アッシェンプッテル/グリム童話=王子様をぶっちぎるグリム版シンデレラ!

狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

アッシェンプッテル-グリム童話-イメージ

今回は『アッシェンプッテル/グリム童話』です。

文字数8000字ほどの童話。
狐人的読書時間は約17分。

はい。

グリム版シンデレラです。

そうです。

「魔法使いルート」じゃなくて
「ハシバミ・小鳥ルート」のほうです。

え? わからない?

家事を全部押しつけられて
ムキムキになったシンデレラが
王子様をぶっちぎる話です。

……冗談じゃありません。

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

アッシェンプッテル-グリム童話-狐人的あらすじ-イメージいつも思いやりのある子でいてね……、少女の病気の母は、そう言い残してこの世を去ってしまう。まもなく父が後妻を迎える。少女にとっての継母には二人の連れ子がいる。二人の義姉は見目麗しく、しかし心は真っ黒だった。少女のつらい日々が始まった。

アッシェンプッテル-グリム童話-狐人的あらすじ-イメージある日、父は祭りに行くことに。娘たちに何が欲しいか訊ねる。二人の義姉が、ドレス、宝石、とそれぞれ答えてから、少女は「帰り道、お父さんの帽子に一番最初に当たった小枝」を望む。少女はハシバミの枝を裏庭の母のお墓の傍に植える。枝は、少女の世話と涙をたくさん受けて、立派なハシバミの木となる。少女が泣いていると、ハシバミの木に小鳥がやってくる。少女は小鳥と仲良くなり、小鳥は少女の望みを何でも聞いてくれる。

アッシェンプッテル-グリム童話-狐人的あらすじ-イメージ王様が3日間のパーティを開くことになった。二人の義姉は招待された。少女もパーティーに行きたかった。継母に頼むと、継母は皿の豆を灰の中にぶちまけ、2時間以内に全部拾えば考えてやる、と言う。少女は小鳥たちに頼んで継母の指示をクリアする。すると継母は豆を二皿に増やして、さらに時間を一時間に短縮する。少女はこれもクリアする。しかし結局、少女はパ-ティーに連れて行ってもらえない。

アッシェンプッテル-グリム童話-狐人的あらすじ-イメージ悲しい少女は、ハシバミの木の下で願う。すると小鳥たちが木から飛び出して、金銀ドレス、絹の靴を持ってきてくれる。少女がパーティーに行くと王子がダンスを申し込む。立派で美しい身なりの少女、継母たちには誰だかわからない。夜も更けて、帰ろうとする少女の後を王子が追ってくる。少女は王子をぶっちぎる。王子は少女の父に事情を話す。王子と父が家の中に見たのは、灰色のワンピースを着て、灰の中で眠る少女だけ。

パーティー2日目。少女は昨日よりも綺麗なドレスでパーティーへ向かう。王子とダンス。夜、帰る時間。またしても少女は王子をぶっちぎる。少女が庭の洋梨の木に隠れたと言う王子、その木を斧で切り倒す父。しかし少女の姿はなく、やはり家の中には灰色の少女が一人。

パーティー3日目の少女は、さらに綺麗なドレスと金の靴を履いて出かける。王子とダンス。夜、帰る時間。またまた少女は王子をぶっちぎる……、が、今夜の王子は階段をべとべとにしておいた。少女の金の靴がそこに残されていた。

翌日、王子はこの金の靴にぴったり合う足のお姫様と結婚することを決める。少女の二人の義姉は大喜びする。上の姉が自分の部屋で靴を履くが合わない。母は親指を切れば入ると言う。無理矢理靴を履いて、上の姉が王子と馬に乗って城へ行く途中、ハシバミの木の小さな鳩が嘘を暴く。

すぐ取って返す王子。つぎは下の姉だがやはり足は靴に入らない。継母が下の姉の足を、血が出るまで無理矢理靴に押し込む。下の姉と王子が馬に乗って城へ行く途中、やはりハシバミの木の小さな鳩が嘘を暴く。

いよいよ少女の番だった。金の靴は少女の足にぴったりだった。少女と王子は、馬に乗って城へ。すると少女の肩に小さな鳩がちょこんと止まる。

アッシェンプッテル-グリム童話-狐人的あらすじ-イメージ

――結婚式の日、少女の義姉が少女に取り入ろうとして教会に向かうと、鳩が二人の目を片方ずつ食べてしまう。帰ろうとしたとき、反対の目も鳩に食べられてしまい、意地悪な二人の義姉は、戒めとして一生目が見えなくなってしまった。

狐人的読書感想

さて、もし何も知らずにこの物語を読んだとしたら、これがグリム版の『シンデレラ』とは気づかなかったかもしれませんねえ。

つまりアッシェンプッテルはシンデレラ

シンデレラ(吹替版)

グリム童話『アッシェンプッテル』、その副題は『―灰かぶり姫のものがたり―』となっており、「灰かぶり姫」から「シンデレラ」を連想する人は結構多いと思います。

シンデレラは、ペローの『サンドリヨン』(フランス語)を英訳したものですが、『アッシェンプッテル』もペローの影響を強く受けているといわれる反面、ペローよりも原話に近い物語だと考えられています。

『シンデレラ』の類話は世界中で確認されていますが、そのうち最も古いと考えられているものの一つは、紀元前1世紀のギリシャ、ストラボンという歴史家が記した『ロードピス』の話とされます。

そんなわけで、今回はグリム版シンデレラ『アッシェンプッテル』の読書感想ですが、僕が知っている『シンデレラ』の物語とは、違うところが結構あったので、そのあたりの比較を中心に書いていけたらと思います。お付き合いいただけましたら幸いです。

魔法使いルート?ハシバミ・小鳥ルート?

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僕の知ってるシンデレラでは、やはり少女を救ってくれる魔法使いが印象に残っていたのですが、『アッシェンプッテル』に魔法使いは登場しませんでした。

それにかわる重要なガジェットとして、ハシバミの木と小鳥たちが出てくるわけですが、「魔法使い」でも「ハシバミ・小鳥」でも、ファンタジックな存在が、不思議な力で助けてくれるのには変わりません。

大筋に変化がない以上は、「好みの問題」という気がしますが、「魔法使い」と「ハシバミ・小鳥」と、一般的にはどちらの展開が好まれるのでしょうねえ……、一度定着したイメージを覆すのはなかなかに難しく、また現代、小説、漫画、アニメ、ゲーム、映画……、と、ファンタジックな存在の代表として、その地位を不動のものにしている「魔法使い」のほうに、軍配が上がるような気がするのですが、いかがでしょう?

狐人的にも、普遍的に捉えるならば、やはり「魔法使い」のほうが好きなのですが(ハリポタとかロープレの魔法使い)。しかしながらシンデレラのストーリーラインを考えると、「ハシバミと小鳥」ルートを推したいです。

シンデレラの「魔法使い」って、何のゆかりも脈絡もなく突然現れては、少女の願いを叶えてくれるじゃないですか? しかし「ハシバミと小鳥」の場合、少女とのつながりが見えるので、その点感情移入がしやすかったです。

ハシバミの木は、毎日いじめられて、一人ひっそりと泣く少女の涙を吸って成長し、小鳥は少女と話をするうちに仲良くなります。友情や特別な絆に基づいた救済であったほうがリアルな感じがするし、説得力もあるように思うのですが、どうでしょうね?(童話にそれを求める必要ない?)

グリム兄弟の『ドイツ語辞典』では、小枝(若枝)は法律の象徴であり、同じくグリム兄弟の『ドイツ神話学』によれば、ハシバミの若枝は魔法の枝として用いられるそうです。

「ハシバミの杖」ってハリポタに出てきましたっけね? 作中に出てきたか、記憶が定かではありませんが、USJにオリジナル杖として売られているそうです、3500円で(なんか最近同じ話をしたような……)。

一説によれば、父親の帽子(権威と地位の象徴)を突き落とした小枝を娘に与えることは、父親が母親の遺産を譲渡する、といった意味にも解釈できるらしく、ただの小枝を要求するなんてけなげで無欲な娘だなあ、と思われた少女も、じつはこれを知っていて、暗に「お母さんの遺産をよこせよ」と父親を脅していたのかもしれない――とか深読みできそうですね!(……できないか)

「足を、靴に、入れる」の意味って……

アッシェンプッテル-グリム童話-狐人的読書感想-イメージ

シンデレラでは「ガラスの靴」、アッシェンプッテルでは「金の靴」という違いもありましたが、これはまあ「ガラスの靴」のほうがロマンチックな気がします(前述の一度定着したイメージによるものかと思いますが)。

ただ、「足を靴に入れる」という行いには、とある暗示があると聞き、その点おもしろく印象に残りました。

――すなわち、「足は男性を示し、靴は女性を示す」というのです。

……つまり、言いたいことはそれだけです。

人は見た目が100パーセントじゃなかった

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それから、シンデレラといえば美しい少女を連想しますが、『アッシェンプッテル』の少女については、その容姿を称えるような描写がありませんでした(きれいなドレスという描写は結構ありましたが)。

逆に、二人の義姉については、はっきりと「見た目はきれいで心は真っ黒」と描写されています。僕のイメージでは、シンデレラたる少女のほうが美しく、意地悪な継母や義姉は醜くあるはずなのですが、これが一般的な印象ではないでしょうか?

じつは、中世ヨーロッパでは、結婚に際して女性の美しさというものは条件として求められてはいなかったようです(まあ美しいに越したことはなかったとは思いますが……)。結婚は親が決めるもので、その判断基準はやはりお金でした(やっぱ金か! しかしながら人は見た目が100パーセント――じゃなかった! ――とか喜んでいいの?)。

『アッシェンプッテル』の父親の場合も、再婚ではありますが、やはり少女の継母となった女性の持参金が目当てだった、と考えられます。

そうすると、じつの娘がつらく当たられているにもかかわらず、それを助けようともしないことに、理由付けが可能ですよね。

相手の家格のほうが上だったのだと想像してみるに、家庭内の父親の立場……(言わずもがな)。

それでも血のつながった家族! 血を分けたじつの娘に対する愛情は? ――と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、昔の家族というものは情緒的で温かな共同体ではなく、経済機構としての趣が強かったのだといいます。

いまの妻のほうが、お金の面でも、またこれから自分の子を産んでくれるという面からも重要な存在なので、たとえ自分と血のつながった娘でもないがしろにして、むしろ家事全般を押し付けて何も感じないことも、当時の意識ではとくに不思議なことではなかったそうです(なかなかイメージしにくいですが)。

母性愛、父性愛といえば、本能に根差した先天的で確固たるもの、と思われがちですが、ひょっとすると、社会の在り方によって変化する、後天的なものなのではないか、という見方があって、これを興味深く思いました。

自分にゆとりがあるからひとにやさしくできるし、自分が持っているからこそひとに分けてあげられる。しかしお母さんやお父さんは、無条件に我が子へすべてを捧げられる――そんな存在とばかり考えてしまいますが、価値観の違う社会では、それは常識足り得ないみたいな、しかしながら本能的な無私の愛があったればこそ、今の社会があるのではないかみたいな、なんだかよくわからなくなるようなことをつらつら考えたりした、――というなんだかよくわからないお話になってしまいましたが(すみません)。

最後のオチは、まあグリム童話なら……、と納得(?)なものでした。

衝撃を受ける方もいらっしゃるかもしれませんが、「じつは残酷なグリム童話」といえば、いまでは有名なお話ですよね。

読書感想まとめ

『アッシェンプッテル』はグリム版シンデレラストーリー。魔法使いルートじゃなくてハシバミ・小鳥ルートです。この分岐、どちらがお好みでしたでしょうか? 足を、靴に、入れる。人は見た目が100パーセントじゃなかった。けれど。現代ではどうなんでしょうね?

狐人的読書メモ

[まとめ買い] アイドルマスター シンデレラガールズ あんさんぶる!(デジタル版ヤングガンガンコミックス)シンデレラといえば『アイドルマスター シンデレラガールズ』? 『アッシェンプッテル』とは小鳥さんつながりにも……(ならないか?)「シンデレラコンプレックス」という語が狐人的には印象深いです。

 

 

 

アッシェンプッテル-グリム童話-狐人的読書メモ-イメージ……それにしても追ってくる王子様をぶっちぎるシンデレラって――足速っ!(笑)

しかも王子様から逃げるときのあの身のこなし!(あらすじではカットしています。ぜひ本文を読んでいただきたいところ)

炊事、洗濯、掃除――家事を全部押しつけられるうちに、卓越した運動能力を身につけてしまったのでしょうか?

(人は見た目が100パーセント――じゃなかった!)というあたりから、なんとなく筋肉質なムキムキのシンデレラを、想像してしまうのですが、どうでしょう、ね?

(▼人は見た目が100パーセントなグリム童話)

かえるの王さま/グリム童話=人は見た目が100パーセント?

・『アッシェンプッテル/グリム童話』

KHM 21
グリム版『シンデレラ』。大筋は同じだが異なる細部が興味深い作品。

・シンデレラコンプレックス

いつか白馬の王子様が迎えに来てくれる。1981年、アメリカの女性作家、コレット・ダウリングが提唱した概念。女性の潜在意識に潜む「依存的願望」。男性に高い理想を追い求め続けてしまう。結果、婚期を逃してしまうこともしばしばという。

以上、『アッシェンプッテル/グリム童話』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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