狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『天国へ行った仕立て屋/グリム童話』です。
文字数1700字ほどのグリム童話。
狐人的読書時間は約5分。
神様以外人を裁いちゃダメとはいえ、人間社会に法律は必要、だけど法律もすべての悪を裁けるわけじゃなく、それは神様も同じ……とりあえず、人に物を投げちゃダメって話?
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
神様が使徒と聖者をみんな連れて散歩に出かけようと思い立ち、聖ペテロだけが天国で留守番をすることになる。神様は「自分の留守中誰も天国に入れてはいけない」と聖ペテロに言い置いて行く。
聖ペテロが門番をしていると仕立て屋がやってくる。仕立て屋は「自分は正直者だから天国に入れてほしい」と頼むが、聖ペテロは仕立て屋の手癖の悪さを見抜き、その頼みを拒否する。
足にまめができて引き返せない、どんな汚れ仕事でもする――仕立て屋がなお言い募るので、聖ペテロは憐れに思い、天国のドアを開け、隅のほうでおとなしく座っているよう申し渡す。
聖ペテロがその場を離れると、仕立て屋は勝手に天国を歩き回る。神様の金の肘掛け椅子を見つけて、仕立て屋がそこに腰かけると、下界の様子がなんでも見える。
一人の老婆が洗濯の最中、二枚のベールをくすねるのを見た仕立て屋は、そこにあった金の足台を老婆目がけて投げつける。そして何事もなかったかのように元のドアの隅に戻る。
神様が戻り、金の足台がなくなっていることに気づく。聖ペテロを問い質すと、仕立て屋を一人、天国に入れたことが判明する。
神様は仕立て屋を呼んで話を聞いた。
「私がお前のように罪を裁いていたら、お前はどうして罪を免れることができただろうか。すべての罪人に物を投げていれば、私の周りには何も物がなくなってしまうだろう。お前を天国に置くことはできない。どこでも好きなところへ行くといい。神である私以外、誰も人を罰してはならないのだ」
聖ペテロは仕立て屋を天国の外へ連れ出すしかなかった。
仕立て屋はまめだらけの足に破れた靴を履き、手に杖を持って天国と地獄の間にある待合の村に辿り着く。そこでは敬虔な兵隊たちが楽しく暮らしているという。
狐人的読書感想
いやいや神様、みんな連れて散歩に行くなら、聖ペテロも連れて行ってあげてよ……って、思ったのは、はたして僕だけ?
まあ、天国にも留守番が必要で、それを任されるくらい聖ペテロは神様の信頼が篤かったのだと捉えるならば、聖ペテロにとってそれは大変名誉なことであって、不満なんてなかったかもしれませんが。
しかし聖ペテロの優しさにつけこんで、恩を仇で返すようなマネをした仕立て屋は許せませんね。
グリム童話が成立した時代の仕立て屋という職業は地位があまり高くなかったらしいので、当時のそんな風習を表した作為的な描写なのだとすれば、仕立て屋を一概にバッシングしにくいところはあるのですが。
「結局この童話は何が言いたかったんだろう?」と考えてみるに、「神様以外に人を罰してはいけない」ということなんですかね、やはり。
宗教思想的、理想的には、言いたいことはわかるのですが、「神様以外に人を罰しない」なんて、現実的にはまず不可能ですよね。
そんなことを言っていたら、この世は犯罪者が跋扈する、天国どころかまさに地獄と化してしまうわけで……やっぱり法律のような、人が人を罰する仕組みは、人の世には不可欠だという気がします。
とはいえ、法律だって万能じゃなくて、法律で裁き切れない悪があることを思えば、復讐のような個人的裁きを、容認してしまいたくなるときもあります。
それを思うと、仕立て屋が老婆に行った行為もまた、一概には否定しにくい部分があるんですよね。
もちろん、仕立て屋の場合、自分のやってきたことは棚上げして、自分勝手な正義感で裁きを行っているので、とても正当な裁きだとは言えないわけではあるのですが。
神様だってすべてを裁けるわけじゃない、いわんや人間をや――といったことなんですかね……なかなか深い話なのかもしれないです。
あるいは、物を投げてはいけないという、単純な教訓話なのでしょうか、そうやって物がなくなってしまえば、たしかに困るのは自分ですもんね。
深い話をしようとして、浅い話になってしまった、今回の狐人的読書感想でした。
読書感想まとめ
神様以外人を罰してはいけないの?
狐人的読書メモ
・最後のオチがどうにも解釈できない。なぜ天国と地獄の間にある待合の村では、敬虔な兵隊たちが楽しく暮らしているんだろうか? そこが人間がいる世界だということを表しているんだろうか?……よくわからない。
・その後、聖ペテロが神様に罰を受けていなければいいが……。
・『天国へ行った仕立て屋/グリム童話』の概要
KHM35。簡単なようで難しく、難しいようで簡単な童話……なのだろうか? 解釈に迷うところがある。『勇ましいちびの仕立て屋(KHM20)』や『仕立て屋が天国にいない(KHM104)』など、仕立て屋が出てくるグリム童話はけっこうあって、冷遇されているように感じられるものも多い。グリム童話における仕立て屋の一種独特の扱いは、やはり当時の仕立て屋の社会的地位と無関係ではないように思える。
以上、『天国へ行った仕立て屋/グリム童話』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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