基本情報
- ジャンル:アドベンチャー
- 機種 :ファミリーコンピュータ
- 発売元 :トンキンハウス
- 発売日 :1989年3月24日
ゲーム概要
『暗黒神話 ヤマトタケル伝説』は1989年3月24日にトンキンハウスより発売されたファミコン・アドベンチャーゲーム。本作には原作があり、なんと1976年に『少年ジャンプ』にて全5話で連載された諸星大二郎先生の漫画『暗黒神話』をファミコンゲーム化した一本となる。
しかし、なぜ70年代のジャンプ漫画が時を経た89年にファミコンゲーム化する運びとなったのか? ――じつはFC版の約5ヵ月前の1988年10月25日にMSX2版が発売されており、コミックス新装版もこの年にリリース。さらにFC版と同年の89年にはOVA化もされていることから、どうやら「過去の名作をメディアミックスで復活&再評価しよう!」という企画だったのではないかと考えられる。
プレイヤーは主人公のタケシとなりて、まずは10年前に死んだ父がじつは殺されたという衝撃の事実を聞かされる。父の死んだ長野の蓼科からゲームが始まり、過去へ飛ばされ自身がヤマトタケルの生まれ変わりであることを知って……といった感じでストーリーが進んでいき――『女神転生』で日本神話にも興味を持ったファミっ子にはなかなかそそられる展開となっている。システムはオーソドックスな「コマンド選択式アドベンチャー」だ。出会う人々にヒントをもらいつつ、アイテムを集めたりしながらどんどん進めていく。当時のファミコンソフトとしてはグラフィックの描き込みに力が入っており、ホラー描写やボスのデザインは強烈に記憶に残ってる。今でも、章タイトルなどで大きな漢字が使われるなど、日本神話の雰囲気を可能な限り再現しようとした意欲が感じられる。
章の最後にはボスキャラとの戦闘が待ち受けており、このボス戦のみアクションゲームに切り替わるのも本作の特徴だ。画面の上から下を覆い尽くす巨大ボスは迫力満点。デザインは一部グロテスクなものもあり、あるいはトラウマになってしまっているファミっ子も中にはいるかも……? アクションパートはこのボス戦のみとなっており、横スクロールアクションステージなどは存在しない――基本的にはアドベンチャーゲームと言い切ってしまってよいだろう。ゲーム全体は全八章で各章「ADVパート+ボス戦」の構成、ストーリーは原作を簡略化・アレンジしたものとなっている。難しいところはほとんどなく、総当たりで充分進める。原作が全1巻であり、本作はそれをさらに短くしている都合上、ファミコンADVでありがちな「1~2時間でクリアできてしまうボリューム不足」が指摘されている。しかしながら、日本神話を元にしたホラーなストーリーは、当時プレイしたファミっ子たちの間では語り草となっており、サクッと短い時間で遊べるレトロゲームは現代では受け入れやすいとも捉えることができそう。総じて本作は、レトロゲームとしても原作への入り口としても、充分にその魅力を伝えている作品と言えるだろう。
ストーリー
●事件の始まり
主人公・武は考古学好きの少年。武の父親は武の幼いとき何者かに殺された。目撃者は武一人。その死には謎が多く、犯人も未だ捕らえられていない。
10年後、武は父の死の謎を探るうち、それは単なる殺人事件ではないことを知る。
父の死は、武の家(山門家)と、古代、ヤマトタケルに滅ぼされたクマソ一族との1600年に及ぶ戦いの一部であったのだ。
●クマソ一族の呪いとは
クマソ一族は、1600年前、ヤマトタケルに滅ぼされたとき、一族を滅亡に導いたこの世界に呪いをかけた。
『いつか、クマソ一族の神・暗黒神を復活させ、この世に死と破壊をもたらす……』と。
その呪いが、父の死を契機に今、始まろうとしている。呪いを解き暗黒神の復活を阻止するためには山門家が守護神として戴く、「アートマン」を、やはり、この世に呼び出さねばならない。その資格がある者は、武一人!
暗黒神の復活とは!? アートマンとは!? 壮大な謎を秘めた、伝奇ロマンアドベンチャーが、今始まろうとしている!
●アートマン及び暗黒神について
アートマンとは、古代インド神話で、世の中の真理を司る最高神のことです。このゲームでは、アートマンにさまざまな意味を与えていますが、あなたがゲームを解き終わる時点で、アートマン・暗黒神の意味が判るようになっています。さあ、あなたも武と共に、アートマンの謎を解き明かしてみて下さい。
取扱説明書 <序章> より
れとげ部!での評価
ジャンプげ?:
ここがジャンプげ?
70年代のジャンプ漫画が80年代後半にまさかのゲーム化!?
本作は上でも書いた通り、1976年に『少年ジャンプ』にて連載された諸星大二郎先生の漫画が原作となっている。「なぜ70年代の漫画を89年にファミコンゲーム化したのか?」――当時もとっても疑問だったな。そして、さらに時を経て――再び同じような疑問を抱くことになろうとは……。というのも、このゲーム、2018年に創刊50周年記念バージョンとして発売された「ジャンプミニファミコン」の収録タイトルの一つだった。「なぜ暗黒神話だったのか? 他に適当なタイトルはなかったのか?」思わずにはいられなかった。いや、誤解なきよう申し加えておくけど、『暗黒神話』は決して悪くない。諸星大二郎先生の漫画といえば他にも『マッドメン』という作品があって、これはあの『天空の城ラピュタ』に登場する呪文「バルス」の由来ともされているって有名な逸話があったりする(なんでも宮崎駿監督がこの作品のファンだったらしく影響を受けていたんだとか)
先生の作風は独創的で人を選ぶ感はあれど、このゲームで興味を持ったならぜひとも原作に触れてみると、ひょっとしたらよき漫画との出会いに繋がるかもしれず――そういった観点において、時を経てゲーム化された意味は確かにあったのかもしれないなとか個人的には考えているよ。
コメント! (レトゲで一言!)
「ジャンプゲームなの?」と時を経て再び疑問を抱く趣深いレトロゲーム。