尊厳:その歴史と意味

人文・思想
  • 『尊厳:その歴史と意味』よむかも。
  • 著者:マイケル・ローゼン 翻訳:内尾太一、峯陽一 出版社:岩波書店
  • 定価:840円+税 発売日:2021年3月22日 新書:252ページ
  • ISBN-10:400431870X ISBN-13:978-4004318705
  • この本は、ハーバード大学政治学科教授による「尊厳」(dignity)の入門書。
  • (でも入門書にしては内容が難解だって要注意ね)
  • 西洋の思想的伝統の中にある「尊厳」という概念の用法を整理。
  • その上で、それをめぐる法制度が相対する難題を検証する。(ドイツを例に)
  • また、この世に生まれていない胎児、もはや生きていない死者――
  • これらについても尊厳を見いだすべきことを考察する。
  • (カント哲学を補助線として)
  • 西洋の伝統において、尊厳には四つの意味があるとされる。
  • 一つ目は、地位としての尊厳。
  • 身分制が存在した近代社会、尊厳が認められたのは身分の高い者だけだった。
  • フランス革命以降、人間であること、それ自体に平等な尊厳があるとされる。
  • 二つ目は、本質としての尊厳。
  • カント曰く、人間には道徳的主体として平等の尊厳がある。
  • 三つ目は、態度としての尊厳。
  • シラーは、苦難の中でも揺るがぬ意思を持ち耐える態度に尊厳を見いだした。
  • 四つ目は、他者の尊厳。
  • 自分の尊厳だけではない、他者の尊厳に対する態度をも問題とする。
  • 尊厳の問題は、政治家や経営者こそ思考を深める必要がある。
  • 現在、日本の雇用は非正規雇用者が激増している。
  • 国、自治体、企業側の都合でいとも簡単に使い捨てにされる。
  • 人の顔をすり砕くがごとく職員・社員を取り扱う。
  • 被雇用者の人間としての尊厳を踏みにじる。
  • 近代資本主義とは「コモンウェルス」(commonwealth)の市民社会であるはず。
  • (コモンウェルス = 共通善)
  • 政治家や資本家には、社会全体の福祉を増進することが求められる。
  • しかし、こうした思考は新自由主義思想の蔓延で忘れ去られている。
  • 私企業の利益拡大だけに目が向けられているように思える。
  • もちろん一市民としても尊厳の思考を深める必要はある。
  • 尊厳を傷つけられた人々の犠牲のもと経済活動が成立する現状――
  • それを正しく批判できるようになるために。
  • 尊厳について見識を深めること、喫緊の課題ではなかろうか。
  • (「この世の不利益はすべて当人の能力不足」とは言われるけど、ね)
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