あの春がゆき この夏がきて

文学・評論

『よむかも』な本の基本情報

  • 著者      :乙川優三郎
  • 出版社   :徳間書店
  • 定価      :1500円+税
  • 発売日   :2021年10月16日
  • 単行本   :176ページ
  • ISBN-10:4198653631
  • ISBN-13:978-4198653637

『よむかも』な本のポイント

  • ある装幀家の諦念に満ちた人生とは。

『よむかも』な本のレビュー

  • 『あの春がゆき この夏がきて』よむかも。
  • 短編連作。すべての収録作が最後の表題作に向かい突如として収斂し始める。
  • その技巧と想念が見事な小説だって話。
  • 主人公の神木は、芸大の学生のとき養父を喪う。
  • それにより戦争孤児として浮浪から救われた身が、再び天涯孤独となる。
  • 養父が残した家作と多少の遺産のおかげで、大学を卒業した神木。
  • 養父のような画家になることは諦め、出版社のデザイン室に勤める。
  • いかんともしがたい孤独、神木は女性遍歴を重ねる。

彼にとり女性は時として美しい毛布であり、未来の身内であり、平凡な家庭の匂いを探る相手でもあった。

  • デザイン室で本の装丁をくり返す、女性遍歴を重ねる。

「死んだ伯父さんが言ってた。汚いものばかり見ていると目も汚れる。そんなときこそ、美しいものを探せって」

  • 彼の生き方はそんな言葉に従った美の追及であったのだ。
  • 神木はそれでかろうじて、自分が流されてゆくことに歯止めをかけていた。
  • しかし、売るために美を捨てる装丁に疲れ会社を辞める。
  • 小さなバーのオーナーに転身する。
  • だが、その間にも女性遍歴は絶えることがなかった。
  • 彼にとって唯一残されたことは「美しい本を作ること」でしかなかった。
  • (箴言が多いこの小説、とくに表題作は箴言につぐ箴言)
  • (この本を一言でいうなら「諦念」、寝る前に一話ずつ読みたい感じ)
  • (忘れられない一冊になるかも、な一冊だって)
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