基本情報
- ジャンル:RPG
- 機種 :ファミリーコンピュータ
- 発売元 :スクウェア
- 発売日 :1987年12月18日
ゲーム概要
- 『ファイナルファンタジー』はまじファイナルファンタジーだよね!
- 本作がリリースされた1987年末は『ドラクエⅢ』の発売が2ヵ月後に迫っていた空前のRPGブーム期だった。本作もそうしたブームの中でリリースされた一本に過ぎなかった――そうなるはずだった。ゲーム雑誌では「『ドラクエⅢ』までの繋ぎ」と評価するライターもいたほど。それほど事前の注目度は高くなかった。あくまで数ある新作RPGの中の一本って扱いだった。
- プレイヤーはクリスタルに導かれた「光の4戦士」となる。平和を取り戻すため旅に出る。まさに王道のファンタジーストーリーである。ゲーム序盤はガーランドにさらわれたセーラ姫を救出するためカオスの神殿へ向かう。ガーランドを倒し、姫を救出したことで、王によってコーネリア北の橋が修復される。その橋を渡ることで壮大な冒険への幕が上がるのだ。
- ここで挿入されるオープニングシーンが「まるで映画のオープニングシーンのようだ」と多くのプレイヤーを驚かせた。序盤からボス級の敵との戦闘を交えたクライマックスのような展開も、まさに映画的演出だった。この一連の流れは一気にプレイヤーの心を鷲掴みにした。
- システム面もいい。
- 主人公の4人は決められた6種の職業(戦士、シーフ、モンク、白・赤・黒魔術師)の中から選んで自由に組むことができるジョブシステム。これは『ウィザードリィ』や『ウルティマⅢ』を意識したつくり。
- しかし当時はこれがなかなか挑戦的な試みだった。先にも述べた通り、ファミコンのメインユーザーは小・中学生。その場の勢いや直感で行動しがちな低年齢層にこのようなシステムを遊ばせるには勇気がいった。その証に『ドラクエ』シリーズも3作目まで職業とパーティ編成を自ら考えて組み立てる方式には踏み切れなかった。購入したら即プレイ。説明書を熟読する子どもってそんなにいないもんね。
- でも、このジョブやパーティ編成についてはバランス設定がすばらしかった。回復枠の白魔術師は必須だけど戦士やモンクで固めた脳筋パーティもそれはそれで強い。肉弾戦ポーションがぶ飲み戦法でもクリアしようと思えばクリアできちゃう。ゲーム中盤にはクラスチェンジしてパーティが強化されるのも熱い。グラフィックもかわいい系のキャラがマッチョ系になってパワーアップを実感できる。(私はかわいい系のキャラたちが好きだけどね)
- ただ、魔法はちょっと玄人向け。店で購入して習得するカタチで、MPは存在せず各レベル帯で回数制になっていたため、ガス欠を起こしやすく連発するわけにはいかない。習得は1レベル帯で3種類までだから、有用な魔法を把握して選ぶ必要もある。昔のロープレ初心者にはなかなか難しかったんじゃないかと思うよ。
- そしてスクウェア・ファイナルファンタジーといえばグラフィック。
- そのこだわりは1作目から顕在。フィールドマップ上の町の表現も1ブロックですませず、大きく見せることで存在感を演出。とくに戦闘シーンはキャラグラフィックを右端に表示させて、攻撃時にはアニメーション表現を導入、HPが少なくなるとうずくまるなどの変化も取り入れ、視覚的にパーティの状態を把握できる手法がとられてる。プレイヤーが第三者視点で見られる戦闘演出は、明確な『ドラクエ』との差別化であり、当時のRPGの表現としても斬新だった。
- ここまでストーリー性、システム面、グラフィック面と見てきたけど、それ以外にも神ってる要素はまだまだある。
- イメージイラストに天野喜孝氏を起用した点。『ドラクエ』とは違う大人なイメージを打ち出すことに成功してる。
- 植松伸夫氏の生み出したBGMは『ドラクエ』のクラシック音楽とは異なるポップス寄りのサウンドで構成されていて、音楽面でも『ドラクエ』と対極となる魅力を打ち出してる。ここで面白いのが、植松氏が急な依頼に対応して「プレリュード」を30分程で作曲したという秘話。『ドラクエ』の「序曲」もすぎやま氏が5分程度で完成させたという対比。非凡な才能の持ち主がそのセンスを遺憾なく発揮したときの凄さが凄い。
- 天才といえばイラン出身のプログラマー、ナージャ・ジベリ氏の逸話もまた凄いし面白い。有名なとこだと「FCでは不可能といわれてた飛空艇の高速スクロール移動をあっさり実現」とかね。もちろん『FF』の生みの親と称えられる坂口博信氏も言わずもがな凄いし。
- そんなこんなで、いろいんな要因が絡み合って誕生した『ファイナルファンタジー』は、結果的に『ドラクエ』とはまた違った多くのRPGファンを獲得、50万本を超える売り上げを見事に達成し、現在まで続く日本を代表するRPGシリーズの礎を築いたのである!
ストーリー
長い間、人々に語りつがれてきた光の伝説がある。土、火、水、風をつかさどる4つのクリスタルに光が宿る限り、この世界の平和は守られる。そして、クリスタルの光が失われたとき、4人の光の戦士が現われると……。
この世界が光につつまれ、平和であったのは、いったいどのくらい前だったのだろう。空はよどみ、作物は枯れ、海は荒れている。長い間眠っていた火山は狂ったようにほえ、火をふき上げた。人々はこれらが巨大な悪のしわざであることを知っていたが、だれひとり立ちむかえる者はいなかった。ただ神に4人の光の戦士が現われることを願うのみだったのである。
そして、人々の願いが神に通じたのか、ついにコーネリアの都にクリスタルを持った4人の戦士が現われた。
クリスタルの光をとりもどすのは、自分たちしかいない。自分たちの手で、この広い世界のどこかにあるというクリスタルの祭壇を見つけださなくてはならないのだ。そのためには、モンスターたちの支配に屈せず、この世界に平和をとり戻そうと光の戦士たちの出現を待ちわびていた賢者や人々に会い、数々の秘密をとき、行く手に立ちはだかるモンスターを倒していかなければならない。4人の戦士が持つ4つのクリスタルすべてに光をとり戻すまで、彼らの旅は果てしなく続く。
行け!伝説の戦士よ。闘いはまだ始まったばかりなのだ。
取扱説明書 <ものがたり> より
れとげ部!での評価
神げ!:
ここが神げ!
- 会社の運命を変えた!
――スクウェアは『テグザー』の移植でファミコン市場に参入。7番目っていう比較的早い時期からライセンス契約を結んでた。『キングスナイト』『とびだせ大作戦』『ハイウェイスター』とか個性的なゲームをコンスタントにリリースしてたんだけど、なかなか他に抜きん出ることができず、数あるサードパーティーの1社という立ち位置に甘んじてた。おそらく、それまでPCゲームを主軸に制作してきた開発陣と、家庭用ゲーム機・ファミコンで遊ぶメイン層の小・中学生との間で齟齬があったんだと思うの。「マニアックなものを手掛けてきた作り手側のこだわり」と「遊ぶ側の要求」がかみ合ってなかった感じ。そんな経緯から経営状況が逼迫してたスクウェアは、ファミコン事業からの撤退も余儀なくされるほど苦しかったという。最後の賭け。これがダメならもう終わり。ファイナルファンタジー。そんな思いで制作された本作は、その後の会社の運命を変えたっていう、有名だけどまさにファンタジーみたいな話でめっちゃ好きなんだよね。(嘘だっていい。だってファイナルファンタジーなんだもの!) - 神ストーリー!
――ホントにいいんだよなあ、ストーリーが、FFは。光の戦士たちの活躍を誰も覚えてない。だけど、心のどこかにわずかに残る記憶が「架空の物語(ファイナルファンタジー)」として語り継がれていくんだよ。ただし、ストーリー進行上のちょっとしたテキストはどっか投げやり感漂うよね。「井戸です。何かありそうで何もない 井戸です」みたいな。やっぱり最後の作品かもってやけくそ感があったのかなぁ。まあ、そんなところも好きなんですけどね。
コメント! (レトゲで一言!)
あと『ドラクエⅢ』の発売延期に救われたって話もあるよね。『ドラクエⅢ』が発売延期してなかったら『FF』は本当に幻想のまま、隠れた名作として終わっていたかもっていうファイナルファンタジー。初代FFは逸話がホントいい。