狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『家康/坂口安吾』です。
文字数12000字ほどの評伝。
狐人的読書時間は約40分。
坂口安吾による徳川家康の評伝。
時流がよかった。手きびしい内容。
家康は人気ないらしい。
安吾は家康を平凡な偉人だと評す。
だったら平凡な狐人の僕は
学ぶべきところが多いはずだと思った。
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
坂口安吾による徳川家康の評伝。
・政治家としては平凡な保守家だった
・時代が味方となっていた
・意外と律義者だった
・幼少期の体験から独自の冷酷さも持っていた
(肉親を人質にすることについて)
・とにかく度胸が据わっていた
・お人よし、小心で素直な人だった
・温和、モグリのできない人だった
・天下を目前にしてはじめて老獪な古狸となった
・が、基本は図太いところのある平凡な偉人
狐人的読書感想
この『家康』という作品は、もともと短編小説集に収録されていたこともあって、小説に分類されていますが、評伝とするのが正しいみたいですね。
「ある人物についての評論をまじえた伝記」を評伝というそうです。
自分が好きな作家さんが、自分が好きな有名人について書いている評伝だと読みたくなるような気がします。
坂口安吾さんも徳川家康さんも、好き嫌いが分かれる人物みたいなので、この両者ともを好きな人というのはひょっとしたらレアなのかもしれませんが、いかがでしょう?
僕は徳川家康さんについては詳しくない、というか、歴史について詳しくないので、作品主体にネットで調べた情報をまじえてしかお話できないわけなのですが、気になったところと感想を書き綴っておきます。
全体的な印象としては「手きびしいなあ……」といった感じです。
「家康が嫌いだ」という人はけっこういるらしく、そういわれてみればドラマや映画や小説やゲームなんかでも悪役として描かれることが多いように思い、ひょっとして坂口安吾さんも……などと疑ってしまいますが、しかしそれについては、この作品からだけでは判断つきかねるところがあります。
好きだからこそこれだけ書けるというのもあるでしょうし、嫌いだからこれだけ書けるということもあるでしょうし。
ただ、知識の乏しい僕などからしてみれば、言っていることに一定以上の説得力はあるように感じました。
「家康は政治家としては平凡な保守家だった」といいますが、これは現代の政治家にほぼ当てはまる評価という気がしますね。
ただ坂口安吾さんは「それが悪いことだ」と、言いたかったわけではなさそうに思います。
それは現代でも同じことがいえるわけで、たとえば改革を進めるよりも一度立ち止まってみて、財政赤字をなんとかすべきなのでは……、みたいな。
消費税を上げて、そこから2兆円の子育て支援の予算を組んで、だけどそのいくらくらいが一部の政治家や有力者たちの懐に回ってしまうんだろう、とか考えると、とにかく無駄な予算は組まないでほしいと願ってしまいますね。
経済対策などの効果を実感できているならまだしも、まったく実感できずにこれだから参ってしまうのです。
家康さんは非常な倹約家だったそうで、江戸幕府の莫大な財産はその資質によって築かれたといっても過言ではなく、いまの政治家が一番見習うべきところはそこなのではなかろうか、などと思わず思ってしまいます。
さて。
「時代が味方となっていた」という点はもっとも説得力を感じたところです。
人々は戦国の世に疲れていて、平凡な事務家で平和を期待できる家康さんが人気を得て、時流に乗ったという側面は大きかったのではないでしょうか?
これについての坂口安吾さんの語り口はおもしろかったです。
いわく「最高の人物が最高の位置につくわけじゃない、その人物の性質が時代に合っているかどうかなのだ」と、要約するとそんな感じです。
これを芸術や自身の職業である作家にも当てはめているところが興味深く、たしかにいい作品を残しているのに、売れなかった人というのはたくさんいるんだろうなあ、などと思わされてしまいます。
「意外と律儀だった」というのは数々の同盟関係から見られるそうで、ときに同盟を守るために愚かな選択をすることもあったといいます。
「お人よし、小心で素直な人だった」や「温和、モグリのできない人だった」というのもこれに由来したことですね。
家康さんが幼少時代をほぼ人質として過ごしたのは有名な話だそうですが、父に捨てられた子供の心理を想像しているところなんかも興味を持って読めました。
父は我が子である自分を捨ててまでも同盟に忠実であった。それは正義であり、尊敬すべきことなのだとして、家康は父親を英雄化したといいます。
親に捨てられた子供は、どうにかして理屈をつけて、親を嫌わないようにするものなのかなあ、などと想像してみるといじらしいところでした。
しかしそのために、今度自分が親になったとき、自分の子どもや孫を人質にして、煮るなり焼くなり好きにしろ、という冷酷さを身につけてしまったところは因果な感じがしました。
虐待を受けた子供は、自分が親になったときに我が子に同じことをしてしまう、みたいな話を思い出して、親が子に与える影響の大きさを思いました。
坂口安吾さんによれば、家康さんが一般的に呼ばれるような「古狸」となったのは、天下を目前にしてのことだったといいます。
ここに至って、お人よしや温和といわれるものを捨ててしまい、老獪な古狸になってしまったのだと辛辣に書かれていますね。
とはいえ、小心者でもやるときには腹を据えてやる、といったところは一貫してあったようで、この部分はすごく評価されているところのように感じました。
基本はお人よしで平凡な人でも、天下を目前にすると老獪な古狸になる、だけどそれは悪いことではない気がして、時流と見れば度胸を据えてやることが、何よりも大事なことなのかもしれないなと思いました。
家康さんは平凡だからこそ、みんなが学べるところのある偉人なのかもしれません。
もちろん、これは坂口安吾さんの『家康』を読んで持った印象なので、家康さんを天才とする評伝を読めばまた違ってくるのかもしれませんが。
しかしながら、読んでみてよかったな、と思える作品ではありました。
よろしければぜひ。
読書感想まとめ
基本はお人よしで図太いところのある平凡な偉人。だからこそみんなが学べるところも多いだろうと思いました。
狐人的読書メモ
本当に自由を許されてみると、自由ほどもてあつかひにヤッカイなものはなくなる。芸術は自由の花園であるが、本当にこの自由を享受し存分に腕をふるひ得る者は稀な天才ばかり、秀才だの半分天才などといふものはもう無限の自由の怖しさに堪へかねて一定の標準のやうなもので束縛される安逸を欲するやうになるのである。
上の引用ように、ときおり入る坂口安吾の芸術家論・作家論が印象に残った。
・『家康/坂口安吾』の概要
1947年(昭和22年)1月、『新世代』(第二巻第一号、新世代社)にて初出。坂口安吾による徳川家康の評伝。手きびしい内容。徳川家康好きにはおすすめしにくいかもしれない。
以上、『家康/坂口安吾』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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