狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『月夜のでんしんばしら/宮沢賢治』です。
文字数4500字ほどの童話
狐人的読書時間は約13分。
ある月夜、少年が鉄道線路を歩いていると、電気総長率いる電信柱の軍隊に遭遇する。ところで、熱力学第二則って知ってる?ドラグーンとドラゴンナイトの違いって知ってる?
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
ある月夜のこと、恭一という少年が鉄道線路の横を歩いていて、信じがたい光景に遭遇する。突如、線路に沿って立っている、一万五千の電信柱が、一斉に行進を始めたのだ。
「ドッテテドッテテ、ドッテテド……」
リズミカルな軍歌も聞こえてきて、工兵隊、竜騎兵、擲弾兵――木でできた電信柱の兵隊たちが、恭一を横目に次々と通り過ぎていく。
やがて、電信柱の兵隊たちに号令をかける一人の老人がやってきて、「おれは電気総長だよ」と恭一に名乗る。
電気総長は、自分は電気のすべての長、電信柱の兵隊たちの大将であることを言い、電報や電燈にまつわるある話、勢力不滅の法則や熱力学第二則などについて、恭一にほのめかす。
そのとき、汽車がやってくる。兵隊たちは普段の電信柱に戻る。
電燈が消えて、汽車の客車の窓が真っ暗なのを見た電気総長は、「けしからん」と言って、走っている列車の下へもぐり込む。
「あぶない!」と、恭一が止めようとしたとき、客車の窓がパッと明るくなる。
電信柱は静かにうなり、汽車はもう停車場へついたようだった。
狐人的読書感想
宮沢賢治さんらしい、子供向けっぽい、いかにもファンタジックな童話ですが、作中に出てくる軍歌は石川啄木さんの短歌に影響を受けていたり、工兵隊、竜騎兵、擲弾兵――電信柱を兵隊に見立てていたり、電気総長が出てくるのは、当時の日本陸軍のシベリア出兵を批判的に描いたためだといいます。
竜騎兵(ドラグーン)といえば、ファンタジー系の小説やゲームに登場する、竜(ドラゴン)に乗って戦う騎士のことを、真っ先に思い浮かべてしまうのですが、これ、じつはたいていの場合は日本でのみ通用する呼称であって、英語圏ではドラゴンライダーやドラゴンナイトと呼ぶのが一般的なんだそうです。
竜騎兵といえば、もともと近世ヨーロッパの兵科のひとつであり、小型のマスケット銃(ドラグーン・マスケット)やカービンなどの火器を装備して戦う騎兵のことを指します。
作中で、こうした19世紀ヨーロッパの古い兵種名が用いられているのにも理由があって、ナポレオン軍がロシアに攻め込み敗退した事実と、シベリア出兵を重ねているかららしく、トルストイの小説(『戦争と平和』)やハイネの詩(『二人の擲弾兵』)などが念頭に置かれているのだそうです。
調べてみると、じつは深い意味のある作品のようですが、しかし単純にファンタジー童話として読んでみても、まるでアニメーションを見ているような楽しさがあって、十分に楽しめるかと思います。
戦争批判などの深い意味も、なんとなく読んでいて感じられるので、大人も楽しめると感じますし、そういう意味では子どもに読み聞かせをするのにも向いている作品かもしれません。
僕は電気総長の話にとくに興味を惹かれてしまい、勢力不滅の法則や熱力学第二則が気になったのですが、これはそれぞれ「エネルギー保存の法則」と「エネルギーの移動の方向とエネルギーの質に関する法則」のことをいっているようですね。
(ちなみに、熱力学第三法則は、「絶対零度には到達することができない」という定理だそうです)
なんだか最後は小難しい話になってしまいましたが、読み聞かせの際、もしも子どもに質問されてしまったときの参考になれば、これ幸いです。
読書感想まとめ
浅い読み方でも、深い読み方でも、それぞれに楽しめる奥の深い童話でした。
狐人的読書メモ
・本作を題材にした水彩画、歌を、宮沢賢治自身が創作しており、本人にとってもとても思い入れの強い作品だったのかもしれない。
・『月夜のでんしんばしら/宮沢賢治』の概要
1924年(大正13年)12月、『イーハトヴ童話 注文の多い料理店』(盛岡市杜陵出版部・東京光原社)にて初出。子どもも大人も楽しめる、読み聞かせに向いていると思える童話。
以上、『月夜のでんしんばしら/宮沢賢治』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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