狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『黒い頭/夢野久作』です。
文字数2000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約5分。
花子は羽子板で遊んでいて、飾り物の美しい姉さんの頬をへこませてしまい、とても悲しむ。すると黒い頭のミイラが現れて……ミイラの夢って見たことある? それは意味のある予知夢なんだけど……
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
花子は羽子つきをしていて、羽子板のうらの美しい姉さんの頬をへこましてしまい、そのことをひどく悲しむ。
夜、自分のせいだと気に病む花子が、枕元に置いた羽子板を見ると……美しい姉さんが、いつのまにか羽子板から抜け出していて、シクシク泣いている。
謝ることしかできない花子――そこへ赤と青の美しい着物を引きずった、黒い頭のミイラが現れる。
ミイラは花子と姉さんを抱えて大空へ舞い上がり、エジプトの王宮へ着くと、その姿は立派な王様に変わっていた。
王様はエジプトの王ラメスを名乗り、羽子のムクロジに生まれ変わっていたというが、花子が大切に扱ってくれたので生き返ることができ、その恩返しをしたいという。
姉さんの頬は国第一の医者によって元通りになり、二人は王様の歓待を受ける。
花子がハッと気がつくと、すっかり夜は明けていて、羽子と羽子板をしっかり抱いており、羽子板の姉さんの頬はまた元の通りふっくらとなっていた。
狐人的読書感想
正直、羽子板の実物って見たことがないんですよね。
女の子の初正月のお祝いに贈られたりするといいますが、いまでも贈られたり、お正月に遊ばれたりしているんでしょうか、ちょっと気になりますね。
さて、このお話が書かれたのは大正時代のことなので、まだまだ羽根つきはメジャーな遊びだったようです。
夢中になって羽子をついているうちに、羽子板のうらの美しい姉さんの頬をへこましてしまい、それをとても悲しんでいる様子の花子さんが、愛らしくてピュアだなあ、といった印象を持ちます。
ようやく気づいてきましたが、夢野久作さんの小説って(とくに「九州日報シリーズ」って)、愛らしくてピュアな女の子が出てくるものが多いですね。
そういう人物像が好きだったのかなあ、といったところも、ちょっと気になるところです。
物語は夜になり、花子さんが悲しんでいると、羽子板から姉さんが抜けだして、こちらもシクシク泣いています。
そこへ羽子のムクロジ(羽子板の羽根の黒い玉、ムクロジとは植物の種のこと)の化身である黒い頭のミイラが現れて、二人をエジプトの宮殿へ連れて行きます。
そこでミイラは、じつはエジプトの王ラメスであったことを明かし、姉さんの頬を治してくれて、二人を歓待してくれるわけですが、花子さんがハッと気がつくとすっかり夜は明けていて、おそらくはすべて夢のできごとだったはずなのですが、羽子板の姉さんの頬のへこみはちゃんと治っていました。
つまり夢オチ。
ありがちなストーリーラインではありますが、なんだか不思議なお話ですよね。
てか、羽子板の姉さんは飾りとしてイメージしやすいのですが、なんでミイラが出てきたんでしょうね?
ムクロジから骸(ムクロ)、ムクロからミイラ、という連想だったのでしょうか? やはりちょっと気になるところです。
ちなみに、ミイラの出てくる夢を見た場合、夢占いでは「過去の問題が掘り起こされる」ことを暗示しているのだといいます。
誰かに過去の秘密を暴露されてしまい、嫌な思いをするかもしれない、という予知夢の意味があるそうですが、しかし基本的には悪い夢ではないそうで、そのできごとは自分の成長にとって必要な試練であり、結果的にはプラスになるので、ミイラの夢を見てしまった……と、悲観的になる必要はないとのことです。
なんとなく、羽子板の姉さんの頬をへこまして悲しい思いをしましたが、最終的にはハッピーエンドで終わったこの花子さんの物語と、相通じるところがありますよね。
――なんて、ちょっと無理矢理だったかな?
今回の読書感想でした。
読書感想まとめ
夢占いの内容と作品内容が見事にマッチしていて、ちょっと驚いてしまいました(牽強付会かもしれませんが……)。
狐人的読書メモ
・この物語を単純に読むならば「ものを大切に扱えばきっといいことがあるよ」ということかもしれない。
・エジプトの王ラメスはラムセスのことだろうか……ミイラはそのミイラ製造法など創作のモチーフとして興味深いところがある……そういえば『ミイラの飼い方』というアニメが最近やっていた。
・『黒い頭/夢野久作』の概要
1922年(大正11年)『九州日報』にて初出。初出時の署名は「海若藍平」。偶然かもしれないが、ミイラの夢占いと作品の内容がマッチしているように感じた。
以上、『黒い頭/夢野久作』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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