狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『章魚の足/夢野久作』です。
文字600字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約1分。
タコの凧が八本足を自慢して、他の凧をバカにしてる。しかし、いざ凧揚げのとき、足が欅の枝に引っかかってしまい……「ああ、足がなければよい」と思う。傲慢への戒め。タコの足はじつは腕。
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
(今回は全文です)
『章魚の足/夢野久作』
凧屋の店にいろいろ並んでいる凧の中で、達磨と章魚とが喧嘩をはじめました。
「ヤイ達磨の意気地なし。貴様は鬚なんぞ生やして威張っていても、手も足も出ないじゃないか。俺なんぞ見ろ。こんなに沢山イボイボの付いた手を八つも持っているんだぞ」
「そんな無茶を言うものでない。お前も坊主なら乃公も坊主だ。坊主同士だから仲よくしようじゃないか」
「おれが貴様みたような奴と、手も足もないヌッペラボーと仲よくするものか。喧嘩すりゃあ負けるものだから、そんな弱い事を言うのだろう。態を見ろ、弱虫奴」
といきなりその長い八本の足で達磨を蹴り飛ばしました。達磨はたいそう口惜しく思いましたが、手も足もないのでただあの大きな眼玉から涙をホロホロ流して蹴られていました。
傍にいた奴凧が大層気の毒がって、
「章魚さん、もう喧嘩はおよしなさい」
と仲裁しました。
すると章魚は、
「お前なんか黙っておれ」
と言って又蹴りつけました。奴も怒ってはみたが、これも手が袖から出ず、足も二本しかないので、じっと堪えていました。
翌朝、太郎、次郎、三郎の三人に三つともそれぞれ買われて、原に連れて行かれました。そうすると太郎さんの達磨も次郎さんの奴も、元気よく高く高く揚りました。しかし三郎さんの章魚は長い足が欅の枝に引っかかりました。そして三郎さんが無理に引っ張ったために破れて仕舞いました。その時章魚は、ああ足がなければよいと思いました。
狐人的読書感想
タコの凧が、八本の足を持っていることを自慢し、ダルマやヤッコといった他の凧をバカにしていましたが、子供たちに買われて空に揚げられてみると、タコの凧の足は欅の枝に引っかかって破れてしまいます。
そこで驕り高ぶっていたタコの凧は、「ああ、足がなければよい」と思うわけですが、タコの凧にとって八本の足は他の凧にはない優れた資質であり、その資質が驕りを生んでいたのだとすれば、やはりそこにこそ、この物語の教訓を見出せるように思います。
「ああ、驕りがなければよい」というわけです。
傲慢な思いというのは、ちょっと油断するとすぐ心の中に浮かんでくる気がするんですよね。
ひとよりも仕事がうまくできたり、テストでいい点がとれたりしたとき、得意になってひとを見下しているような自分に気づきます。
自分が全然大した人間じゃないと知っているはずなのに、誰かを見下した気になっているんじゃないか、ということに後から気づいて、自己嫌悪することがけっこうあるんですよね。
スポーツ選手の人とかは、凄いことをしているのに全然驕っている様子がなくて、いつも謙虚にインタビューなんかに答えていて、本当に見習いたいなぁ、なんていつも思ったりします。
逆に、芸人さんとか芸能人の方とか、よく「天狗になる」みたいな話を聞くことがありますが、僕も本当に些細なことで天狗になることがあるような気がして、そのたびに反省したり自己嫌悪したりするのですが、根本的に驕りをなくすことができないでいます。
傲慢といえば七つの大罪の一つなので、そうそうやすやすとなくすことはできないのかもしれませんが、「ああ、傲慢がなければよい」と、タコの凧のように思っちゃいますね。
タコの凧の気持ちをわかったような気になって、しかしじつは全然わかっていないのかもしれない、今回の狐人的読書感想でした。
読書感想まとめ
八本足から七つの大罪、優れた資質が傲慢を生む。
狐人的読書メモ
・タコの凧はべつに「慢心をなくしたい」とは思っていなかったかもしれない。単純に「ある場合には優れた資質となるものも、ある場合には欠点となりうる」という話かもしれない。
・ちなみに、タコの八本の足は腕(「触腕」)である。
・タコは八本の腕、三つの心臓、九つの脳を持っている。
・タコの体は九割筋肉でできている。
・凧は、関東では昔から「タコ」だったが、関西では「イカ」と呼ばれていたという話がある。
・『章魚の足/夢野久作』の概要
1922年(大正11年)11月20日、『九州日報』にて初出。九州日報シリーズ。初出時の署名は「海若藍平」。短いながら含蓄に富んだ物語。
以上、『章魚の足/夢野久作』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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