狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『霰ふる/泉鏡花』です。
文字数10000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約31分。
民也は友達と自宅でお泊り勉強会を開く。
怪談話に花を咲かせる子供たちの横を、
二人の女の幽霊が通り過ぎていった。
霰ふる夜、民也と幽霊のはじめての出会い。
現代ってホラーブームなの?
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
若いのと、少し年上なのと――民也は二人の女の幽霊を見てきた。三十歳を越すまでに四度か五度。年上のほうはすらりとした二十四、五。若いのはふっくりした十八、九。前世から、何かしらの縁があるように、民也には思える。
民也がはじめてその姿を見たのは、九歳か十歳の年、小学校の友達常さんと、民也の家で徹夜の勉強会をしていたとき、霰の降った夜更けのこと。
勉強の集中がふと切れて、二人は物寂しさを感じて話を始める。常さんは、自分の屋敷にはない民也の家の二階が寂しいという。民也の家の二階では、去年まで民也の母が寝起きしていたが、いまはもう亡くなって、誰もいない。
物寂しい雰囲気のためか、雪女、油舐め小僧、豆腐小僧――話題が怪談じみてくる。怖がる常さんは蔀を開けようと言い出して、民也はそれを止める。心に恐怖のあるとき、民也はその蔀を開けさせたくなかったから。
民也がもっと幼く、母が存命中だった頃、ある夏の暮れ方に、すさまじい雷雨が降った。蔀の外、稲妻の轟きの合間、ひい、と、悲しげな、異様な声が聞こえてきて――民也は母の胸にもぐりこんだ。いま、民也がもぐりこむ懐はない……。
民也と常さんは、気を取り直して、机に向かおうとした――そのとき。二階の梯子段から、二人の女が下りてきて、民也と常さんの横手を、すうっと通り過ぎていった。
常さんは「きゃっ」と叫んで、民也は口も利けず、隣の部屋で寝ている父と祖母のところへ飛び込んだ。父も祖母も夢だと笑ったが、のちに語り合った二人の女の姿、民也と常さんの認識はぴたりと一致していた。
二人の女の幽霊と、霰降る夜の初対面の話。
狐人的読書感想
怪談ですが、そんなに怖さは感じられませんでした。子供の体験談で、誰も傷つかないからでしょうか、なんとなくやさしさのようなものさえあったように思えるんですよね。
怖くない怪談もなんかいいな、みたいな。
小学生で、お泊り徹夜勉強会って、どんだけ勉強熱心なんだよ民也と常さん……、いまでは親が許さないんじゃないの? という気がしますが、どうなんでしょうね?(パジャマパーティー的な?) 昔はけっこう当たり前にあったんですかねえ。
修学旅行でもお泊り会でも、真夜中のトークというものは、昼間にはない楽しさがあるような気がしますが、民也と常さんのお化けトークも、まだまだ子どもらしいあどけなさが感じられて、おもしろく読めました。
お化けトークすなわち怪談。
怪談ブームは100年ごとに訪れるという話を聞いたのですが、本当なんですかね。
前回のブームは明治30年頃から大正時代で、泉鏡花さん(『高野聖』など)をはじめ、夏目漱石さん(『夢十夜』)や芥川龍之介さん(『妙な話』)などが流行ったといいます。
その前のブームは文化文政年間で、上田秋成(『雨月物語』)や曲亭馬琴(『南総里見八犬伝』)など、その前のブームは元禄から宝永年間なのだとか。
で、これらの時代には大災害など、人々の心に大きなストレスをかける出来事が必ずあったそうなのです。
2011年、東日本大震災がありましたよね。
怪談100年周期説によれば、まさに現代は怪談ブームだといえるらしいのですが、でも平成でめちゃくちゃ流行った怪談ってあるのかな、って考えてみると、たしかにパッとは思いつけないんですよね。
まさか、これからくるのか、怪談ブーム?
とはいえ、パッと思いつけないだけで、いつも何がしかのホラーが流行っているような気がしてきます。
アニメだったり、映画だったり、小説だったり。
じつは怪談100年周期説では、1度訪れた怪談ブームは20年とか30年とかいう長い期間続くのだとされていて、だったらいつも怪談ブームなんじゃね? というツッコミどころがあるんだそうです。
これからはホラー小説がくる!?
と思ったのですが、くるも何も、怪談はコンスタントにいい作品が流行っているだけであって、案外いろんな流行りものにもこれはいえることなのかなあ、などと考えられて、ちょっとした発見をした気になったのですが、別に発見でもなんでもなくて、ただ当たり前のことをつらつら書いてしまったという――今回はそんな感じの読書感想になってしまいました。
読書感想まとめ
いまはホラーブームなのか?
いつもホラーブームなのか。
狐人的読書メモ
とはいえ、現代作品はいろいろなジャンルの要素がミックスされていて、純粋な怪談としてのブームというものはあまりないかもしれない。
・『霰ふる/泉鏡花』の概要
1912年(大正元年)『太陽』(11月号)にて初出。関連作品として他に『甲乙』がある。
以上、『霰ふる/泉鏡花』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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