灼熱

文学・評論

『よむかも』な本の基本情報

  • 著者      :葉真中顕
  • 出版社   :新潮社
  • 定価      :2600円+税
  • 発売日   :2021年9月24日
  • 単行本   :672ページ
  • ISBN-10:4103542411
  • ISBN-13:978-4103542414

『よむかも』な本のポイント

  • 勝ち負け抗争を知ってるかい?
  • まさに現代の格差やフェイクニュースによる分断を思わせる。

『よむかも』な本のレビュー

  • 『灼熱』よむかも。
  • 太平洋戦争終結後の、ブラジルの日本人移民たち。
  • その中には「日本が勝った!」と信じる人たちが少なくない数いたって話。
  • そんな人たちは「負けた……」と事実を知り主張する人たちと対立!
  • 殺傷事件まで起きたんだって。
  • 前者を「戦勝派(のち勝ち組)」、後者を「認識派(のち負け組)」
  • いわゆる「勝ち負け抗争」を題材にした長編小説がこちら。
  • (「勝ち組」「負け組」のルーツがここに。知らなかった)
  • 主人公は二人。
  • 沖縄で生まれ大阪に移住、十二歳で養子縁組、ブラジルの弥栄村にきた勇。
  • その弥栄村で育った日本移民二世のトキオ。
  • 親友となった二人は自分たちの祖国は「日本帝国」だと教育されて育つ。
  • やがて村の中で格差による対立が生まれる。
  • トキオの家族は村を出ていかざるをえなくなる。
  • そして戦後、二人は意外な形で再会を果たすのだが――。
  • 人物造形、当時の社会の描き方が克明で、圧倒的なリアリティを感ずる。
  • 当時、日本の勝利を信じた人たちは、なぜデマを鵜呑みにしたのか。
  • 単に情報が遮断されていただけじゃない。
  • 詐欺師の暗躍があったり。
  • 天皇とマッカーサーが並んだ写真を、マッカーサーが謝りに来たと思ったり。
  • ミズーリ号上での降伏の調印式の映像を「米国側の降伏」だと説明されたり。
  • さまざまな要素があったとわかる。
  • 勝ち組は田舎にいて知的水準が低く、都市部インテリが多い負け組に劣等感。
  • それがバネとなり事実を認められなかったということも。
  • フェイクニュース、ネトウヨ、Qアノン――
  • 現在でもデマに惑わされる人はたくさんいる。はたして自分は大丈夫なのか?
  • 読みながら、勝ち組を知的な高みから見下そうとする心理はないか?
  • 今一度心を引き締めてくれる一冊。
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