『よむかも』な本の基本情報
- 著者 :澤田瞳子
- 出版社 :徳間書店
- 定価 :1800円+税
- 発売日 :2021年10月1日
- 単行本 :448ページ
- ISBN-10:4198651892
- ISBN-13:978-4198651893
『よむかも』な本のポイント
- 庶民の、庶民による、庶民のための歴史小説?
- 庶民の私には面白そ。セレブのあなたにも面白い?
『よむかも』な本のレビュー
- 『輝山』よむかも。
- 澤田瞳子さんの直木賞受賞第一作。歴史小説。
- 銀山とその周辺で働く人々を描く群像劇。
- 石見銀山といえば世界遺産としても有名、超有名。
- 戦国時代から江戸前期にかけて、まさに世界を動かすほどの産出量を誇った。
- しかし江戸時代後期にはその量にも翳りが見え始め……。
- それでも銀山とその周辺では多くの人が働いてた。
- 堀子は、坑道に入って鉱石を掘り出す。柄山負は、掘られたものを外へ運搬。
- 精製する人。そんな人々が利用する食べ物屋さん。
- 近くの大森町には銀山を管理する幕府の代官所、そこに勤める役人たち。
- 金吾は、新任の代官・岩田鍬三郎の中間として大森町にやってくる。
- じつは、かつての上役から岩田の身辺を探るように命じられたスパイだ。
- しかし銀山の人々と知り合い、その実情を知り――
- さまざまな問題に向き合う岩田を見るうちに過ごしずつ考えが変わっていく。
- 連作形式。描かれる鉱山の人たちの日常が地味に魅せます読ませますって話。
- あくどい山師に難癖をつけられた飯屋の女の顛末。
- 流行り病で子どもを亡くし、信仰にすがるしかない母親。
- ひ弱で馬鹿にされている男がそれでも見せた意地。
- 突然の出水で坑道に取り残された堀子たちはどうなるの。
- 寺に預けたまま放置していた息子を突然迎えにきた母親ってなんで。
- 一つひとつの物語で描かれる人間模様は、ときに痛快ときに切ない。
- 難題に、代官の岩田が解決の手を差し伸べる件は、捕物帳を読む趣。
- 他の人物たちも非常に魅力的。サボり魔役人とか意外とできる草履取りとか。
- 雰囲気はもちろん、江戸の市井の人情物。
- しかしそこは鉱山であり、鉱山のルールと風習がある。
- 堀子たちは、地中の毒気や粉塵を吸い続ける。40歳を待たずに亡くなる。
- 事故で怪我をする。それでも彼らは坑道に入る。
- なぜかって、報酬がいいからに決まってる。
- 疫病が流行っても全然恐くない。どうせ死ぬ。だったら稼ぐ。その心意気。
- そこでの金吾は、江戸からきた異邦人。
- 高山の価値観に戸惑い、江戸の考え方をし、その度「違うのだ」と思い知る。
- この場所に必要なものは? この場所の人が求めていることって?
- 金吾と一緒に考える。
- 危険と隣り合わせ、40歳まで生きられない。
- でも、笑う。泣く。人を好きになる。フラれる。酒を飲む。グチる。
- そしてまた、翌朝早くから仕事に行く。
- ラストは圧巻のラストらしい。
- 自分の、仲間の、運命を受け入れる姿が、悲しく、同時に爽やかだ。
- 世界を動かした銀山は、こんな名もなき人々に支えられていたんだ。
- 歴史を作るのは有名人だけじゃないんだよ。
- 名もなき多くの人たちの喜怒哀楽があるんだよ。
- 輝山は、そこにいる人々を輝かせているよ。
- そんな庶民の物語なんだって。
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