狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『忠実なジョン/グリム童話』です。
文字数6900字ほどのグリム童話。
狐人的読書時間は約16分。
忠実とは真心を持って人と接すること。
アブラハムは信仰のため、王様は真心のために
我が子を生贄に捧げます。
あなたは命の恩人のため、
我が子を犠牲にすることができますか?
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
年老いた王が、忠実な家来のジョンを呼んで言った。「私はもう長くない。だから私に最も忠実なお前に、息子のことを頼みたい。息子を教え、導いてやってくれ。そしてあの絵だけは絶対に見せてはならぬ。息子のことを頼む」。ジョンが王子への忠誠を約束すると、王様は安心して息を引き取った。
あの絵は長い通路の一番奥、封印された部屋にあった。だからジョンは、若い王をその部屋に入れないよう気をつけていた。しかし若い王は、その部屋を見たいと言って聞かなかった。仕方なくジョンは部屋の鍵を開けることにした。
部屋には黄金の城の王女の絵が飾られていた。若い王はたちまち心を奪われて、恋に落ちてしまう。王はなんとしても王女を手に入れたいと言い、ジョンはひとつの計画を練る。
王とジョンはあらゆる黄金細工を積んで船に乗った。ジョンは王を船に残し、ひとり黄金の城へ向かった。城にはあの絵の王女がいて、ジョンの持ち込んだ黄金細工をとても喜んだ。ジョンは「船にはもっとすばらしい黄金がある」と言って王女を城から連れ出した。
船内で、王女が王と一緒に黄金を見ている間に、ジョンは船を出航させた。王女はだまされたと知って驚くが、王の真実の愛の言葉を聞いて結婚することを承諾する。
甲板にいたジョンは3羽のカラスの不吉な会話を耳にする。
出迎えの馬に王が乗れば二度と王女に会えなくなる。お城に用意された婚礼衣装を着れば王は火だるまになる。ダンス中に王女は倒れ、助けるには王女の右胸から血を吸わねばならない。そしてこれらのことを誰かに話した者は石像になるだろう。
ジョンはこれを聞いて自分の身が破滅しても主人を救う決意をする。ジョンは馬をピストルで撃ち、婚礼衣装を暖炉で燃やした。王はジョンの忠実であることを知っていたので、これらの暴挙を許した。しかし倒れた王女の右胸から血を吸い出したのにはさすがの王様も怒った。
ジョンは処刑台に上った。しかし処刑前の最後の一言で、ジョンは真相を明らかにした。王は自分の過ちに気づいたが遅かった。ジョンは石像になっていた。
やがて王女は双子の男の子を産んだ。王と王女は幸せなときを過ごしていたが、ジョンのことはいつも後悔し続けていた。どうにかしてジョンの石化を解くことはできないだろうか――するとジョンの声が聞こえてくる。
ふたりの息子の首を切り、その血を私にふりかければ、私の石化は解けるでしょう。
王様はジョンの忠誠に報いるため、自分も忠実になることを決断する。復活したジョンはふたりの息子の首をそれぞれの体に乗せた。たちまち子供たちは元通りに遊び始めた。
王はことの次第をすべて王女に打ち明けた。王女は「私たちのふたりの子供の命に代えても、ジョンの忠誠にはお返しをしなければならないでしょう」と王様のなしたことを肯定した。
それから王様と王女様と双子の子供と、そしてジョンは、いつまでも幸せに暮らした。
狐人的読書感想
……う~む。
わけわからんところ多すぎるし、ツッコミどころ満載だし、ご都合主義的すぎるし――てか、童話にそれを言ったらおしまいなわけなのですが、しかしながらなぜか惹かれてしまうのが、グリム童話の不思議な魅力という気がしていますが、いかがでしょうね?
なんで年老いた王様が「黄金の城の王女様の肖像画」を後生大事に保管していたのか、なんで息子がその絵を見て激しい恋に落ちるとわかったのか。
(ひょっとして、じつはその絵は王女様のお母さんの肖像画で、王様も激しい恋をしたことがあり、その経験から自分の息子もまた同じ道を歩むことを予感していた?)
黄金の城の王女様も、誘拐されたにもかかわらず、実行犯の若い王様と結婚するのはいかにも尻軽すぎますよね。
(ひょっとして、物語では描かれていない、王女様の心を打つ感動ストーリーがあったのでしょうか? あるいはストックホルム症候群的な何かが?)
ジョンの忠誠の理由も気になるところです。
(かつて年老いた王様に命を救われた、くらいの恩義がないと、ここまでの忠誠は発揮できないように思いました)
いろいろ想像してみておもしろいグリム童話です。
このグリム童話でもっとも思わされるシーンは、やはり石化したジョンが復活するための生贄として、王様と王女様の双子の子供を求める場面ではないでしょうか?
僕は『イサクの燔祭』を思い浮かべました。
『イサクの燔祭』は、旧約聖書の『創世記』第22章にあるお話で、神が試練としてアブラハムに息子のイサクを生贄に捧げるよう命じるものです。
アブラハムは盲目的に神の命令に従って、息子のイサクを生贄に捧げようとしますが、その姿を見た神はアブラハムの真実の献身に満足して、最終的には息子を生贄にすることを許します。
『イサクの燔祭』は「神への信仰心」がテーマとなっていますが、『忠実なジョン』ではまさに「人間の忠実」ということがテーマになっていますよね。
忠実といえば「身分の高い人に絶対服従する」みたいなイメージを抱いてしまいますが、調べてみると「真心を持ってつとめること」とされていて、身分とか立場とか関係なしに人の持つべき心の在り方を示しているように思われます。
ジョンは若い王様の命を救うために、自分の命を犠牲にして尽くしてくれました。若い王様も、それを当然だとは捉えずに、自分も真心を持ってお返ししたい、と思った感情は尊敬に値するものだと感じました。
しかしジョンの忠実に応えるためには、最も愛する我が子を生贄に捧げなければなりません。
これは究極の選択ですよね。
あるいは自分の命と交換であれば、王様の迷いももうちょっと少なくてすんだのかもしれません。
とはいえ王様は我が子を生贄にしてしまったわけなのですが……。
『イサクの燔祭』で示されたアブラハムの盲目的な信仰は、宗教的には賛美されることも多いみたいです。神様を信じ、神様に従順であれば、神様がきっといいようにしてくれるというわけです。
ただ宗教的な意識の低い僕としては、我が子を生贄に捧げるにしても捧げないにしても、しっかりと自分の考えを持って行動することが肝心なのかあ、という感想を持ちました。
恩人のために我が子を生贄に捧げることを、王様やアブラハムが本当に考えたすえに決めたことなら、それは人間の良心からすれば非難されてしかるべきことであっても、他人がとやかく言うことではないのかもしれないと思うのです。
なので今回は、『イサクの燔祭』の場合でも『忠実なジョン』の場合でも、子供は生まれてきた時点でひとつの独立した生命であり、それは親の物では決してないのだということを意識した上で、考えて行動しなければならないのかなあ、などと、当たり前のことを考えるに至ったというお話でした。
読書感想まとめ
真心を示すのはとてもむずかしいです。
狐人的読書メモ
ジョンが石化した件はドラクエ5を思い出した。
忠実なジョンといえば『シャーロック・ホームズシリーズ』のジョン・H・ワトスンも連想する。『シャーロック・ホームズシリーズ』の全編日本語翻訳を完成させたサイト『コンプリート・シャーロック・ホームズ』が話題になっていた。『シャーロック・ホームズシリーズ』はそのうち全編読んでおきたい作品のひとつ。
・『忠実なジョン/グリム童話』の概要
KHM 6。人は人にどこまで忠実になれるのか。結局人間は自分本位なものではないのか。それは悪だということにはならないのではないか。いろいろ奥深く考えられておもしろいグリム童話。
以上、『忠実なジョン/グリム童話』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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