狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『さるのこしかけ/宮沢賢治』です。
宮沢賢治 さんの『さるのこしかけ』は文字数4500字ほどの童話です。山男シリーズ。『ガリヴァー』『ベルセルク』『夢十夜』『不思議の国のナラオ』僕の読書感想はズレてる? これは落ちる夢の話なので勝手に楢夫の夢診断をしてみた…続きはブログで!
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
夕方、楢夫は家の裏手にある栗の木の幹に、白いきのこ「さるのこしかけ」が三つ生えているのを見つける。「こいつへ腰をかけるようなやつなら、すいぶん小さな猿だ……、いくら小猿の大将が威張ったって、僕のにぎりこぶしの位もないのだ……」などと考えていると、そこに三匹の小猿が腰かける。
真ん中の小猿の大将が、楢夫に話しかけるも、その横柄な態度に、楢夫は反発を覚える。楢夫が、自分のほうが大きいのをいいことに脅しつけると、小猿の大将は一笑して態度を改め、いいところへお連れしよう、と今度は丁寧な口調で楢夫を誘う。興味を引かれた楢夫は、小猿たちに導かれるまま、栗の木の中へ……。
小猿たちが電灯をつけると、栗の木の内部は煙突のようになっていて、階段が周りの壁にそって上まで伸びている。小猿たちに促されるまま、楢夫が階段を上り切ると、そこは林に囲まれた緑の草原で、日は天頂にある。楢夫が驚いて尋ねると、ここは種山ヶ原だと大将が答える。
突然号令をかける大将、すると小猿がバラバラやってきて、四つの長い列をつくる。これから演習をやると聞いた楢夫はすっかり楽しくなってしまう。ところが、大将の合図とともに演習が始まると、たちまち楢夫は縛り上げられてしまう。
それから、よっしょい、よっしょい、よっしょい――小猿たちが肩車をしてできた塔の林が、楢夫の身体を胴上げし始める。そして、「落とせ」の声がかかると、四方に散っていく小猿たち――そのとき、地面に落ちていく楢夫の身体を、山男の手が受け止める。
下ろされた楢夫は、草原に立つも、そこは家の裏の草原だった。そこには栗の木があり、三つのさるのこしかけが生えていて、小猿も山男もおらず、もう夜になっていた。「楢夫。ごはんです。楢夫」と呼ぶ、お母さんの声が聞こえた。
狐人的読書感想
さて、いかがでしたでしょうか。
「さるのこしかけ」は「きのこ」のこと――ということで、きのこ好きの方におすすめできる童話かもしれませんね(?)。
(そんなわけで―?―こちらのきのこ小説もよろしければ)
「平等」なんて言ってる時点でお前はズレてるんだよ
童話らしい童話で、とくに教訓や寓意、深い意味を探す必要もなく、ただ楽しめればいいのかなあ……、なんて思いつつも、何か意味を見出さずにはいられない僕なので、その点をちょっと考えてみました。
三匹の小猿に出会った場面で、楢夫は自分と小猿の体格の大小を比較して、偉そうな態度を取った結果、酷い目に遭わされてしまいました。
ここから「見かけでひとの戦闘力を判断してはいけない(?)」的な、教訓を読み取りました(「念使い同士の闘いに『勝ち目』なんて言ってる時点でお前はズレてるんだよ」「戦闘力… たったの5か… ゴミめ…」)。
しかしながら、では相手のほうが強いと知って、下手に出て媚びへつらうのが正解なのか、と考えてみるに、それもなんだか情けないなあ、といった感じで、正しい姿勢のようには思えません。
小さいからといって見下さず、大きいからといってむやみに仰がない――平等にひとを見て、接する姿勢が大切なんだなあ、ということなのかもしれません(……だけど、この考えが、すでに平等からはズレてるんでしょうか……、平等とか言っちゃうことがすでに差別なんだよ、みたいな……、う~ん、じつはなかなか難しいお話なのかもしれません)。
(「偏見はよくない!」童話の読書感想はこちら)
『不思議の国のアリス』と同じ、これは落ちる夢の話
楢夫が小猿の軍隊に縛り上げられるシーンは、『ガリヴァー旅行記』でリリパットの海岸に打ち上げられ気絶していたガリヴァーが、小人の軍隊に縛り上げられてしまった姿を彷彿とさせます。
じつは『さるのこしかけ』を読んでいて、別に思い浮かべた漫画があります。そう(?)、『ベルセルク』です。「断罪篇 ロスト・チルドレンの章」で、妖精(もどき)たちが戦争ごっこを始めたシーンを思い出して、小猿たちの演習が始まったときには、思わず「ゴクリ」でした。
さらに思い浮かべた小説があります。それは、夏目漱石 さんの『夢十夜』、第七夜の夢のお話です。これは、どこに行くのかわからない大きな船に乗っている自分が、海に飛び込み落ちていく……、といったものなのですが、僕はこのお話の中に、生きる上で誰もが抱える、将来の不安みたいなものが、描かれているように感じました。
(夏目漱石 さんの『夢十夜』の読書感想はこちら)
『さるのこしかけ』は、なんとも不思議なお話ですが、オチの部分はまさに『不思議の国のアリス』ですよね。じつは、『さるのこしかけ』の原稿表紙には、タイトル右わきに「種山ヶ原 夢中の一情景」というメモ書きが残されているらしく、どうやらこれも「夢オチ」と読み取って間違いないように思います。
落ちる、不安、夢――楢夫、何か悩みでもあるのかなあ……。
勝手に楢夫の夢診断をしてみた。落ちる夢の話のオチ
『さるのこしかけ』の物語を、楢夫の見た夢だったと解するならば、これは「小猿に胴上げされて落ちる夢」だと、要約できるのではないでしょうか。
そんなわけで、勝手に楢夫の夢診断をしてみました。
まず小猿の夢には、器用に道具を使い、群れで助け合う姿から学んで、自分を知りなさい、といった暗示があるそうですね。そこにトラブルや悩みを解決する手がかりがあるかも――ということでしょうか? 勉強のこと? 友達のこと? ……学校で何か悩みでもあるんですかねえ、楢夫。
胴上げは「お祝いのときにすること」なので、ポジティブなイメージですが、むしゃくしゃした気分や晒される状態を示唆するものでもあって、これは必ずしも良いことだけを表しているわけではないようです。
さらに楢夫の場合は、胴上げの直後に落とされているので、良い夢だとは言えそうにありません。違和感のある胴上げには、ぬか喜びや期待外れな出来事、といった暗示が含まれているのだとか。
その上、「落ちる夢」は、心の中の不安が高まっている状態のときに、よく見られるものなのだとか。勉強や仕事の競争に負けて脱落してしまうかもしれない……、「だ、大丈夫? 楢夫?」といった感じで、ちょっと楢夫の精神状態を心配してしまったわけなのですが……。
しかし、夢のすべてが心理面のみに関係しているわけではなくて、身体的側面から見る場合もあるのだとか。とくに成長期で身長の伸びる小中学生のときには、落ちる夢を見やすいそうです。
なので「楢夫はきっと大丈夫!」(?)という落ちる夢の話のオチでした。
読書感想まとめ
平等にひとと接することの大切さ。『ガリヴァー旅行記』『ベルセルク』『夢十夜』『不思議の国のアリス』はどれもおもしろい(もちろん『さるのこしかけ』も)! 落ちる夢を見た楢夫が心配だったので、夢診断してみた結果、「楢夫は大丈夫!」(?)でした。
狐人的読書メモ
『さるのこしかけ』は、宮沢賢治 さんの「山男シリーズ」(僕が勝手に言っているだけなのですが)。
どこからか颯爽と現れ、楢夫を助けてくれてやさしい山男は、謎の存在であり、惹かれるところがあります。
楢夫は『ひかりの素足』に登場する弟と同一人物?
この作品については、L.ビンスワンガーの「現存在分析」と結び付けて、無意識的に読者を惹きつける物語であることが指摘されているそうです(天沢退二郎 さんによる)。とても興味深いお話だと思いました。
・『さるのこしかけ/宮沢賢治』の概要
生前未発表作品。山男シリーズ。作中舞台の「種山ヶ原」はいくつかの作品でもモチーフとして描かれている。
・山男シリーズ
『祭の晩』『山男の四月』『紫紺染について』『さるのこしかけ』『種山ヶ原』
(ちなみにこれまでに読んだ「山男シリーズ」の読書感想はこちら)
以上、『さるのこしかけ/宮沢賢治』の読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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