狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『露の答/坂口安吾』です。
文字数7000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約28分。
『桜の森の満開の下』のイメージの源泉となった作品…かも、好きな人におすすめ。でも未完成っぽい。おもしろくなりそうだったので続きが読めず残念。ところで政治って今も昔もなんだかなあ…
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
その一
私は加茂五郎兵衛の伝記を書くことになる。加茂五郎兵衛はいまでいうところの政務次官くらいまでいった政治家だ。政治のごたごたと自身の不手際のために政界を失脚し、腹を切った。
昔のことだから、この腹切りが責任を取ったと解釈されて心証を良くし、結局事件は不起訴に終わったが、じつは切腹はウソだった。前妻が亡くなってのち、後妻のように加茂家で権勢をふるうようになった女中に刺されたのだ。
原因は、五十三歳の五郎兵衛が、十九歳の娘と恋に落ち、結婚したことだった。刺されたことは五郎兵衛にとってさらに幸いとなった。これを正当な理由とし、女中に別居を申し渡すことができたからだ。
退院後、五郎兵衛は政界から離れ、新妻との新婚生活を始めるが、美人薄命であろうか、新夫人も先妻と同じく、五郎兵衛よりも先に鬼籍の人となる。その後の五郎兵衛は新夫人との間に生まれた娘、折葉を溺愛して余生を過ごし、彼女が十二の年に永眠した。
その二
私は加茂五郎兵衛の伝記編纂の取材のため、加茂村の加茂五郎兵衛の故山の家を訪れる。そこで五郎兵衛の長男夫婦と折葉に出会う。
現加茂家当主の長男は太郎丸といい、五十に手のとどく年配で、どうやら妻の尻に敷かれているようだ。太郎丸のみならず、加茂家の人々には一風変わったところがある。
加茂五郎兵衛の資料を探すため、太郎丸に倉を案内してもらっていると、彼は唐突に奇想天外なことをしゃべりはじめる。
彼は生きているのが面倒で、妹の唇に無限を感じているというのだ。
『私は妹を見ていると、十里四方もつづく満開の桜の森林があって、そのまんなかに私だけたった一人置きすてられてしまったような寂しさを感じます。私は花びらに埋もれ、花びらを吹く風に追われて、困りながら歩いているのです。』
私が少し離れたところにいる折葉を盗み見ると……たしかに太郎丸の言っている意味を感じる。太郎丸はそれを知った瞬間、資料について事務的なことを二、三言い添えて、その場を立ち去ってしまった――
狐人的読書感想
ふむ。
あらすじを読んでもらってもわかるかもしれませんが、非常に中途半端な終わり方ですね。
ひょっとしてこれ、未完成作品なのでしょうか……、おもしろくなりそうな感じがするだけに、ちょっと残念な気がしました。
とはいえ。
僕にとっては読むことができてとてもよかった小説です。
というのも、あらすじの引用部分を読んでもらえば、わかる人もいるかと思いますが、『桜の森の満開の下』につながったと思わせる描写があるんですよね!
『桜の森の満開の下』はとても好きな作品なので、そのプロトタイプというか、ここからイメージを広げていったのだろうと思える小説を読めたことは、単純にうれしく思いました。
う~ん……。
それだけに、ぜひとも最後まで読んでみたかったですね。
無念です。
「その二」は前述のように、これからおもしろくなりそうなところで、尻切れトンボに終わってしまいますが、「その一」も僕としては結構おもしろかったです。
政治家や政治の陰謀や不手際について書かれている部分があるのですが、日本の政治って、昔から現在に至るまでこんな感じだったんだなあ、と、なんだかなあ、って気になります。
モリカケ・日報問題……。
(森友学園問題、加計学園問題、防衛相の日報問題)
そんなことが連日取り沙汰されているからですかねえ……。
その意味では、とてもタイムリーだったかもしれない、今回の読書感想でした?
読書感想まとめ
『桜の森の満開の下』好きには一読の価値あり!
狐人的読書メモ
・この作品には『ぬばたまのなにかと人の問ひしとき露とこたへて消なましものを』という副題がついている。これは伊勢物語の一首の引用である。鬼に食われた女をはかなんで男が詠んだ歌。ここから、(おそらく)未完成な本作の内容を想像することができるかもしれない。
・1945年(昭和20年)10月、『新時代』にて初出。副題『ぬばたまのなにかと人の問ひしとき露とこたへて消なましものを』。未完成作品か? 『桜の森の満開の下』などに通じる作品であるかもしれない。
以上、『露の答/坂口安吾』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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