盗難/江戸川乱歩=宗教の内幕って、やっぱりこんな感じなんですかね?

狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

盗難-江戸川乱歩-イメージ

今回は『盗難/江戸川乱歩』です。

文字数12500字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約36分。

宗教にも商才が必要。意外と贅沢してる宗教家。
泥棒からの犯行予告。盗難事件の真相は?
教団X。1Q84。
新興宗教団体を題材にした小説はおもしろい。
創作における閉鎖社会の有用性。

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

私はある宗教団体の支教会で五年、住み込みの雑用係として働いていた。あるとき、教会の説教所が手狭になったということで、建て増しすることになった。主任は十日ばかりで五千円の寄附金を集めた。

そんなある日、主任宛てに妙な手紙が舞い込んできた。『今夜十二時の時計を合図に貴殿の手許に集っている寄附金を頂戴に推参すいさんする。御用意を願う』。それは泥棒の犯行予告だった。

主任は「いたずらだろう」と取り合わなかったが、私は心配でしかたなく、主任を納得させて警察へ届けに行くことにした。道中、偶然にも、四、五日前、戸籍調べにきた顔見知りの巡査に出会う。

私が一部始終を説明すると、巡査は「そんな間抜けな泥棒がいるか?」と笑ったが、念のため、今夜教会へ見回りに来てくれることになる。

その夜、応接間の金庫の前で、私と主任とその巡査と、三人で見張り番をするが、十二時半になっても泥棒は現れない。巡査が「一応金庫の中を確認しておいては?」と言うので、私は金庫を開けて中の札束を取り出して見せた。

巡査は片手にピストルを構え、札束を奪うと部屋の外へ。ふすまのすき間から銃口が覗いていたため、主任も私もしばらく動けないでいたが、やがて主任の奥さんがふすまを開けにくる。ピストルは、かもいの釘から紐で吊るされていたのだった。

ようやく、私と主任が泥棒を追って町を駆けていると、今度は本物の巡査が巡回しているのに行き合い、一部始終を説明する。巡査は「それは偽物の警官に違いない、すぐに捕まるだろうから安心しろ」と言うので、とても頼もしく思った。しかしその後、主任が度々警察へ出頭して様子を尋ねるも、結局泥棒は捕まらなかった。

この盗難事件から二ヶ月後、私は用事に出た帰り道で、立ち寄ったお祭りの人だかりの中に、あの泥棒そっくりの男を見つけて、気づかれないようそっと後をつける。が、尾行は男にバレていた。

「君んとこの大将には、まんまと一杯食わされたよ。うん? さては君までだまされていたのかい」と男は言う。札束はすべて偽札だった。ウソだと思うなら、確かめてみるといい、ここに百円札が三枚ある、君にあげよう。

男は行ってしまった。なるほど、話のつじつまは合う。主任は寄附金を偽札とすり替えて、着服していたのだ。主任が警察へ様子を聞きに行ったなんて、全部でたらめだったのだ。そんな主任の下働きがいやになった私は、すぐに教会を辞めたのだった。

しかし、話はここで終わらない。

ずっとあとになって、財布の底にしまっておいた偽札を、私の妻が勝手に使ってしまう。が、何事もなく使うことができた。つまりそれは本物のお札だったのだ。泥棒は、本物の札束を盗んでおいて、私の尾行を逃れるために、ウソで私をだましたのだ。

だけどそうなると、この事件、多くの謎が残る。泥棒を捕まえると言った巡査は何者だったのか? 泥棒の仲間だったのか、本物の巡査があとで買収されたのか? それとも泥棒の奴、偽札と間違えてうっかり本物をわたしてしまったのか?

ほかにもいろいろ考えられて、結局真相はわからずじまい……。

狐人的読書感想

狐人的にはおもしろかったのですが、一般的な評価はさほど得られていないようですね。

江戸川乱歩さん自身も、これを『息休めに属する拙作』だと思っていたらしく(いつもながらのストイックさ)、まあ、たしかに他の名作たちに比べてしまえば、ちょっと印象は薄くなってしまうのかな、という気はします。

真相は藪の中。事件が未解決のまま終わり、謎についての解釈を読者に委ねるリドル・ストーリーは、著者の得意とするもののようですが、この手法は読者の好みが分かれるみたいですね。

たしかに、オチがもやもやしたまま終わると、気持ち悪い感じはしますよね。僕はけっこう好きなのですが。

真相をいろいろ考えてみるのも楽しい気がするのですが、どうでしょうね?

今回は、「その他にも、まだ色々の考え方がありますよ」と「私」が言っているように、いろいろな可能性が考えられますよね。

狐人的には、主任と泥棒と本物の巡査と、三人ともグルだったんじゃないかなあ、などと推理しているのですが、どうでしょうね?

いろいろ考えてみて、どれも違うとは言い切れないところに、リドル・ストーリーのおもしろさがあるような気がしています。

『盗難』は、とある宗教団体(おそらく新興宗教団体)を題材にした小説ですが、中村文則さんの『教団X』を読んだのをふと思い出しました(あと村上春樹さんの『1Q84』とか)。

宗教団体といえばまさに閉鎖社会の代表格のような気がして、その内幕はなかなか外には伝わってこない印象を持っていますが、やっぱりそんな感じなのかな、なんて想像してしまいますよね。

『盗難』の支教会の主任は商才に長けていて、信者や寄附金を集めるのがうまかったようです(宗教にも商才が要る、というところはなかなか思わされるところがあります)。

暮らし向きも相当贅沢だったようで、なんとなく質素倹約のイメージがある宗教人とはかけ離れた人物像ですが、だけど現実でも、宗教家のひとはけっこう派手な暮らしをしているものなのかもしれませんね。

高級外車を乗り回していたり、ガンガンお肉を食べていたり、異性にだらしがなかったり、連日のようにクラブ・ホスト遊びをしていたり……。

最近、「富岡八幡宮事件」がスキャンダラスに報道されて、その内幕が少し垣間見えた部分もありましたが、やっぱり宗教って……と思わされて、とはいえ、まじめな宗教家のひとのほうが多いのかな、それとも――いろいろ想像してしまいます。

創作の舞台として、新興宗教などの閉鎖社会はとても興味深いです。その中で何か異常な事態が起こっていたとしても、閉鎖社会というだけで一定の説得力を持たせることができるように感じます。

学校や会社なども閉鎖社会といえるわけで、閉鎖社会を舞台にして、異常なできごとが巻き起こるストーリーというのは、考えやすいように思えるのですが、いざ考えてみるとそうやすやすとは思い浮かびませんね(汗)

とはいえ、創作の可能性を感じさせるガジェットではあるので、『閉鎖社会』というキーワードは常に意識しておきたいところ。

なんとなく、勉強になったような、なっていないような、今回はそんな感じの読書感想でした。

読書感想まとめ

宗教って、そんなもんなんですかね。
創作における『閉鎖社会』の有用性。

狐人的読書メモ

とはいえ、閉鎖社会はけっこう濫用されている舞台設定には違いない……。

・『盗難/江戸川乱歩』の概要

1925年(大正14年)5月、『写真報知』にて初出。「息休めに属する拙作」。リドル・ストーリー。

以上、『盗難/江戸川乱歩』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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