『よむかも』な本の基本情報
- 著者 :佐藤厚志
- 出版社 :新潮社
- 定価 :1500円+税
- 発売日 :2021年6月28日
- 単行本 :144ページ
- ISBN-10:4103541113
- ISBN-13:978-4103541110
『よむかも』な本のポイント
- アトピーで掻く、黒ずむ肌が象の皮膚。
- どうしようもない痒み。
- 誰もがそんな何かを抱えてる。
『よむかも』な本のレビュー
- 『象の皮膚』よむかも。
- 仙台近くの書店で契約社員として働く女性。
- アトピーの痒みや曲者の来店に振り回される日常と、非日常と。
- 主人公・五十嵐凛は非正規雇用の書店員だ。
- 正社員じゃない、だから薄給……。
- なのにカスタマーハラスメントとかつらい仕事にも対応させられ……。
- また、持病のアトピー性皮膚炎にも悩まされ。幼い頃から苦しめられてる。
- 一度掻くともう止まらない。表皮はぼろぼろ剥がれ落ち。肌は傷む一方。
- アトピーの人ならすぐにわかる。「象の皮膚」とはそれで黒ずんだ肌のこと。
- しかしアトピーとは隠喩でもある。誰だって何かしら抱えてる。
- 著者の描く人物は、苦しくて晴れない霧のような空気をまとう。
- 凛にはアトピーの痒さまで加わって苦しさ倍増。
- 一方でオタク属性を感じさせたり――クールな反面ユーモラスな一面も。
- ただ「つらい」だけでは「そう、つらいよね」で終わってしまう。
- やり場のない環境も、どこかで和らげたり受け止めたりする必要がある。
- そうした著者の考えが、主人公のユーモラスな一面につながっているようだ。
- 仙台駅近くの書店、となればやっぱり大震災のことも描かれる。
- 未曾有の非常事態、しかしなぜか本を求めて書店に殺到する人たち。
- 震災で日常が壊され、本屋という日常にあった場所を人々は求めたのか……。
- 大震災後ますます忙しくなる職場、止まらぬ痒み。
- 凛のいっぱいいっぱいな状況に共感しながら読む。
- ――と、ラストで彼女は意外な行動に出る。
- 暑い季節、汗をかくとさらに痒い、夜になるともうやむを得ず掻くしかない。
- これ以上脱げない、けど痒い!
- そんなどうしようもない思いをどう表現するか。
- 人によっては「こんなことしないんじゃない?」って思うかも。
- そんな賛否両論のラストも読みどころの一つ。
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