狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『おやゆびこぞう/グリム童話』です。
文字5000字ほどのグリム童話。
狐人的読書時間は約14分。
子供が欲しい夫婦の間に産まれたのは、親指ほど小さな子供だったが、知恵を使って悪人をこらしめる! ……とはいえ、悪には悪で報いてよいの? 子供の自主性を重んじる親の気持ちは?
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
子供のいない百姓夫婦が「子供がいないのはさびしいなあ、親指くらいの大きさでもいいから、子供がいれば心からかわいがるのになあ……」と話していると、7ヵ月後、本当に親指くらい小さな子供が産まれる。二人は子供を親指小僧と名づけて大切に育てる。
ある日、父親の手伝いのため、親指小僧は馬の耳に入って指示を出し、荷車を引かせていた。するとその様子を見ていた二人の男が「その子供を売ってくれ」とお父さんにもちかける。町で見世物にするつもりなのだ。父親は「とんでもない!」と断ろうとするが、親指小僧は「お父さん、僕を売って。すぐにまた戻ってくるから」と促す。父親は仕方なく親指小僧の望むとおりにする。
町へ向かう道中、見事二人の男から逃げ出すことに成功した親指小僧は、牧師の家に盗みに入ろうとする二人の盗賊に遭遇する。「一緒に連れてって、手伝ってあげるから」。牧師の家に忍び込んだ親指小僧は、大声を出して女中を起こし、盗賊を追い払う。
その後、納屋の干し草の中で眠っていた親指小僧は、干し草と一緒に牛に食べられてしまう。親指小僧が牛の胃の中から叫んでいると、それを聞いた人々は牛に魔がとりついたと思い込んで、牛を処分してしまう。捨てられた胃は狼が丸呑みし、親指小僧はうまく狼を誘導して父母の待つ家に帰りつく。
狼の腹を切り裂いて、親指小僧を救出した父母は、二度と親指小僧を売らないことを誓い、親指小僧もずっと父母と一緒にいることを約束するのだった。
狐人的読書感想
親指小僧の視点と両親の視点で、それぞれ考えてしまう部分があったので、以下に書き残しておこうと思います。
まずは親指小僧の視点から。
単純に読めば、小さな体の親指小僧が、知恵を使って悪者をこらしめていく、冒険活劇となりそうですが、完全な勧善懲悪という感じでもありません。
親指小僧は、彼を見世物にしようとした二人の男と牧師の家に盗みに入ろうとした二人の盗賊を、それぞれ騙すかたちでこらしめています。
悪人だから騙してよいのか、利用してよいのか、悪には悪を返してもよいのか……。
なかなか難しい問題だなよなぁ……なんて単純に思いました。
本作の場合、命のやりとりをしているわけではないので、親指小僧の悪人に対する対応は、肯定的に受け取れるのですが、命のかかった現実問題の場合には、もっと複雑になるような気がします。
極刑はありなのか、なしなのか――みたいな?
うまい例えが思いつきませんが。
完全な勧善懲悪でないと思ったのは、親指小僧の行動が元で、罪のない動物たち(牛と狼)の命が奪われている点なんですよね。
これは完全によくないだろ……みたいな。
牛も狼も何も悪いことをしていないのに、親指小僧の行動に巻き込まれてしまい、その命を奪われてしまうというのは、なんだかかわいそうに思いました。
しかし現実でも、動物の命は人間によって、あっけなく奪われてしまうものなんですよね……。
これをかわいそうに思うのは、単なる人間のエゴであって、親指小僧の物語は、ファンタジーでありながらもリアルだと感じます。
ありえないのに、どこかリアルなのが、グリム童話の魅力の一つですよね。
親指小僧の両親の視点です。
親指小僧のお父さんは、親指小僧の「僕を売って」という望みを聞いて、一時的にではあれ、泣く泣く息子を手放すことになりました。
子供の自主性を尊重して、親としては決して好ましくないことであっても、認めてあげなければならないときが、親なら必ず訪れるものなのかもしれないなぁ……なんて想像します。
それを認めて、子供が成功したり成長してくれればいいのですが、必ずそうなるとも限りません。
失敗したりケガをしたり精神的に追い詰められてしまったり、あるいは命を落とす結果になってしまったら……子供の言うことを聞いてしまった親の後悔は、どれくらい深いものだろうと、想像するだけでも苦しくなります。
とはいえ、案外、子供というのはたくましく成長していくもので、『おやゆびこぞう』の物語のように、世の中「案ずるよりも産むが易し」ということのほうが多いのかな、とか、いろいろ考えた、今回の狐人的読書感想でした。
読書感想まとめ
目には目を、歯には歯を、悪には悪を?
狐人的読書メモ
・悪を倒すのに悪を利用することを悪だと思うのか、思わないのか。
・悪とは敗者のこと、正義とは勝者のこと?
・『おやゆびこぞう/グリム童話』の概要
KHM37。一寸法師など類型の話がやはり世界各国に見られる。それらはおおまかに五系統に分けられるという。一寸法師型、親指小僧型、親指小僧・童子と人食い鬼型、親指小僧・難題型、たにし息子型。親が読んでも子が読んでも、考えさせられる点がある童話。その意味で、読み聞かせにも向いているかもしれない。
以上、『おやゆびこぞう/グリム童話』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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