狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『郊外/国木田独歩』です。
文字数12500字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約32分。
郊外の人々の日常。
噂話好き?
現在のご近所づきあいって本当に減ってるんですかね?
何事も成功の秘訣は一心専念すること。
集中する才能がほしいです。
集中と青ライトの雑学あります。
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
時田は小学校の教員だ。今年三十一歳で下宿住まいをしている。時田の部屋は別室の中二階にあって、そこからは近くの家の水車の音がよく聞こえた。そこには幸吉というかつての時田の教え子が住んでいた。
ある晩、時田のところに幸吉が相談にやってきた。幸吉は継母との折り合いが悪いことを悩んでいた。継母は自分の連れ子と幸吉を結婚させたいと思っているが、幸吉はそれがいやだった。だから継母は幸吉につらく当たるのだという。
時田は幸吉を慰めてやって家に帰した。見送りに出た時田が橋の欄干に寄りかかって夜空を仰いでいると、下宿先の娘のお梅がやってくる。乞われるままに一部始終を話してやると、お梅は幸吉のために涙ぐんで憤慨した。そこを磯さんが通り過ぎていった。
雨の降る翌日は、幼なじみの画家、江藤が時田を訪ねてくる。江藤は自分の描いた御料地の風景画を見せながら、時田に話をして帰っていく。江藤が帰る直前に、外から話声が聞こえてきた。どうやら踏切の八百屋と長屋の者が鉄道往生の噂話をしているらしい。
その夜、踏切の八百屋が晩酌の途中にトイレに立つと、窓の外に人影がちらと見えた。窓の下はすぐ鉄道線路だった。人影は八百屋の主人の気配に気づいたのか、そっと家の壁に体を寄せた。
命あっての物種だ、出直してきな。八百屋の主人はひとり言を大声で呟いた。それを聞いた娘のお菊は怪訝そうな顔をした。
八百屋の主人が酔いつぶれ、母も居眠りを始めると、お菊はそっと玄関の戸を開けた。
そこには磯さんがいて苦笑を浮かべていた。どうやら鉄道往生と間違えられてしまったらしいが、親父さんが出直せというから今夜は帰るよ。お菊が止めるのも聞かず、磯さんはいそいそと帰っていった。
夜空を見上げると、晴れる気配はまったくなく、星ひとつ見えなかった。お菊がため息をついて戸を閉めると、あたりはひっそりしてしまった。
狐人的読書感想
さて、短編小説なのにけっこういろんな人が出てきて、「おや、これはひょっとして群像劇なのかな?」とか思いながら読み進めていたのですが、結局ストーリーのない小説でした。
ストーリーのない小説については、芥川龍之介さんと谷崎潤一郎さんの論争などが有名ですね。
現代では小説にストーリーがあるのは当たり前で、ストーリーがない小説だとその魅力がわからない、といった意見もちらほら見かけますが、国木田独歩さんの小説にはストーリーがないものも多く、しかしどこか惹きつけられるところがあります。
今回の『郊外』は、まさに郊外に住む人々の日常の一コマが切り取られているのですが、当時の人たちの生活風景が感じられるところにひとつおもしろさがある気がします。
現代の都市部ではご近所づきあいのようなものは減ってきているとか聞くと、この作品で描かれているようなご近所づきあいには古きよき時代みたいなものを思わされてしまいます。
ただ現代でも主婦の方々の噂話みたいなものはイメージしやすいように思い、そういう意味ではいまも昔もそんなに変わっていないのかなあ、というような気もしてきます。
人々の暮らし、恋愛模様などの根幹部分は、時代が移り変わってもさほど変わらないものなのかもしれませんね。
今回の読書で勉強になったのは、あらすじでは完全に省いてしまいましたが、時田先生に画家の江藤が話す内容の一部でした。
江藤は御料地でこれだ、と思える風景を見つけてそれを絵に描くのですが、その最中に後ろでガサゴソと音がします。
江藤は当然その音が気になるのですが、その音が気になるということは自分が絵に集中できていない証だといって、あえて音を無視して絵を描き続けるのです。
江藤は「成功の秘訣は一心専念すること」だと言います。
どんなことでもとにかく心を一つに集中してやることが成功につながるというわけです。
う~ん、たしかにそのとおりなのですが、集中するのってすごくむずかしいことのように感じているのはひょっとして僕だけ?
物音というのは人の集中力を削ぐ最たるものだという気もしますが、勉強は適度に物音のあるところでやったほうが集中できるという話がありますよね。
家の中だとたとえばリビングだとか。
これは心理学的には「人に見られる緊張感から集中力が高まる」からだといいます。さらに実際のテスト会場では筆記音や息づかいなどの騒音があるのが当たり前なので、その訓練にもなるのだとか。
ただ、僕が一番集中力を削ぐと思っているものは「時間」なんですよね。
何をやっていてもどうしても時間が気になってしまいます。
時間が気になっているということは集中できていないということなのでしょうが、ふと時計を見てしまうんですよねえ……。
あるいは目につくところに時計があるからダメなのかなあ、などとも思いますが、そういう問題でもないような気がしています。
趣味であっても勉強であっても、人に声をかけられても気づかないほどに集中するみたいなことはなかなかできず、これが普通なのか、それともほかの人はもっと集中できるものなのか、というところは誰かに聞いてみたいような気がしています。
集中するにもあるいは資質や才能といったものが必要なのだとしたら、もっと集中できるようにがんばりたいと願う時点で、もはやダメなのかもしれないとはよく思うことです。
踏切の八百屋の件は、ユーモアがあっておもしろいと感じました。鉄道往生ジョークをおもしろいと感じるのは不謹慎かもしれませんが……。
やはり昔から電車飛び込みというのは多かったんですね。
いろいろな人に迷惑をかけてしまうし、そもそも自ら命を絶つという行為自体よくないことだとはわかりますが、人間ならばときにそんなことを考えてしまうという気持ちもわかってしまいます。
電車が走っているところとか、あるいは名所と呼ばれるスポットには、そんな人間の気持ちを増幅する負の魅力があるのかもしれません。
そういえば、駅のホームには青いライトが設置されていて、これが飛び込み防止に非常に役立っているという話を聞いたことがあります。
青という色には人の気持ちを落ち着かせる効果があるそうですね。
ちなみに赤色には食欲増進効果があって、だから飲食店の看板には赤色が使われることが多く、また黄色には人を楽しくさせる効果があるので、黄色い食べ物は人を幸せにするとかいわれていたりします。
――とかなんとか、思わず雑学を言いたくなってしまった、というのが今回の読書感想だというオチ。
読書感想まとめ
集中する才能がほしいです。
狐人的読書メモ
群像劇、グランドホテル方式、アンサンブル・プレイという手法は興味深い。
・『郊外/国木田独歩』の概要
1900年(明治33年)10月『太陽』にて初出。郊外に住む人々の日常。現代ではもはやストーリーのある小説しかウケないのだろうか?
以上、『郊外/国木田独歩』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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