基本情報
- ジャンル:RPG
- 機種 :ファミリーコンピュータ
- 発売元 :任天堂
- 発売日 :1989年7月27日
ゲーム概要
- はい出ました! みんな大好き! 『MOTHER』(おかーさーん)! 『MOTHER』といえばディレクターが糸井重里氏。糸井重里氏といえば徳川埋蔵金。そんなあなたは間違いなくファミコン世代! だよねー。コピーライター・タレント・作家……ホントこの頃の氏はマルチな才能が留まるところを知らなかったよね。
- そんな糸井氏のセンスが存分に発揮されたこのゲーム。なんて評したらいいんだろ……RPGといえばほぼほぼファンタジーしかなかったあの時代、現代アメリカを舞台にまさに現代(80年代)を表現した意欲作。当時の任天堂が示したRPGブームに対する一つの答えがここにある――みたいな。
- 80年代アメリカといえば、そう『スタンド・バイ・ミー』だよね(?)。そんなジュブナイル小説の世界を思い起こす、ノスタルジックな作風が『MOTHER』の大きな特徴のひとつ。ドラクエももちろんいいんだけれど、僕らが欲しかったのは「自分と同じような少年が冒険する物語」。そう、そんなものがいつの時代も求められているような気がする今日この頃。
- このゲームは設定がとにかくリアル思考で、例えば主人公の武器とかバット。おともだちの武器はフライパン、エアガン、ナイフと、リアルでも割と攻撃力高めなアイテムたち。とくにエアガンとか、進めるうちに火炎放射器やレーザービームとかなってって「銃火器を構えるいじめられっ子最強伝説」。のちに現実のアメリカでは、いじめを受けた生徒による銃乱射事件が相次いで、そのあたりもリアルな感じあるある。
- 魔法はPSI(超能力)に置き換えられてて、この辺りはまあ非現実的っていうか超現実的な。あとお金の入手方法な。モンスターを倒したらお金を落としてくれる――なんて冷静に考えるとありえないっしょ! っていうよくあるツッコミ。そんなわけで本作は「パパが銀行口座にお金を振り込んでくれる」って超現実路線。至る所にATMが設置され、引き出すにはキャッシュカードが必要だったり。さらに家庭における父親といえば「お金をくれる存在」と化してる事実。忙しい企業戦士の孤独と悲哀、そして親心をとっても上手に描いてる。
- そんなパパに電話をかけてセーブする、回復アイテムはオレンジジュース、ハンバーガーなどの食料品、治療は病院へ――などなど。ゲーム後半のライブハウスイベントではダフ屋がぼったくり価格でチケットを売ってたり。ビールをおごってくれるという人の誘いに乗って飲酒してしまうと捕まって武器を取り上げられたり。溢れすぎるリアリティが本当最高なんですよねー『MOTHER』って。
- 敵キャラやモブキャラのセリフひとつにもこだわりが感じられたりもする。主要キャラ以外の人物像もしっかりと作り込まれてる。BGMものちに音楽の教科書に採用されていたりする。フィールドと町が一体化してるシームレス(境目がない)なMAPにもこだわりが感じられるし(ただし、このマップはめちゃめちゃ広かった! 良く言えば「リアルに冒険してる感出てる」けど悪く言えば「いや、これいつまで歩けばいいんだよ!?」。個人的には迷いやすいし、時間かかるし、ちょっときつかった思ひ出)全体的によくできてる。
- ただセールスで見れば売り上げは約40万本。当時の任天堂のタイトルとしてはやや物足りないこの感じ。とはいえシリーズ化もしてるし、知らない人の方が少ない気がするこの感じ。レトロゲームというノスタルジアの中に、真剣に現代を捉えようとした製作者の足跡が見られて、そんな独特な世界観が今でも高く評価されてる。
- そんな『MOTHER』は間違いなく「神げ!」。ファミコンRPGの大傑作と評するに些かの躊躇も持たぬ!
ストーリー
1900年代のはじめのことです。アメリカの田舎町に黒雲のような影が落ち、ひと組の夫婦が行方不明になりました。夫の名はジョージ、妻の名はマリア。
人々は嘆き悲しみましたが、神に祈る以外にできることはありませんでした。その願いが通じたのか、2年ほどしてひょっこりとジョージが家に戻ってきました。しかし、どこへ行っていたのか何をしていたのかについては誰にも話そうとしませんでした。不思議な研究に没頭するジョージの姿をみて、いろいろな噂が飛び交いました。
しかし、いつしか時が過ぎ、人々の口に噂がのぼることもなくなりました。ただ、人々が忘れていないのは、妻のマリアがとうとう帰って来なかったことです……。
そして1988年。
大変だ! 大変だ!
何が大変かって? ミニーの部屋では電気スタンドがガタガタ動きまわっているし、ミミーの部屋ではミルク飲み人形がクルクル飛び回っているんだから、これ以上大変なことがあるかい?
まだちいさな妹たちを守ることはぼくの役割だろう? そういうぼくだって12歳の子供だけど、ウチには男はぼく一人。3人のレディを守らなければならないんだ。そうそう、ママはどこにいったんだろう?
*
ふー。なんとかウチの中も静かになった。おろおろしていたママもおちついている。そうだ! パパに電話しよう。
「それはラップ現象だな。ひいおじいさんが超能力(PSI)の研究をしていたはずだ。物置を探せば何かわかるかもしれない」
やっぱりパパはたのもしいや。だけど少しドジなのは、物置の鍵をどこに置いたか忘れてたってこと。でも、ぼくにはすぐわかった。
物置の中にはひいおじいさんの日記とか、けっこう役に立ちそうなものがあった。えっ!? 何に役立つかって?
ぼくは決心したんだ。ぼくの力でこの不思議な出来事の原因をつきとめて、ママとミニーとミミーを守るんだってね。
取扱説明書 <ぼくとひいおじいさんの不思議な物語> より
れとげ部!での評価
神げ! :
ここが神げ!
- クスッときてホロリとくるストーリー!
――「エンディングまで泣くんじゃない」との当時のキャッチコピーが示す通り、本作には思わずホロリとくる切ないシーンがいくつも盛り込まれてる。例えば、フライングマンやイヴの結末。例えば、テディの話。あと、ゲームの根幹に関わってくるメロディの話とか。メロディはラスボス攻略にも必要になってくる重要な設定なんだけど、たしかに泣ける話なんだよねー。とはいえ、これは今になってインターネットなどでストーリーを理解したから言える話でもあるある。正直、当時の感想としては雰囲気はなんとなくわかるんだけど、ストーリーの詳細はよくわからんかったな。たぶん、ファミコンあるあるでよくある容量不足的な。たぶん、ストーリー全体を追って説明するだけの容量が足りなかったんだと思われ。ゆえに不明瞭な部分も散見されるっていう。でもだからこそ、今再びプレイする意味があるっていうか。ネットでストーリーを追って、改めてプレイすると感動も一入って感じ。ここにもレトロゲームの良さがあるって個人的には思ってる。 - あのポケモンもここから!?
――本作を開発するにあたって糸井氏と任天堂が設立したのがエイプ。そしてそこにやってきたのがポケモンの生みの親として知られる田尻智氏っていうね。そのとき持っていた企画書にじつは『ポケモン』のアイデアがあったっていうよね。『MOTHER』にしてもフィールドとか、主人公のドット絵とか、ポケモンを彷彿とさせる仕上がりなんだよね。
コメント! (レトゲで一言!)
継続プレイ時間が2時間になるとパパから電話がかかってくるっていうね。どこでもセーブできるのはマジ便利っていう。ただ特定の地点で「いいえ」を選び続けているとパパから電話がかかってきて怒られた上で強制送還されてしまうっていうお遊びもあったな。ところでこの時代に携帯電話ってあったのかね? そんなところにも現代を感じられる要素があったり。