姉の島

文学・評論

『よむかも』な本の基本情報

  • 著者      :村田喜代子
  • 出版社   :朝日新聞出版
  • 定価      :1800円+税
  • 発売日   :2021年6月7日
  • 単行本   :248ページ
  • ISBN-10:402251762X
  • ISBN-13:978-4022517623

『よむかも』な本のポイント

  • そういうことじゃないってわかってる。でも聞かずにはいられない。
  • 170歳の海女ってどゆこと?

『よむかも』な本のレビュー

  • 『姉の島』よむかも。
  • 著者の村田喜代子さんは現代の語り部、柔らかく温かく心にしみる言葉たち。
  • うっとり……している間に、途方もない世界に来ていることに気づく。
  • この本では、海中を探索する冒険へ。
  • 長崎沖の小さな島で長年海女をしてきた。雁来ミツル、85歳。
  • この年齢まで海女の仕事をし遂げると「倍歴の風習」のスキルで経験値2倍に。
  • すなわち雁来ミツル、170歳。(そういうことね―?―)
  • 天女が舞うような、美しい海中の風景が語られる。
  • 170歳の老婆の語りは潮の動きのよう。体がゆらゆらしてくるよ。
  • 過去も現代も、幻も現実も、ともにある。それが海中である。
  • 海女たちは海に沈んだ者たちの霊に出会う。
  • ――長安の都の方角を訪ねる遣唐使。
  • ――沈没した商船に乗っていた青い目の人。
  • ――海軍の軍服を着た男。
  • そして、ミツルの三人の兄たち。第二次世界大戦で沈んでる。
  • ミツルの友達、立神爺の話も壮絶。
  • さらに深い海には何があるんだろう……。
  • ゼロ戦だ。
  • 翼の赤い日の丸が青く見える。水も深い所では色が変わって見える。
  • それは「血の気の失せた日の丸」だ。
  • 海は私たちの忘れた記憶を引き受け、深く沈めてくれているのか。
  • 海とは何か……。
  • 水産大学を卒業したミツルの孫と、その嫁の美歌。
  • その若々しさは、晴れた日の海の輝きを思わせる。
  • 美歌は妊娠中、海女を志している。
  • 胎内には羊水という名の海が宿る。
  • 大きな海と小さな海だ。
  • この二つの海の対比は伏線になっている。
  • 最後に繋がり、その仕掛けに唸らされる。
  • 文学とは、想像力が現実に勝利する空間のことだという。
  • 著者の想像力は慈愛の包容力、凄惨な人間の歴史さえ年老いた海女に託す。
  • 長崎の沖には、戦後占領軍によって爆破処理された潜水艦が沈んでいる。
  • それはもはや武器ではない。鉄の塊は宥めるべき人間世界の罪業なのだ。
  • だから深海へ……。
  • そんなミツルと入れ替わるように、小さな海からこの世へ生まれ出る赤子。
  • 戦争の慰霊じゃない。
  • むしろ慰霊から弾かれてきた、ずっと口ば結んできた者たちの魂の物語。
  • 言葉が現実を凌駕する想像力の冒険。
  • 声に出して朗読したくなる文章の妙。
  • ゆらゆらしながら、誰かに読み聞かせ、一緒にゆらゆら。
  • そんな読書体験ができるかもな一冊。
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