狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『狼と七匹の子山羊/グリム童話』です。
グリム童話『狼と七匹の子山羊』は文字数4000字ほど。
狐人的読書時間は約8分。
どうしたらよかったの?
言いつけを守ったのに食べられちゃう子山羊たち。
そこまでやっちゃうの?
お母さん山羊の復讐。
あらゆる残酷な空想に耐えておけ。
そんな童話です?
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
昔、ある所に、お母さん山羊と7匹の子山羊が暮らしていた。ある日のこと、お母さん山羊は森へ出かけることになった。そこで子山羊たちを呼んで言い聞かせた。決して狼を家に入れてはなりません。狼はしゃがれ声で、足は真っ黒、すぐに見分けはつきますからね。
それからしばらくして、表の戸を叩く者があった。お母さんだよ、開けておくれ。子山羊たちは騙されなかった。お母さんの声はもっときれいな声だ。
狼は、店でチョークを買って食べ、声を良くしてから再度子山羊たちの家へ。しかしまたしても子山羊たちは騙されなかった。狼の真っ黒な前足が窓のところから見えていたのだ。
狼は、パン屋で小麦粉を塗って、前足を白くしてから三度子山羊たちの家へ。今度ばかりは子山羊たちも騙されてしまった。子山羊たちはそれぞれ家の中に隠れるも、つぎつぎと狼に捕らえられ、丸のみにされてしまう。満腹になった狼は、草原の木陰で大いびき。
帰ってきたお母さん山羊は、荒らされた家を見て驚いた。子山羊たちを呼んだ。すると、柱時計に隠れていた末の子山羊が返事をして、お母さん山羊はことの顛末を知り悲嘆にくれた。それから外に出たお母さん山羊は、木陰で寝ている狼を見つけた。その腹がもそもそ動いているのを見た。
お母さん山羊は急いで家に戻ると、鋏と針と糸を持ってきた。鋏で狼の腹を切って、子山羊たちを救出すると、そのまま子山羊たちに集めさせた石を、狼の腹に詰めて、針と糸で縫い合わせた。
目を覚ました狼は、喉が渇いて井戸へ。水を飲もうとするも、腹の石の重みによって、水の中に落ちて溺れた。お母さん山羊と7匹の子山羊は、大喜びで井戸の周りを踊りまわった。
狐人的読書感想
さて、いかがでしたでしょうか。
……とかいって、有名なお話なので、知らない方のほうが少ないかもしれませんが。
多くの童話には、世界中で類型の話が存在する、というのは、結構有名なお話かもしれませんが、『狼と七匹の子山羊』も例外ではないように思います。ぱっと思い浮かぶところでは『三匹の小豚』といったところでしょうか。
同じグリム童話である『赤ずきん』もありますが、これは『狼と七匹の子山羊』から1000年後に派生した物語であることがわかっています。
(『赤ずきん』の読書感想あります)
『狼と七匹の子山羊』は、絵本で子供に読み聞かせをする定番のようにも思いますが、なんとなく子供に教えづらいところもあるんじゃないかなあ、と、読後間もない僕などは思っているのですが。
というのも、7匹の子山羊、お母さんの言いつけをしっかり守っていたのに、結局は狼に食べられてしまっているんですよねえ……。狼なんかの姑息な手に騙されるなよ、とはいえ、親の言いつけを愚直なまでに守ろうとする子山羊たちの姿は、リアルな子供の姿として僕には映り、そこが子供のかわいいところでもあるのではないでしょうか。
子供からしたら「じゃあ7匹の子山羊はどうしたらよかったの?」とか疑問に思うような気がするのですが、う~ん、どうしたらよかったんでしょう? ここは諦めて、真の悪意の前に人は無力な存在である、的な教えを諭すべきなのでしょうか(おいおい……)。
ここが狐人的にはなかなか難しく感じて、ぜひ現役のお父さん山羊・お母さん山羊のご意見を伺ってみたいところでした。
反対に、ラストは「勧善懲悪」としてわかりやすい展開ですよね。「悪いことをするとこうなっちゃうんだよ」の一言で済ませられる気がします。
(勧善懲悪の物語はこちら)
- ⇒キューピー/夢野久作=狐人的感想「キューピー誘拐事件の真相を想え!? 夢野久作版『トイ・ストーリー』」
- ⇒注文の多い料理店/宮沢賢治=感想は東京喰種とH×Hから(内容が解る! 要旨をつまんだあらすじも)
……しかしながらお母さん山羊、結構ひどいことしてるんですよねえ……、まあ、グリム童話といえばおなじみの結末といえますが(『狼と七匹の子山羊』は擬人化された動物の物語ということで、グリム童話の中でもまだ柔らかい終わり方のようにも思えますが)。
ここから、「悪いことしたからって、ここまでしちゃっていいの?」という問題提起ができそうですよねえ……。
7匹の子山羊たちは命が助かったからこんなことも言えるわけですが、これを実際の誘拐事件などに照らし合わせて考えると、お母さん山羊の復讐をただただ非道だと非難することもできず……、冒頭の『お母さん山羊が子山羊たちを可愛がること、人間のお母さんと変わりない』といった旨の記述が、とても意味深に思えてきてしまいます。
……童話なのに考えすぎ、と、自分でも思わなくもないのですが、「あらゆる残酷な空想に耐えておけ」というのは、真理なのではないでしょうか(ゆえに僕は空想する)。
(復讐について考えた読書感想はこちら)
ちなみに(復讐ついでに?)、『狼と七匹の子山羊』のラストについては、「夫を亡くした」お母さん山羊の、復讐劇だったとする説があります。
この物語にはお父さん山羊が登場しないわけなのですが、これはお父さん山羊がすでに狼に食べられていた、といった背景が、この物語にはあって、それをお母さん山羊のラストの行為に結びつけた説なのですが、僕が調べた範囲では、グリム童話のどの版にも、そんな記述はないようで、パロディとか類型の別童話などがあるのかもしれませんが、都市伝説の域は出ていないように思います。ただこのラストを、魔女裁判同様、実際にあった人狼裁判の処刑方法から発生したと見る見方は、とても興味深く感じました。
他に、狼と山羊たちが和解して、仲良くなって終わるハッピーエンドが、あってもいいように思ったのですが、国立国会図書館のレファレンス共同データベースによると、そのようなものはない模様(しかしそんなことまで調べてくれるのですねえ、国立国会図書館のレファレンス)。しかしながら、狼の結末が明記されておらず、狼が謝って、今後悪いことをしないと誓うなら、お腹の中の石を取り除いてあげる、とお母さん山羊が提案して終わるものは相当数あるようですね。子供の情操教育的には、このようなラストのほうが、よりよいのかもしれません。
最後に、ちょっと気になってしまっただけなのですが、狼がチョークを買って食べ、声を良くしたシーンですが。子山羊を丸のみにする原始的な狼にも、ちゃんと経済観念があるんだなあ……、ということを思ったわけではなくて(ちょっと思いましたが)、チョークを食べて声が良くなるものなのかなあ……、ということなのですが。これはグリム兄弟と同時代を生きた医師、ザムエル・ハーネマンが確立した「ホメオパシー」という医療法のなかに、チョークの成分である炭酸カルシウムが喉の薬である、といった記述があるのだとか。プラシーボ効果? 科学的な実効性はないそうですが、『狼と七匹の子山羊』を書いたグリム兄弟が、これを知ってモチーフにした可能性はありそうですよね(ちなみにこれも国立国会図書館のレファレンス共同データベースによる……、こんなことまで以下略)。
読書感想まとめ
「じゃあ7匹の子山羊はどうしたらよかったの?」
狐人的読書メモ
国立国会図書館のレファレンス共同データベースって凄い。
KHM 5
悪い狼をこれでもかと懲らしめる童話。最近の研究によれば1世紀に誕生したとされている。日本には、グリム童話以前の原型が、1593年にイエズス会の宣教師により持ち込まれた。1887年、呉文聡 さんの翻訳で発表された『八ツ山羊』が、日本で一番最初に紹介されたグリム童話とされている。
以上、『狼と七匹の子山羊/グリム童話』の読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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