基本情報
- ジャンル:アドベンチャー
- 機種 :ファミリーコンピュータ
- 発売元 :エニックス
- 発売日 :1985年11月29日
ゲーム概要
『ポートピア連続殺人事件』は1985年11月29日にエニックスより発売のファミコン・アドベンチャーゲーム――ご存じ『ドラクエ』の堀井雄二氏が「初めて手掛けたADV」である本作は「FC初のADV」でもあって、なんと60万本を売り上げたファミコン初期のヒット作(しかも大元にあたるPC版はシナリオからプログラム、グラフィックに至るまで、堀井氏がすべて一人で製作していたそう!)。そんなわけで当時プレイしたファミっ子もきっと多いはずだよね!
本作において最も有名なのは「犯人は○○」というフレーズで、現代でもネットスラングとして「ネタバレを指す意」や「犯人が分からない」ときに使われることがある。これは何でも、かのビートたけしさんがラジオ番組『ビートたけしのオールナイトニッポン』で本作を実況プレイ中に「思わず犯人の名前を口走ってしまった!?」ことが由来とも言われている――そして、この盛大なネタバレにもかかわらず「放送後本作の売上が伸びた!」との逸話があって、「犯人が分かっていてもなお面白い!」アドベンチャーゲームとしてファミっ子たちの間じゃ知られているね。
タイトルからも窺えるように本作は「推理・サスペンス」ADVゲーム――神戸で起きた密室殺人事件を、プレイヤーが警部となって部下のヤスとともに捜査を進めていくストーリーだ。舞台は兵庫と京都で、これは堀井氏の出身地が淡路島の洲本市であることから設定されたものだといわれている(ゲーム中でも高速船で淡路島の洲本へ渡るシーンが登場する)。本作発売当時は氏が『週刊少年ジャンプ』で「ファミコン神拳」のコーナーを担当していたこともあり、そこで攻略情報が積極的に紹介されていたっけ……。これを見てクリアしたファミっ子も少なくないんじゃなかろーか。てか、これを見ずにクリアしたファミっ子はいったいどうやってクリアしたの??? というほど、じつは本作の難易度は高い!
その原因としてはやはり「まだゲームシステムが未成熟だった」ことが挙げられる。このソフトにはセーブもパスワードもなく、「むしめがね」による捜索も「当たり判定が極めて狭い」場合が多く、有名な暗号「こめいちご」も解読に必要となるツールが当時まださほど普及していなかったこともあり、とくに子供には難しかったな(昔はネットもまだなかったし……)。しかし、だからこそ「友達間での情報交換が最高に楽しかった!」思ひ出。「犯人は誰だ?」「地下迷路どうやったら行けるん?」「あっこであのアイテムを見つけないと先へ進まれへんぞ」などなど。当時プレイしたファミっ子は今でもそれぞれの思い出を持っているに違いない! 現代でも、グラフィックのしょぼさやシステムの不親切さで敬遠してしまうのはもったいない。犯人は分かっていても楽しめる。だから、そろそろ配信してほしい! 『ポートピア連続殺人事件』はそんな「神げ!」だと私は思っているよ。
ストーリー
突然、部下のヤスが、血相をかえて、飛びこんできた。
「大変です、ボス! ローンヤマキンの社長・山川耕造が自殺しました!」
「な、なに~っ!?」
オレは、捜査一課の腕きき刑事である。
山川耕造…サラ金会社・社長。その悪質な経営振りで、人を自殺に追いこんだことはあったが、まさか、その耕造が自殺してしまうとは……。
オレにはどーしても信じられなかった。
「しかし、ボス。耕造は完全な密室で死んでいたんですよ」
「話してみてくれ」と、オレ。
「ええ、見つけたのは、耕造の秘書の沢木文江って女性なんですが、耕造がいつまでたっても会社にあらわれないので、耕造の屋敷まで様子を見にいき、そして」
ヤスの話をまとめてみると、こうだった。
屋敷に着いた文江は、門番の小宮という老人に中に入れてもらう。
「たぶん書斉におるんじゃろ」と、小宮老人。
しかし、書斉のドアには鍵がかかっていて、いくら呼んでも返事がない。おかしいと思った2人は、体あたりしてドアをたたきあけ、そこで耕造の死体を発見したということだった。
「しかも、ボス。小宮が気づいたんですが、書斉のドアには内側から鍵が差しこまれていたそうです。」
ヤスの話を聞きながら、オレは煙草を灰にする作業に専念していた。
これは、本当に自殺なのだろうか………?取扱説明書 <ポートピア連続殺人事件-STORY-> より
れとげ部!での評価
神げ!:
ここが神げ!
小ネタも印象的!
このゲームは「犯人は○○」以外にもネタが豊富。例えば、電話番号を「0000000000」と入力すると現れ、犯人を推理してくれる「リカちゃん」。地下迷路の壁に書かれた「もんすたあ さぷらいずど ゆう」は如何にも意味深だが、じつは本編には全く関係ない堀井氏の遊び心で、氏もハマった3DダンジョンRPG『Wizardry』からのパロディ(モンスターから不意打ちを受けると「Monster surprised you」のメッセージが表示される)。パッケージ絵は『シティーハンター』や『キャッツアイ』の北条司先生が描き下ろしているとか(ちなみにこのパケ絵がネタバレとなっていて「ラスボスが堂々と載っている」ドラクエI、IIのパッケージにも踏襲されている)。――今パッと出てくるのはこのくらいなんだけど、たぶんもっとあるはず!(ちなみにファミコン初期のソフトだけにプレイヤーもまだファミコン操作に慣れておらず、「IIコンのマイクで「ヤスの名前を呼んだ」や「地下室で叫び声を上げた」などの思い出を語るファミっ子たちも少なくなく――「それ、わかる!」ってなったな!)
コメント! (レトゲで一言!)
「犯人は○○」があまりにも有名だが、犯人捜しを楽しむのはいろんな意味で難しい。Wiz好きなら「もんすたあ さぷらいずど ゆう」もあるよ。
ちなみに「堀井雄二ミステリー」は『ポートピア連続殺人事件』『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』『軽井沢誘拐案内』(PCのみリリース、FC移植はなし)の3作が発売されているが、じつは以降の新作の構想が進められていたことが知られている。香港が舞台の『九龍の牙』、ソ連(現ロシア)が舞台の『白夜に消えた目撃者』の2作で、当時のパソコン雑誌にタイトルまで発表されていた。どちらも取材旅行までしたらしいのだが、結局リリースされることはなかったのである。