勝負師/織田作之助=阪田三吉?藤井壮太!将棋ブーム到来?の読書!

狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

勝負師-織田作之助-イメージ

今回は『勝負師/織田作之助』です。

文字数4500字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約17分。

浪速の棋士・阪田三吉さんは子供の泣き声を聞くと苦しい将棋の修業を思い出したといい、将棋の世界は本当に厳しいらしい。藤井壮太さん、将棋ブーム……プロ棋士を目指す子、増えるのかな……?

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

織田作之助が、明治から昭和初期にかけて活躍した浪速の将棋棋士、阪田三吉について書いた作品。

坂田は、火がついたような子供の泣き声が好きで、それを聴いていると、自然に心が浄まり、いい気持ちになるが、その理由はわからないという。

織田は、坂田のその言葉から、彼の運命の痛ましさを聴く。それは坂田の修業時代のこと、恵まれない将棋指しの生活は苦しく、妻はその苦しさに耐え兼ね、三人の子供を連れて家出し、もはやこの世を去ろうとしていた。

しかし、背中の男の子が「お父っちゃん、お父っちゃん」と泣くのを聞いて、妻は坂田のもとへ戻った。さすがの坂田もこれは堪え、将棋をやめようと本気で考えたが、どうしても将棋一筋の道を貫くことしかできなかった。

坂田は棋士人生の終盤、南禅寺の決戦と天竜寺の決戦において、第一手に奇想天外、前代未聞、常識外れの手を指した。その一手は、自分の才能の可能性を、無限大に信じた人の自信の声を放っていた。その声に、心身ともに病み疲れていた織田は感動を覚えた。その自信にあやかりたいと思った。

織田は一月前にも、一面識もない坂田について、勝手気ままに書いたばかり(『聴雨』)、そのことを後悔しているにもかかわらず、いままた坂田のことを書いてしまう――坂田をいたわろうとして書くはずなのに、坂田を苛め抜く結果となってしまうのは、じつは自虐の意地悪さであった。

修行ぶりも私生活も、まったく似ていない坂田に、織田はどうしても自分を重ねて見てしまうのだった。

狐人的読書感想

織田作之助さんは、浪速の将棋棋士・阪田三吉さんのファンだったようで、本作『勝負師』と『聴雨』、二度この人物を取り上げて作品を書いています。

織田作之助さんの人柄はもちろん、阪田三吉さんの人柄も、なかなかに興味深く読みました。

阪田三吉さんの「火がついたような子供の泣き声が好き」という内容の発言は、僕には信じがたいことのように感じられてしまいます。

子供の泣き声って、(子供だからしょうがないよね……)って、思うように努めてはいるのですが、どうしても(うるさいなあ……)って、なってしまいます。

(たぶんですが)こちらが普通だと思うんですよね。お父さんお母さんは、毎日聞くから慣れるのかなって、考えますが、そんなこともないような気がします。

阪田三吉さんが子供の泣き声が好きなのには理由があって、貧しい修行時代、もはや子供と一緒に心中しようと思いつめていた奥さんを、子供の「お父っちゃん、お父っちゃん」という泣き声が救ってくれたことから、子供の泣き声を聞くたびに、修行時代の苦しさが心を打つのではないか――と、織田作之助さんは想像しています。

そこに懐かしさや戒めとなる思い出があると、たとえ不快な音でも好きになれるというのは、なんとなく理解できるのですが、自分がはたしてそうなるだろうか……というふうに、実感はあまり感じられないんですよね。

『ああ、有難いこっちゃ、血なりゃこそこんなむごい父親でもお父っちゃんと呼んで想いだしてくれたのかと、さすがに泣けて、よっぽど将棋をやめて地道な働きを考え、せめて米一合の持駒でもつくろうとその時思ったが、けれど出来ずにやはり将棋一筋の道を香車のように貫いて来た、……』

「家族に迷惑をかけてまで、夢を追い続けるべきか否か」みたいな問題は、たまに聞かれるように思うのですが、何か一つのことに突出した才能を示す人、すなわち「天才」と呼ばれる人たちは、そのこと意外まったく何もすることができず、「生活能力が低い」というのはよく聞かれる話です。

大切な家族に迷惑をかけているけれど、どうしてもそれがやめられない……、これまでは「それって甘えじゃね?」って、思っていたのですが、そういう人たちの苦しみというのもまた、たしかに存在するんだろうなって、考えを改めさせられたところでした。

ところで、将棋といえば、最近藤井壮太さんや、加藤一二三さん(こちらはいまや将棋というよりもタレントとして)の活躍で、にわかに注目を集めていて、ブームがきている感がありますよね。

藤井壮太さんは中学生でプロ棋士となり、29連勝した記録が注目され、さる2018年2月17日の「第11回朝日杯将棋オープン戦」では、あの羽生竜王に勝利して優勝をはたし、15歳6ヵ月という最年少記録で六段に昇段――まさに天才じゃないか、って思わされてしまいますよね(ちなみに藤井壮太さんのお母さんの評では藤井壮太さんも「生活能力低い」らしいです)。

こういうブームを受けて、憧れを持った子供たちがいたりして、将棋をはじめて、いつか本当にプロ棋士を志すようになったりするのかなって、漠然と想像してみるのですが、しかし将棋の世界って本当に厳しい世界らしく、上に行けるのはほんの一握りの天才だけ、何もかも犠牲にしてプロ棋士を目指して、その夢が破れてしまえば、なかなか一般社会で生きるのは難しく――みたいな話をこの前テレビでちらっと見て、もしも子供が本気で「プロ棋士になりたい」と言い出したら、親としては応援すべきかせざるべきか、きっと悩ましいところだろうなあ、なんて考えたのが記憶に新しいところです。

まあ、これは「憧れの職業」全般にいえることなのかもしれませんが……。

そんなこんなでちょっと将棋に興味を覚えた、今回の読書感想でした。

読書感想まとめ

浪速の将棋棋士・阪田三吉さん、天才中学生棋士・藤井壮太さん――時節柄、ちょっと将棋に興味を持った読書でした。

狐人的読書メモ

・阪田三吉の指し手が、もはや近代将棋に通用しなくなったように描かれている箇所があるのだが、どのようなジャンルにおいても、競技というものは日々新しい技量を持った世代が現れ、追い越していくものだと感じた。先日、平昌オリンピックで羽生結弦選手が金メダルを獲って連覇達成したニュースが印象的だったからか、このときふとフィギュアスケートが思い浮かんだ。

・『勝負師/織田作之助』の概要。初出不明。『聴雨・蛍 織田作之助短篇集』に収録。浪速の将棋棋士・阪田三吉に、その頃病みつかれていたという織田作之助が、自分を重ね合わせてみて書かれた作品。

以上、『勝負師/織田作之助』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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