さて、『D坂の殺人事件』は、江戸川乱歩 さんが初めて挑戦された「密室もの」なのだとか。しかしながらこの作品は、「密室」そのものに重きが置かれているわけではありません。実際に読んでいただけると、その点は明白かと思います。
『D坂の殺人事件』で重要とされているのは「心理捜査」ともいうべきものです。犯行動機から犯人を捜すといった捜査方法はセオリーですよね。動機があるということは、被害者と何らかの形でかかわっているはず。そうなれば、被害者の身近に必ず犯人がいるわけで、被害者付近の人間関係を洗えば、いずれは犯人に辿り着ける、みたいな。
動機は犯人の心理面の代表格なわけで、そう思えば、『D坂の殺人事件』が主張している「心理捜査」の重要性も納得できるのですが――。
しかし現在は、人間関係の希薄化やSNSによる人間関係の複雑化、あるいは犯罪の多様化などで、そう一筋縄にはいかない犯罪も増えているように思います。無差別殺人とか、テロリズムとか。
そうなってくると、現代はやはり物質的な「科学捜査」が重要なのでは……とか思ってしまうと、『D坂の殺人事件』はちょっと古いのかなあ、とか考えてしまいました。
とはいえ、『D坂の殺人事件』が発表されたのは、1925年(大正14年)ですから、それも当然といえば当然のことです。
正直、全体的に偶然性に頼り過ぎているきらいがあり、その辺りにも違和感を覚えました。その辺りも、ぜひ実際に読んでいただいて確かめてみてほしいところです。
現代的な視点で語ってしまいましたが、その一方で当時の視点に立って見てみると、「心理捜査」にスポットを当てた『D坂の殺人事件』は、なかなか先進的な推理小説だったといえるのではないでしょうか。
心理学が日本に伝わってきたのは明治の初め頃だといいます。となれば、『D坂の殺人事件』が発表された大正時代には、今ほど心理学は一般的ではなかったのではないでしょうか?
作中では、ミュンスターベルヒ さんの『心理学と犯罪』という本が取り上げられていました。
と想像してみると、心理学を取り入れた『D坂の殺人事件』は、とても斬新な小説だったのではないかと想像できます。しかもそれを大変巧みにミステリー小説のなかに取り込んでいます。
『D坂の殺人事件』が江戸川乱歩 さんの初期の作品であり、その後、「明智小五郎もの」とも呼ばれる一大シリーズがヒットしているところを思えば、やはり天才のキラリと光る才能を、感じずにはいられない作品だと思いました。
そんな天才・江戸川乱歩 さんの『D坂の殺人事件』のオチは、いかにも江戸川乱歩さんらしいものなのだとか。確かに、他の作品のタイトルなどを見ると、そういう作風があるのかなあ、と頷かされるものがあります。『人間椅子』とか――怖いもの見たさというか、ちょっと興味を引かれてしまいますね。他の作品もぜひ読んでみたいと思います。
江戸川乱歩 さんの『D坂の殺人事件』の中には、ミュンスターベルヒ さんの『心理学と犯罪』の他にも、有名な探偵小説(推理小説、ミステリー小説)が出てきます。これらは江戸川乱歩 さんの「今までのこうした探偵小説(推理小説、ミステリー小説)と『D坂の殺人事件』はまったく違うものになっているんだ!」という挑戦のような思いが込められている、といった読み方もできるのだとか。
そちらの小説もぜひ読んでみたい。そんなわけで忘れないよう以下にリストアップしておきたいと思います。
・谷崎潤一郎 さんの『途上』
・エドガー・アラン・ポー さん の『モルグ街の殺人(ル・モルグ)』
・ガストン・ルルー さんの『黄色い部屋の謎』
・アーサー・コナン・ドイル さんの『入院患者(レジデント・ペーシェント)』
いずれは読んで、読書感想を書きたいですねえ……。
ちなみに、「D坂」というのは、東京都文京区にある「団子坂」のことなのだそうです。地下鉄千代田線の千駄木駅を降りると、西に上る急峻な坂道が、団子坂。団子坂の由来は二つあって一つは、昔、坂の下に団子屋があったからといもので、もう一つは坂が急過ぎて雨の日に転ぶと泥だらけの泥団子のようになるからだとか。名前の由来って調べてみると結構おもしろいですよね。
江戸川乱歩 さんは、大正8年、25歳のときに故郷の三重県から上京して、弟と一緒に団子坂で「三人書房」という古本屋を開きました。1年経たずに経営不振で閉店しているらしいのですが。このときの古本屋が『D坂の殺人事件』の舞台になっているのかもしれません。またこの頃、同時にそば屋の屋台もやっていたそうで、結構苦労人なのでしょうか?
最後になりましたが、江戸川乱歩 さんから連想される名探偵といえば、江戸川コナン!(一般的にはやはり明智小五郎なのでしょうか? 現代的には江戸川コナンという気がしますが……誰かと意見を交わしてみたいところです)
言わずと知れた江戸川コナンは、青山剛昌さんの漫画『名探偵コナン』の主人公ですね。この名探偵コナンの性格的モチーフが江戸川乱歩 さんの『D坂の殺人事件』の中に隠されているのでは……という話ををしましたが(覚えてる?)、その部分を以下に引用してみます(あらすじの引用部分、「私」の台詞の続きに当たります)。
「白状すると、僕はまだ心の底では、どうしても君を疑う気になれないのですが、こういう風に証拠が揃っていては、どうも仕方がありません。……僕は、もしやあの長屋の内に、太い棒縞の浴衣を持っている人がないかと思って、随分骨を折って調べて見ましたが、一人もありません。」
ピンとくる方がいらっしゃるでしょうか? 正確にいうなら、江戸川コナンの正体であるところの、工藤新一の性格的モチーフとなるのですが。
工藤新一は、捜査に私情は挟まない主義で、もしも犯人が自分と親しい人間であっても、容赦なく犯人だと指摘する、と言います。しかしそのときには、その人が犯人ではないあらゆる証拠を探し回った後だからボロボロでかっこよくなんかない、とも語っています(単行本8巻の「闇の男爵殺人事件」の回想シーン)。
いかがでしょうか、この点、上の引用の「私」の台詞と相通ずるものがあると思うのは僕だけ? こちらもぜひ意見交換してみたいところ。
実際コナンは、とある事件に際して、憧れの人の無実を証明するために、ありとあらゆる可能性を考えましたが……(ネタバレになりそうなので事件名などの詳細は伏せておきます)。
そんなこんなで以上、『D坂の殺人事件 江戸川乱歩』の小説読書感想でした。
今回のブログ記事に関連付けた漫画(超推理! 卍解! 真実はいつもひとつ!)
・ニヤニヤ。文豪・江戸川乱歩 さん が超推理! 『文豪ストレイドッグス』
漫画版
小説版
・ニヤニヤ。久保帯人さんの漫画『BLEACH(ブリーチ)』
・『D坂の殺人事件』がモチーフか? 青山剛昌さんの漫画『名探偵コナン』
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
それでは今日はこの辺で。
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