狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
グリム童話『白雪姫』は今さらいうまでもない有名な童話。勢い衰えぬ童話実写映画化ブーム! 去年(2016年)、『白雪姫』の実写映画『スノーホワイト/氷の王国』が公開されて、グリム童話の中でも記憶に新しい作品ではないでしょうか。しかしながら、あらすじを知ってはいても、しっかりと全文を読んだことある? と訊かれてみると、じつは……(かくいう僕がそうでした)、という方も多いのでは? それがとくに原作(初版)となれば、いかがでしょうか? あなたの知らない『白雪姫』がそこにある? 未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
昔、雪の降る冬の日、美しい王妃が、黒檀の枠にはまった窓の傍に座って縫い物をしていた。王妃は針で指を刺してしまった。雪の上に赤い血が三滴落ちた。それを見た王妃は、「この雪のように白く、血のように赤く、黒檀のように黒い子供がほしいわ」と考えた。やがて王妃は望み通りの子供をもうけ、白雪姫と名付けた。
王妃は、美しさが自慢で、うぬぼれの強い性格だった。そして不思議な鏡を持っていた。
「鏡よ鏡、国中で一番美しいのは誰?」
王妃が鏡に訊ねると、
「王妃様、あなたこそ、お国で一番美しい」
鏡はいつもこう答える。それを聞いて王妃は満足していた。
――白雪姫が7歳になったある日、王妃がいつものように鏡に訊ねると、
「王妃様、ここでは、あなたが一番美しい。けれども、白雪姫は、千倍も美しい」
王妃は嫉妬のあまり、白雪姫を排除しようと考え、狩人を呼ぶ。そしてこう命じる。「白雪姫を森の奥へ連れていって、刺してしまいなさい。証拠にあの子の肺と肝臓をここへ持っておいで」
命じられるまま、狩人は白雪姫を森に連れ出すも、いざとなると憐れになって、見逃してやることに。証拠の品には、代わりに猪のものを持って帰った。王妃はそれを塩茹でにして食べてしまう。
どうにか生き延びた白雪姫は、森の奥に住む七人の小人の家で、下働きをしながら生活するようになる。しばらくして、王妃がいつものように鏡に向かって訊ねると――王妃は白雪姫がまだ生きていることを知る。
物売りに化けた王妃は、小人たちの留守中白雪姫を訪れ、絹糸の紐を売るふりをして、その首を絞める。夜、帰ってきた小人たちは驚き、急いで紐を切ると、白雪姫は息を吹き返す。
王妃は次に、毒を塗った櫛を用いる。やはり夜になって帰ってきた小人たちが、白雪姫の頭から櫛を抜き取ると、白雪姫復活。
最後に王妃は、半分だけ毒を入れたりんごを持って白雪姫を訪う。警戒していた白雪姫だったが、王妃がりんごを半分食べるのを見て安心し、残りの半分を食べてしまう――小人たちが帰ってくるも、今度ばかりはどうにもならず……、悲しみに打ち沈む小人たちは、ガラスの棺に白雪姫を入れて、交代で見張ることに。
そうしたある日、一人の王子が森に迷い込み、小人の家に泊まることに。そこで見た白雪姫の美しさに、王子は心奪われてしまい、ガラスの棺ごと売ってほしいと頼むも、小人たちはそれを拒否する。しかし王子は諦めず、熱心に頼み込む――気のよい小人たちもついには王子に棺を譲り渡す。
王子はその棺を自室に置いて、片時も離れようとはしなかった。さらに食事など、どこに行くにも棺を召使に運ばせていた。それにうんざりした召使が、白雪姫の背中を蹴ると、喉につかえていたりんごの欠片が飛び出して、白雪姫が目を覚ます。
王子の結婚式――そこに王妃も招かれることに。王妃はいつものように鏡に訊ねると、
「王妃様、ここでは、あなたが一番美しい。けれども、若いお妃様は、千倍も美しい」
またもや激しい嫉妬に駆られるも、好奇心には勝てず――王妃は結婚式に出かけていく。そこで王妃が見た若い妃は白雪姫だった。
結婚式には、火に焼かれ、真っ赤になった鉄の上靴が用意されていた。
王妃は――
狐人的読書感想
さて、いかがでしたでしょうか。
知っている『白雪姫』のお話とはずいぶん違う部分があるなあ、と感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか(かくいう僕がそうでした)。その部分を、あらすじを追いながら見ていきたいと思います。お付き合いいただけましたら幸いです。
悪い王妃様は白雪姫の継母じゃなくて実母だった
まずは王妃様についてですが、彼女は父親の後妻、つまり白雪姫の継母じゃなかったっけ? と思った方は多いと思います。これは第2版以降に変更された部分で、もともとは白雪姫の実母でした。――血を分けた実の娘にこんなひどい仕打ちを……、と考えてしまうと、身震いするのを禁じ得ないわけなのですが、昨今の事件などを鑑みるに、まったく現実味のない話ともいえず……、どちらの設定がより現実的か、という観点から考えてみると、どちらとも言い切れないところがあります。
雪の肌と血の唇と黒檀の髪、白雪姫の身体的特徴
つぎに白雪姫の身体的特徴ですね。
雪のように白い肌、血のように赤い唇、黒檀のように黒い髪――というイメージがありますが、原作(初版)では、肌、唇、髪、というふうには明示されていなかったそうです。グリムといえばドイツですから、じゃあ金髪碧眼? と思ってしまいそうですが、なんだかしっくりきませんね。一度定着したイメージを払しょくするのは難しいようです。
白雪姫の肺と肝臓をご所望の王妃様は魔女なの?
さらに、王妃様が狩人に指令を下したシーンですが、なんと白雪姫の肺と肝臓をご所望でしたね。じつはこれも僕の知らない展開でした。
狩人は結局、白雪姫を見逃して、猪の肺と肝臓を王妃のもとに届けるわけなのですが、それを白雪姫のものとして塩茹でにして食べてしまう女王様って……、最近読んでブログにも読書感想を書いた住野よるさんの小説『君の膵臓をたべたい』や石田スイさんの漫画『東京喰種トーキョーグール』を、僕は彷彿とさせられてしまうのですが(どうでしょう?)。
これは原作(初版)に書かれているわけではありませんが、白雪姫が生まれる前の王妃様の呪文のような言葉と、魔法の鏡、そして先で述べる魔女裁判を思わせるようなラストシーンから、王妃様の正体は魔女? といった見方があるそうです。
ただしこれには反論もあって、悪魔は塩を嫌うことから、塩茹でで肺と肝臓を食した王妃様はやはり人間である、というものです。
どちらの説も憶測なので、あまり真に受けても……、とは思うのですが(てかこれ童話だからね、という話ではありますが)、王妃様が魔女であるのと人間であるのとでは、どちらのほうが物語としておもしろいかなあ……、ということを想像してみるのは結構楽しいです。ファンタジー色を強くするか……、人間ドラマを重視してみるか……、みたいな。こうした想像力をかき立てられるからこそ、あいさつのところでも触れたような童話の実写映画化が、現在ブームとなっていて、それらの多くが成功しているのかもしれませんね。
つぎは2017年4月22日公開予定の、「ハリー・ポッターシリーズ」のハーマイオニー・グレンジャー役で一躍脚光を浴びたエマ・ワトソン さん主演の映画『ザ・ビースト』(『美女と野獣』の実写映画化)が、直近公開予定の童話実写映画化作品ですかね。
他にも、2018年公開予定の『ピノキオ』の実写映画では、『アイアンマン』でおなじみのロバート・ダウニー・Jr さんが、「ピノキオ」と「ゼペットじいさん」の一人二役を演じることで注目を集めています。
2016年、ディズニー版が大ヒットして、その影響なのか、公開延期となってしまった『ジャングル・ブック』のワーナー・ブラザース版の実写映画は、現在のところ、2018年10月公開予定となっています。
そしてこの作品でメガホンを取ったアンディ・サーキス さんがプロデュース兼監督兼主演を務めることが決まっている実写映画化予定のグリム童話に『ルンペルシュティルツヒェン』があります(⇒小説読書感想『ルンペルシュティルツヒェン グリム童話』映画化予定あり!)。
『101匹わんちゃん』(原題:クルエラ)、『ティンク』(ピーター・パンのティンカー・ベル)、『チップとデール』、『人魚姫』、『ダンボ』、『ムーラン』――などなど続々と童話実写映画化の話があって、この童話実写映画化ブームの流れはまだまだ続きそうな勢いを感じます(やはりディズニーが多いように思いますが、グリム童話ももっと!)。
(童話ではありませんが、前述のこちらも2017年実写映画化が決まっている話題作なのでよろしければ⇒君の膵臓をたべたい/住野よる=狐人的感想「とてもいい物語ですが、ひねくれものには感情移入に難あり?」)
え、3回騙された? 白雪姫っておバカキャラ?
思いがけず前項が長くなってしまいましたが、ここからはできるだけ簡潔に……(はたして)、まだお付き合いいただけている方がいらっしゃたら、引き続きよろしくお願いします。
はてさて、物売りに3回も騙されている白雪姫って……、ひょっとしておバカキャラ? とか思ってしまったのは僕だけなのでしょうか。りんごのくだりだけじゃなかったっけ? と一瞬戸惑いましたが、これはやはりディズニー版の影響が大きいように思います。まあ7歳だし、しょうがないのかなあ、という気もしないではないのですが……、てか7歳かよ白雪姫! なのですが……。なんか最近のラノベやアニメを思わせる設定ですよねえ……、そう考えると先進的というか、ブームはやはり巡っている?
白雪姫を買おうとしていた王子様ってどうなの?
王子様、白雪姫を買おうとしてたんだ……、まあその後熱心に頼み込んで譲ってもらっているのですが、これはちょっとがっかりな展開ですよねえ……、「現実には王子様なんていないよ!」という寓意が含まれていると見れば、現代的なお話ではありますが。ただしここでも、「7歳だよね白雪姫!」といった思いがどうしても過ぎってしまいます。ガラスの棺に入れられてから長い歳月が過ぎたとも想像できますが、僕の読んだ原作(初版)には、とりあえずそういった記述は見当たりませんでした。仮死状態で眠り続けていたと捉えるなら、近代的(あるいは近未来的―コールドスリープ的な―)に考えて、歳は取らないのが普通なように思えます。ということは……(おいおい王子様おいおい)。
王子様のキスはなし? 蹴られて目覚めた白雪姫
そしてこれは、僕にとって2番目に大きな衝撃ポイントでしたが、白雪姫は王子様のキスで目覚めてない! 召使の腹いせに蹴られて白雪姫復活って……、ま、まあ物理的療法としてはそちらのほうが現実的なのかもしれませんが……、やはり「現実には王子様なんていないよ!」といった寓意が含まれているとしか思えませんね。この王子様のキスも、ディズニー版からのイメージのようです。ま、まあ白雪姫7歳ですし……、キ、キキ、キスとか……、言わずもがな(しつこし?)。
熱々に焼けた真っ赤な上靴、抹殺のラストシーン
最後に1番の衝撃ポイント。最後にだけに最後、ということでラストシーンなわけなのですが。王子様と白雪姫の結婚式に招かれた王妃様、そこに用意されていた熱々に焼けた真っ赤な上靴――もう言葉はいりませんよね。しっかりとその様子と結末が描写されています。しかも原作(初版)では、王妃は実母……、肉親だからこそ、その恨みはより激しく……、というのは、世界的な王侯貴族の歴史から見ても、頷かされるところはありますが。しかもしかも、2版以降は継母になっているとはいえ、このオチの部分は変わっていません。さすがに絵本などでは削られているのでしょうか……、読んだことがないのでたしかなことはいえませんが、今度絵本のほうも読んでみて、確かめてみたいと思います。
読書感想まとめ
狐人的『白雪姫』衝撃の真実ランキング
- 第1位 『白雪姫』の衝撃の年齢
- 第2位 『白雪姫』の壊滅の起こし方
- 第3位 『白雪姫』の抹殺のラスト
ん? 話が違うぞ、と思われたそこのあなた、当ブログを読んでくださり、本当にありがとうございます! ネタの都合上(わかる人いますか? ちなみに兄貴のほうです)「狐人的読書感想」で語った順位を入れ替えて、「狐人的『白雪姫』衝撃の真実ランキング」をお送りしました。ただいずれも甲乙つけがたく、衝撃を受けたのは事実なので、広い心で受け入れてもらえればこれ幸いです(お願いします)。とくにここでの第1位は、前回ブログで読書感想を書いた作品の影響が大かもしれません(⇒押絵と旅する美少年/西尾維新=狐人的感想「江戸川乱歩さんの読書感想ブログとリンクさせていきたい!」)。よろしければぜひ。
狐人的読書メモ
さて以前に読書感想を書いた『赤ずきん』のブログ記事でもいいましたが、グリム童話はじつは子供には聞かせられない大人のファンタジーだった、というのはいまや有名な話です(⇒赤ずきん/グリム童話×東京グール×魔性の赤=魔法少女赤ずきんちゃん?)。
なぜ王妃は7歳の白雪姫に嫉妬したのか、その理由は単にその美しさだけにあらず、グリム童話では登場しない白雪姫の父王にあった、七人の小人たちの正体と白雪姫の隠された夜の仕事、王子の趣味と眠る白雪姫を引き取った真の意味……、これらはグリム童話の原作(初版)やそれ以前のエーレンベルク稿にも記されていない、ただの想像や脚色によるものとされていますが、調べてみるととても興味深いお話です(今回僕が読んだのは、グリム童話の原作―初版-ということで、そこに記されていなかったこれらの詳細については綴りませんでしたが)。興味のある方はぜひ。
以上、『白雪姫/グリム童話』の読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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