『よむかも』な本の基本情報
- 著者 :朝井まかて
- 出版社 :文藝春秋
- 定価 :1800円+税
- 発売日 :2021年7月26日
- 単行本 :504ページ
- ISBN-10:4163914021
- ISBN-13:978-4163914022
『よむかも』な本のポイント
- 物語を読むと、その音楽が聴きたくなるし、その画が見たくなる。
『よむかも』な本のレビュー
- 『白光』よむかも。
- 日本人最初のイコン画家として知られる山下りんを描いた小説。
- 幕末に茨城県笠間の下級士族の家に生まれる。
- 幼い頃から、絵筆を持たせさえすれば総身で弾むように笑う娘。
- 15歳のとき「明治の世にて、私も開化いたしたく候」と家出。
- すぐ兄に連れ戻される。
- しかし強靭な意思を貫き、翌明治6(1873)年、東京での良師探しを許される。
- 1年半で3人もの師匠を変える。「逃げの山下、見切り屋おりん」
- その後、西洋画に興味を持つ南画家・中丸精十郎に出会う。
- この中丸のおかげで工部美術学校創立の翌年、女子第1回生に合格。
- ともにお雇い外国人・ホンタネジーの下で西洋画を学ぶことに。
- ところが、西洋画修業はホンタネジー教授のわずか1年半後の帰国で途切れる。
- 同僚の山室政子の誘いから、ロシヤ正教会のニコライ師の門をたたく。
- そして、聖像画・イコンとの出会い。
- 真の西洋に触れられる駿河台に通い、西洋画の女画工になる決心をしたりん。
- 洗礼を受け、イリナの聖名を授かる。まもなくニコライ師に呼ばれる。
- 結婚した山室の代わりにロシヤに行って聖像画を学んできてほしい。
- こうして、日本女性初の欧州への留学生としてペテルブルクの女子修道院へ。
- そんなりんに課せられたのは、伝統的なギリシャ画のイコンの模写。
- 「病的な、黒いハリストス」「平板で陰気な画」
- それらは、ホンタネジー教授の近代西欧画法、イタリヤ画の真逆であった。
- りんは反抗を繰り返す。結果、体調を崩し、志半ばの2年半で帰国。
- 一度、教会を離れる。
- 挫折――その先にあったのはイコンを捨て、自由な西洋画への選択。
- が、葛藤の末にニコライ師を訪ねる。
- 「聖像画家として生きたい」と許しを乞うた。
- 「よぐ帰ってきた」ニコライ師はりんを温かく迎え入れてくれた。
- その後、りんは精力的にイコン制作に励む。
- 以降、山下りんが描いたイコンは300点を超えるといわれる。
- とはいえ、聖像画の無署名性から定かではない。
- しかし、この自我を超越した無名性の境地。
- それは、晩年の笠間でのりんの生き方に現れている。
- 絵筆を持たぬ――ばかりか信仰も芸術のことも一切口にしなかったという。
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