妖婦/織田作之助=早熟な小学生の恋愛事情は今も昔も変わらない?

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狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

妖婦-織田作之助-イメージ

今回は『妖婦/織田作之助』です。

文字数7000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約20分。

気が強く、プライドが高い美少女。

小三で男子を手玉に、中学の歳に男と家出、
黒姫団のリーダーとなるも……

のちに世間を震撼させる大事件を起こした妖婦の少女時代。

小学生の恋愛事情って……

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

東京神田の新銀町は江戸っ子気質の色濃い町だ。安子はそんな町の相模屋という畳屋に生まれた。長男が放蕩者で、この頃家は傾き始めていたが、母親は安子にどんなわがままも許し贅沢もさせた。そんなわけで安子は幼少から気位が高く、気が強く、人を顎で使い、しかし美しい娘だった。

小学校は土地柄か風紀が乱れていた。男子と女子は三年生にもなればラブレターのやりとりをした。男子が手紙を書いて、それに女子から返事がくると、二人の仲は公然と認められて、お互いに「おれの」「あたしの好い人」などと呼び交わすようになる。

安子は四年生になると、すでに好い人がいるにもかかわらず、クラス委員の男子を好い人にしてしまう。学校の帰り道にそのことを友達に聞かれると、「いつも勉強で一番になれないから、いつも勉強で一番の男子を彼氏にしたの」などと平然と言う。

やがて早熟な安子は、つぎの学校に上がる頃には女らしい体つきになり、近所の若い男たちの間でも評判になる。ちょうどそんなとき、安子と男の噂が安子の父親の耳に入る。父親は学校もお稽古事もやめさせて、安子を二階に監禁する。

安子はまだキスしかしていなかったので、父親の言うような大それたことなどしていないと腹を立てた。どうせなら大それたことをしてやろうじゃないの。二十日の監禁が終わると安子はすぐに家出して処女を捨てた。

家出した安子を父親が連れ戻したがまた家出した。今度の男は黒姫団のリーダーで、最初の男とは比べものにならないくらいあれが上手かった。男に誘われるまま、安子は悪の道に足を踏み入れた。脅迫や万引きなどには目もくれず、大きな仕事をする安子はやがて黒姫団のリーダーに祭り上げられるが、またしても父親に連れ戻されてしまう。

家業の畳屋が傾き、安子の悪評もあって新銀町には居たたまれくなった一家は、夜逃げ同然に埼玉の田舎へ引っ込んだ。三日で田舎暮らしに飽きた安子のもとへ放蕩者の長男がやってくる。「横浜で芸者にならないか」という兄の誘いを二つ返事で受けた安子は横浜に行って芸者になる。

このとき安子は十八歳。のちに、とある事件で世を震撼させることなど知る由もない。

狐人的読書感想

タイトルどおり、まさに「妖婦の話」といっていいでしょう。

ふと、中島敦さんの『妖氛録ようふんろく』を思い出しましたが、天性の美貌で男たちを惑わす女の話には何か惹かれるものがありますね。

中島敦さんの『妖氛録』に出てくる妖婦は「夏姫かき」といって、中国春秋時代に実在した人なのです。

ほかにも「武則天・西太后・妲己(あるいは呂雉)」を「中国三大悪女」と指すことがあり、中国にはとかく妖婦の多いイメージがあります。

まあ、ヨーロッパの有名どころだとマリー・アントワネットさんとか、世界的に妖婦(悪女)の話はたくさんありますよね。

現在でも女優やハリウッドスターのスキャンダラスな報道は、やっぱり人々の耳目を惹きつけますが、これは昔から変わることのない人間の性質のようです。

で、日本にもやっぱり妖婦(悪女)は実在していて、「日本三大悪女」は「北条政子・日野富子・淀殿」などとよくいわれますが、じつは織田作之助さんの『妖婦』の安子にはモデルとなった人物がいます。

それは「阿部あべさだ」という女性で、あらすじのラストに書いた「とある事件」というのが「阿部定事件」と呼ばれるものです。

概要を見てみると、阿部定さんがプレイの最中、本当に相手を窒息させて、愛人である男性の命を奪ってしまい、さらに局所を切ってしばらく持ち歩いていた、という――なかなか猟奇的、ショッキングな事件で、当時はこれが大きく報道され、大いに世間の耳目を集めたといいます。

(ちなみに報道で用いられる「局所」「下腹部」という表現はこの事件のときから定着したといわれています)

近年になっても映画化されていることからも、その反響の大きさがうかがい知れるわけなのですが、そんな安子の少女時代を描いているのが本作、織田作之助さんの『妖婦』です。

はじめは尻切れトンボな終わり方に違和感を持ちましたが、のちのこの事件のことを知れば、ある種の感慨を持って読むことができて、とてもおもしろい小説でした。

少女時代の安子は、たしかにのちに妖婦となる片鱗をのぞかせてはいますが、まだ不良少女といった感じでどこか気楽に楽しく読めます。

興味深かったのは当時の小学生の恋愛事情です。

小学校三年生にもなれば「彼氏・彼女」がいて当たり前だった、というのはさすがにちょっと早いかなあ、という気がしますが、調べてみると現代でも小学校高学年の四人に一人は付き合っている、なんて調査結果もあって驚かされてしまいます。

作中では時代柄ラブレター、手紙のやりとりでカップルが成立していた、というあたりはなんだかほほえましいようにも思えますが、いまはスマホとか小学生でも普通に使っていたりしますよねえ。

そう思えば、「最近の子どもは早熟だ」とかいわれますが、案外昔からあまり変わっていないのかなあ、なんて、おもしろく感じてしまいます。

安子の学校は土地柄風紀が乱れていた、と書かれているのですが、都会と田舎ではどっちがすすんでいるんだろう? ――なんてことにも興味を持ちました。

都会だから? いやいや田舎だからこそ!

と、どっちもありそうな気がするんですよね。

案の定、都会のほうがすすんでる、田舎の方がすすんでる、とどっちの意見もあって結局わかりませんでしたが、「都会のほうがすすんでる」という意見のほうが多い印象を受けました(ただし単純に住んでいる人口の問題かもしれません)。

気位が高く、気が強く、人を顎で使い、そして美少女――安子のキャラクターはマンガやアニメなどで美少女がたくさん出てくる現代だからこそより楽しんで読めるんじゃないかなあ、と単純に思いました。

「妖婦も萌えなのか?」というところは、ぜひほかの方の意見も聞いてみたいところです。

そんな意味でも創作のモチーフには適しているかもしれませんね。

――とかなんとか、今回はこのへんで。

読書感想まとめ

早熟な小学生の恋愛事情は今も昔も変わらない?

狐人的読書メモ

この話をもう少し突き詰めるならば、やはりスマホやSNSの普及が少年少女たちの貞操観念の低下を招いているのか、という点について論じてみてもおもしろいかもしれない。

・『妖婦/織田作之助』の概要

1947年(昭和22年)3月『風雪』にて初出。

以上、『妖婦/織田作之助』の狐人的な読書メモと感想でした。 阿部定事件をモチーフに、阿部定の少女時代を描いた作品。凄惨な事件の前日譚だが、少女時代にはまだ明るい雰囲気を感じられる喜劇的な短編小説。

以上、『妖婦/織田作之助』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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