狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『一問一答/太宰治』です。
文字数1200字ほどの随筆。
狐人的読書時間は約2分。
人間は、正直でなければならない。失敗というのは、ごまかそうとして、ごまかし切れなかった場合の事を言うのです。人間は変っていませんが、服装は変っていますね。太宰治の一問一答。
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
(今回は全文です)
『一問一答/太宰治』
「何か、最近の、御感想を聞かせて下さい。」
「困りました。」
「困りましたでは、私のほうで困ります。何か、聞かせて下さい。」
「人間は、正直でなければならない、と最近つくづく感じます。おろかな感想ですが、きのうも道を歩きながら、つくづくそれを感じました。ごまかそうとするから、生活がむずかしく、ややこしくなるのです。正直に言い、正直に進んで行くと、生活は実に簡単になります。失敗という事が無いのです。失敗というのは、ごまかそうとして、ごまかし切れなかった場合の事を言うのです。それから、無慾ということも大事ですね。慾張ると、どうしても、ちょっと、ごまかしてみたくなりますし、ごまかそうとすると、いろいろ、ややこしくなって、遂に馬脚をあらわして、つまらない思いをするようになります。わかり切った感想ですが、でも、これだけの事を体得するのに、三十四年かかりました。」
「お若い頃の作品を、いま読みかえして、どんな気がしますか。」
「むかしのアルバムを、繰りひろげて見ているような気がします。人間は変っていませんが、服装は変っていますね。その服装を、微笑ましい気で見ている事もあります。」
「何か、主義、とでもいったようなものを、持っていますか。」
「生活に於いては、いつも、愛という事を考えていますが、これは私に限らず、誰でも考えている事でしょう。ところが、これは、むずかしいものです。愛などと言うと、甘ったるいもののようにお考えかも知れませんが、むずかしいものですよ。愛するという事は、どんな事だか、私にはまだ、わからない。めったに使えない言葉のような気がする。自分では、たいへん愛情の深い人のような気がしていても、まるで、その逆だったという場合もあるのですからね。とにかく、むずかしい。さっきの正直という事と、少しつながりがあるような気もする。愛と正直。わかったような、わからないような、とにかく、私には、まだわからないところがある。正直は現実の問題、愛は理想、まあ、そんなところに私の主義、とでもいったようなものがひそんでいるのかも知れませんが、私には、まだ、はっきりわからないのです。」
「あなたは、クリスチャンですか。」
「教会には行きませんが、聖書は読みます。世界中で、日本人ほどキリスト教を正しく理解できる人種は少いのではないかと思っています。キリスト教に於いても、日本は、これから世界の中心になるのではないかと思っています。最近の欧米人のキリスト教は実に、いい加減のものです。」
「そろそろ展覧会の季節になりましたが、何か、ごらんになりましたか。」
「まだどこの展覧会も見ていませんが、このごろ、画をたのしんでかいている人が実に少い。すこしも、よろこびが無い。生命力が貧弱です。
ばかに、威張ったような事ばかり言って、すみませんでした。」
狐人的読書感想
『人間は、正直でなければならない』というのはわかりますが、やっぱりそれがむずかしく感じてしまいますね。
『失敗というのは、ごまかそうとして、ごまかし切れなかった場合の事を言うのです』というのは、言い得て妙だなんて思います。ごまかそうとせずに生きられればよいのでしょうが、結局ごまかしている人間がもっとも得をしている世の中だから、みんなごまかして生きるしかないのかな、そんな気がします。
『人間は変っていませんが、服装は変っていますね』というのも頷けますね。人間の中身って、きっと変えることがむずかしいんでしょうね。
愛はよくわかりません。欲望や本能を愛という言葉や感情で飾っているだけにも思えるのですが、それだけではむなしい気がするのが愛なのかもしれません。
『世界中で、日本人ほどキリスト教を正しく理解できる人種は少いのではないかと思っています』とはどういう意味なんでしょうね? 逆に無宗教の日本人にキリスト教が正しく理解できるとは思えないのですが……だから、日本はいまだにキリスト教の中心にはなっていないということ? よくわかりませんでした。
そんなことしか言えずにすみません、そんな感じの今回の狐人的読書感想でした。
読書感想まとめ
ごまかし切れば成功できる世の中?
狐人的読書メモ
・最近のニュースとか見ててもそんな感じはする。
・『一問一答/太宰治』の概要
1942年4月、『芸術新聞 第五百六十一号』にて初出。初出時のタイトルは『三十歳の弁』。短いインタビュー形式の随筆。
以上、『一問一答/太宰治』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
(▼こちらもぜひぜひお願いします!▼)
【140字の小説クイズ!元ネタのタイトルな~んだ?】
※オリジナル小説は、【狐人小説】へ。
※日々のつれづれは、【狐人日記】へ。
※ネット小説雑学等、【狐人雑学】へ。
※おすすめの小説の、【読書感想】へ。
※4択クイズ回答は、【4択回答】へ。
コメント