うまい商売/グリム童話=…え、うまい商売って詐欺のこと?

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狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

うまい商売-グリム童話-イメージ

今回は『うまい商売/グリム童話』です。

文字数4000字ほどのグリム童話。
狐人的読書時間は約11分。

うまい商売って、売る方も儲けて買う方も嬉しい、
みたいな、ウィンウィンをイメージしたのですが、
このグリム童話、詐欺の話じゃん! って、なりました。
ランサムウェアにご用心!

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

昔、一人の農夫がいた。市場で雌牛を売って、7ターラーのお金を手に入れた。その帰り道でのこと、農夫が池のそばを通りかかったとき、「アク、アク」(アクはドイツ語で「8」のこと)と、カエルたちが鳴いていた。

農夫は「8じゃない! 7ターラーだ。自分で数えてみるがいい!」と言って、7ターラーのお金を池に投げた。そして、カエルたちがお金を返してくれるのを待っていたが、カエルたちは鳴くばかりで、お金を返してはくれなかった。農夫は怒って家に帰った。

それからしばらくして、農夫は一頭の牛を肉にして売ることにした。肉にして売れば牛2頭分の売り上げが見込めるし、それに皮がまるまる残ると計算したのだ。

農夫が肉を売りに町へ行くと、犬たちが「ワウ、ワウ」(ワウはドイツ語で「少しくれ」に聞こえる)と吠えていた。農夫は「少しだけと言って、どうせ全部食べるんだろ。お前の主人は知っているからな。3日後にはちゃんとお金を払いにこいよ」と言って、一番大きな犬の前に肉を置いて帰っていった。

3日後、犬はお金を払いにこなかった。農夫は、大きな犬の主人である肉屋のところへ行って代金の支払いを求めた。当然、肉屋は知るはずもなく、怒って農夫を叩き出した。

農夫は王様に訴え出た。農夫が一部始終を話すと、王様の横で話を聞いていたお姫様が笑った。すると王様は、「姫は生まれてから一度も笑ったことがなく、笑わせてくれた者と結婚させると決めていた。おまえに姫を与えよう」と言った。

しかし、農夫はすでに結婚していたのでこれを断った。王様は怒り、「三日後に500の褒美をやる」と言って、農夫を家に帰した。

農夫は城門のところで番兵に声をかけられた。番兵が王様の褒美を少し分けてくれというので、農夫は200分けてやることにした。

その話を立ち聞きしていたユダヤ人が、やはり農夫に声をかけた。ユダヤ人は、「ターラー銀貨を小銭に両替しましょう、支払いは王様のご褒美でいいですよ」と言った。農夫はその取引に応じて、300をユダヤ人に渡すことを約束する。ユダヤ人は質の悪い小銭をその場で農夫に先払いした。

3日後、王様は棒叩き500回を農夫に与えると言った。が、農夫は、500をすべて番兵とユダヤ人に渡す約束だ、と王様に話した。そのうちに番兵とユダヤ人とがやってきて、それぞれ200回、300回ずつ棒叩きを受ける羽目になった。

王様は農夫をおもしろがって、自分の宝物庫から好きなだけ宝物を持っていってよいと言った。農夫はポケットに詰め込めるだけ宝物を入れて帰った。

途中によった料理屋で、農夫はもらった宝物を見ながら、「これが本物か、いくらなのか、自分にはわからない、王様はおれを騙しているかもしれない」と独り言をもらした。

それを聞いたユダヤ人は、さっそく王様にそのことを密告した。王様は怒り、ユダヤ人に農夫を連れてくるよう命じた。

ユダヤ人は王様が呼んでいることを農夫に伝え、いますぐにでも城へ連れて行こうとした。

しかし農夫は、大金を持っている自分が、こんな汚い恰好ではもうお城には行けないと言い、だけどもしも、ユダヤ人のその上等の上着を貸してくれるのならば、いますぐにでもお城へ行こうと提案する。ユダヤ人は農夫に上着を貸してやった。

王様は、ユダヤ人からの密告のことで農夫を問い質した。すると農夫は「ユダヤ人の言うことなんて全部うそですよ。その証拠に、こいつはいま俺が着ている上着を、それは自分の物だと言い出すでしょう」。

これを聞いたユダヤ人は思わず怒鳴ってしまった。「それはおれの上着じゃないか!」。ユダヤ人はまたしても棒打ちの刑に処されることとなり、農夫は立派な上着を着て、たくさんの宝物を持って家に帰った。

「今度こそうまくやったな」、農夫は家に帰ると、そう呟いた。

狐人的読書感想

童話に(しかもグリム童話に)こんなことを言うのもあれなのですが、不条理感がすごい作品だなあ、と思いました。

童話については、このことはある程度覚悟の上で読んでいるので、それでもこう感じてしまうのは、けっこう珍しいような気がします。

最初から追ってみると、カエルの鳴き声に過剰反応し、池に儲けを全部投げて、しかも勝手に怒って帰ってしまうあたり、主人公の農夫は完全に精神を病んでいるとしか思えません。

市場で何があったんだ農夫、雌牛を安く買いたたかれてしまったのか? ――などと思わず勘繰ってしまいます。

その後、この反省を活かしたのか、牛を肉に加工して売ればもっと儲けられる――と考えたまではよかったのですが、またしても犬の吠え声に反応して、犬が(あるいは犬の主人が)、代金を払ってくれるだろうと勝手に思い込んで、せっかくの肉を犬に与えてしまうあたり、もはや狂気の沙汰としか思えません。

この時点で、僕の中では「農夫=狂人」のイメージができあがってしまいました。

とはいえ、先を読んでみれば、これら「カエルの章」と「犬の章」の二つの件は、後日の「王様の章」を成功談として印象付けるための、伏線としての失敗談であることがわかります。

……わかりますが。

べつにのちの成功に、この失敗が活かされているようには感じられないんですよねえ……、もっとうまいストーリー展開があるような気がするのですが、でも、ぱっといいものも思い浮かびません。

……てか、ストーリーの整合性がおかしくなることって、自分で書いていてもけっこうあるような気がします。偉そうに他作(しかも有名なグリム、しかも童話)を批評している場合ではないのかもしれません。

しかしてしかし、カエルと犬の件を騙されたことにすれば、のちの「王様の章」は「騙されないよう人生は賢く立ち回ろう」的な教訓話にも捉えられるようになる気がするのですが、騙されたから(騙されそうになったから)、といって、人を騙していいのか、というところはやはり考えさせられてしまいます。

さて。それでは本題の「王様の章」に入ります。

これもひどい……、と言ったら語弊があるかもしれませんが、納得できるところの少ない話でした。

まあ、「もう結婚してるから……」と言って、お姫様との結婚を断った農夫の姿勢は、最近の議員の浮気報道を見るに、一つ現代人が学ぶべき姿勢なのかもしれません。

それで怒り出す王様には、「カリスマ性ゼロ」だな、という印象を持ちました。

農夫が褒美をもらったはずだと考えて、「おれにもいくらかくれよ」と言った番兵は、ただ素直に言っただけで棒打ちをくらってしまったことを思えば、この物語の中で一番かわいそうな人と言えるのかもしれませんね。

羨むことはできても、それを口に出して、あまつさえ「分けてくれよ」などとはなかなか言い出しにくく、だから番兵のそういうある種素直な気質は、美徳のようにも思えるのですが、しかしやっぱり、人間は「他人のおこぼれにあずかるような生き方をすべきではない」といったような教訓が、ここには含まれているように感じました。

ユダヤ人は、質の悪い硬貨との両替を申し出て、あきらかに農夫を騙そうとしていて、だから逆に農夫に騙されひどい目にあっても当然の罰のように思えましたが、しかしそれでもかわいそうだなあ、という感想を持ちました。

また、最近は「ランサムウェア」など、ウィルスによってパソコンデータへのアクセスを強制的に制限し、それを人質に制限解除の身代金を要求するような、新しいかたちの「振り込め詐欺」の話題などもよく聞きますが、やっぱり人を騙すような詐欺はよくないよなあ、などと改めて思わされたところでもあります。

だけど結局、農夫もユダヤ人を騙すかたちで儲けているんですよねえ、この話(いくらユダヤ人に騙されそうになったからとはいえ)。

安いものを高く売るのが商売の基本とはいえ、それにしたって騙されているといえば騙されているともいえそうな気がして、「商売の本質は騙すことにあるのだ」、などと言われてしまえば、なんとなく頷かされてしまいそうになります。

もちろん、買い手が満足できる付加価値を商品につけて、それが儲けにつながっているということもわかるのですが、その線引きってけっこう難しい気がするんですよねえ……。

人を騙し、陥れて儲けることが『うまい商売』なのか、『うまい商売』とは何なのか――どことなく経済学と結び付けて語ってみてもおもしろそうに思ったのですが、……おっと、長くなってきているので、そろそろこの辺で終わっておくことにしましょう!(という逃げ)

読書感想まとめ

読み取れた教訓

・他人のおこぼれにあずかるような生き方はダメ
・他人を騙して儲けようとしてはダメ(詐欺はダメ)

狐人的読書メモ

――とはいえ、結局主人公の農夫も他人を騙し陥れて利潤を得ている。なので、この物語を全体的に読み解くと、「詐欺=うまい商売」ということになってしまうのだが、童話ということもあり、反面教師的に捉えて読むのがベターだといえると思う。

ちなみに『ああ、王さま、牛から肉のほかに何を求めるんです?』という農夫の言葉が印象に残った。なんだか深みを感じるセリフである。

・『うまい商売/グリム童話』の概要

KHM 7。「うまい商売」とは何か。この物語からは「うまい商売=詐欺」ということしか読み取れないが、反面教師的な読み方をすれば道徳教材、あるいは経済的論述にも使えそうな気がした。

以上、『うまい商売/グリム童話』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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