コンにちは。狐人 七十四夏木です。
(「『狐人』の由来」と「初めまして」のご挨拶はこちら⇒狐人日記 その1 「皆もすなるブログといふものを…」&「『狐人』の由来」)
今回は夢野 久作さんの『懐中時計』について書いてみたいと思います(ちなみに夢野 久作さんは多くの筆名を持っていることでも有名ですが、この『懐中時計』は『土原耕作』名義で発表されています)。
さて、夢野 久作さんといえば、やはり日本三大奇書の一つとして有名な『ドグラ・マグラ』ですよね。
『本書を読破した者は、必ず一度は精神に異常を来たす』
―─ウィキペディア 「ドグラ・マグラ」より抜粋─―
ふむ。
このような『ドグラ・マグラ』の評判を聞くと、また『ドグラ・マグラ』を読んでいると、では今回の『懐中時計』はいったいどんな小説なんだ? どんな狂気が描かれた怪作なんだ? と疑って(あるいは期待して)しまうわけなのですが。
そんな『懐中時計』の内容はといえば、至ってシンプル……てか短っ!
全文で181文字。
まず最初に読もうとしてびっくりしました。ある意味「怪作」と評しても間違いではないのではなかろうか……と思わされてしまいました。思わず思わされてしまいました。
それでは恒例、簡単なあらすじを……と言いたいところなのですが、これはもう読んでもらった方が早いです。
そんなわけで、以下に全文を掲載します。
『懐中時計 夢野久作』
懐中時計が箪笥の向う側へ落ちて一人でチクタクと動いておりました。
鼠が見つけて笑いました。
「馬鹿だなあ。誰も見る者はないのに、何だって動いているんだえ」
「人の見ない時でも動いているから、いつ見られても役に立つのさ」
と懐中時計は答えました。
「人の見ない時だけか、又は人が見ている時だけに働いているものはどちらも泥棒だよ」
鼠は恥かしくなってコソコソと逃げて行きました。
以上です。いかがでしょうか。
もしも『ドグラ・マグラ』を読破している方ならば、
(あれ? 案外まともな話だな……)
といった感じではないでしょうか? その短さはともかくとして。
夢野 久作さんの作品といえば、やはり『ドグラ・マグラ』のような怪奇小説のイメージが強いのですが、存外ファンタジーっぽかったというか。
しかしてしかし、ホント短いですよね。
ひょっとして世界一短い小説なのでは……とか、ここでちょっと気になったので調べてみました。
いやはや、やはり世界は広いですね。ありました。ありましたとも。世界一短いといわれる小説。その名も『もしイブが妊娠しなかったなら』。著者はエドワード・ウェレンさん。アメリカの短編作家さんです。
これは発想がとってもおもしろい。なんと本文が全くなくて、白紙! そう、人類の始祖であるイブ、『もしイブが妊娠しなかったなら』……その結果は明白ですよね。明白に白紙ですよね(うまいことを言おうとして失敗しました)。
他にもこのような、超短編小説と呼ばれる小説があるみたいです。なんだか楽しくなってしまったのでもう一つだけ。
題して『史上最短のSF』。著者はロジャー・ディーリーさん。
時間は終わった。昨日で。
本文これだけ。昨日で時間が終わった、――と言っているということは、現在、そう言っている彼あるいは彼女の中の時間概念はどうなっているのでしょうか? 物質の変化を時間として捉えるならば、その世界に物質はまったく存在せず、彼あるいは彼女は肉体を持ち合わせていない……では、思念体ってこと? まさにSFですね。ちょっとだけ、谷川 流さんの『涼宮ハルヒシリーズ』に登場する長門有希ちゃんや、半村 良さんの『妖星伝』なんかを思い浮かべてしまいました。
少々蛇足が長くなってしまいましたが、要するに超短い小説というのは『懐中時計』意外にも結構あるということです。今度一覧にしてまとめてみようかな……とか思ったりしなかったり、というお話でした。
では、本題の『懐中時計』に戻り、その内容に触れてみたいと思います。
この小説は、擬人化した懐中時計さんと鼠さんが短い会話をしているお話ですが、短くとも、その中に寓意を含んでいるのは、誰が読んでも一目瞭然ですよね。
簡単に言ってしまうと、「人間のいいかげんな態度を諫めている話」とでもなるのでしょうか。他人の評価など気にせず、地道にこつこつと自分のやるべきことをなすのが大切なのだと、懐中時計さんは言っているわけで、これは現代人の仕事に対する姿勢にも当てはめることができますよね。
「人の見ない時だけか、又は人が見ている時だけに働いているものはどちらも泥棒だよ」
上の懐中時計さんの発言は含蓄深い言葉です。たとえば、2014年7月9日に発覚した『ベネッセ個人情報流出事件』は派遣社員のSEが顧客情報を外部に持ち出して売っていたことが原因でした。
「馬鹿だなあ。誰も見る者はないのに、何だって動いているんだえ」
『ベネッセ個人情報流出事件』の犯人である派遣社員は、まさにこのように言った鼠さんだったのではないでしょうか。
とはいえ――。
今やパートや派遣社員といった非正規社員は雇用者全体の4割に達しているそうです。ブラック企業やブラックバイトなんていった話もよく耳にします。介護職などが低待遇の代表として、ニュースやワイドショーなどでもよく取り上げられていますよね。
待遇面の不満が、働く人の意識の低下を招いているのもまた事実。もちろん、人間一人一人が懐中時計さんのような意識を持って働くことが大切なのでしょうが、社会全体として取り組まなければならない問題もあるのではないか……と、『懐中時計』を読んでみて、僕などは愚考するわけなのですが。愚考して、こうした感想などを書いてみるわけなのですが。
「人の見ない時でも動いているから、いつ見られても役に立つのさ」
しかし、こんなセリフをさらっと言い切れる懐中時計さん……志操堅固と言いますか、頑固一徹と言いますか、とにかく意志が強い! 見習いたいところではあるのですが――意志薄弱な僕に、はたして……(汗)。
とかなんとか。以上が夢野 久作さんの『懐中時計』を読んでみた僕の小説読書感想でした。
ふと、この『懐中時計』は学生さんの読書感想文にはどうなんだろうな、とか思ったのですが、これで長々と読書感想文を書くことができれば、逆に高評価されないだろうか……と考えてみたり。一種の賭けのようなものになってしまうかもしれませんが。そんな読書感想文に挑戦してみたい、あるいはすでに挑戦してみた学生さんがいたらぜひ結果を聞いてみたいところ、というか余談でした。
そして今回のオチ。
実は、僕は『ドグラ・マグラ』を読破していませんでした。一度チャレンジしてみたことはあるのですが、途中でやめてしまったように記憶しています。確かヤンデレな萌え妹が登場していたような気が……(違ってたらごめんなさい)。いずれ、しっかり読破して、小説読書感想のブログ記事を書きたいものです。意志薄弱な僕に、はたして……(再び汗)。
そして最後に、前回(⇒小説読書感想『羅生門 芥川龍之介』テストに出るはエゴ!黒獣は出ない?)に引き続き、今回も『文豪ストレイドッグス』について少しだけ。
すなわち、『文豪ストレイドッグス』に夢野 久作さんは登場しているのでしょうか、ということなのですが、当然登場していました。間違いなく「文豪」ですものね、夢野 久作さんは。『文豪ストレイドッグス』の夢野 久作さんは13歳の少年みたいです。白黒の髪が特徴的。小さい男の子(やはり美少年)でショタ狙いのキャラ、ということになのでしょうか?
そんなこんなで。
『文豪ストレイドッグス』ぜひ読んでみてください! ……違いました。『懐中時計』ぜひ読んでみてください……というか、ここまで読んでくれた方ならもうすでに読んでますよね。言わずもがな。であれば、やはり『文豪ストレイドッグス』の方で正しかったのでしょうか? ……こちらも『ドグラ・マグラ』同様に現時点の僕は未読なわけなのですが。
※
ショタな夢野 久作さんが登場する『文豪ストレイドッグス』はこちら。
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最後までお付き合いいただきありがとうございました。
それでは今日はこの辺で。
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