- 『昭和の青春 播磨を想う』よむかも。
- 著者:池内紀 出版社:神戸新聞総合出版センター
- 定価:2000円+税 発売日:2021年11月27日 単行本:194ページ
- ISBN-10:4343010945 ISBN-13:978-4343010940
- 著者の人は、2019年8月30日にお亡くなりになったドイツ文学者の池内紀さん。
- 兵庫県姫路市の出身。姫路、龍野、赤穂――。
- 亡くなった後に出版されたこの本。
- 昭和の播磨地方に生きた市井の人々を描いた。
- 見事な短編集だそうな。
- 池内さんの書くものは、随筆でも短編小説でも味わいがあった。
- 「モクモク号走る」は戦後の事実を下敷きにしてる。
- 米軍の空襲に遭った姫路。(航空機の工場があったため)
- 町では瓦礫を運び出すため、町の真ん中に線路を敷いた。
- そしてモクモク号(機関車)を走らせた。
- そのモクモク号の走行に関わったのは、機械いじりの好きな青年だった。
- 彼は復員兵。レイテ島の戦いで、片足を失っていた。
- 青年は店を開く。焼け跡に小さな店を。それは子供たちのための模型店。
- 平和堂。それが店の名前。青年の思いが込められていた。
- 「照国の花屋」もお店のお話。子供の頃から太っていた主人公の青年。
- 「照国」って呼ばれた。(人気力士にちなんだ呼び名)
- でも、外見とは裏腹に気は弱い。優しい。
- 教師に将来の夢を聞かれた。「花屋」と答えた。(小さな声で)
- そして慎ましく夢を叶えて花屋を開いた。
- ただ花を売るだけではない。ひそかに通りに夾竹桃を植えていく。
- 青年が亡くなったあと、やがてその道は緑の道に育つ。
- (宮沢賢治さんの「虔十公園林」を思わせる話)
- マッチ工場の多い町だった姫路市の網干。「マッチ一本」
- 毎年夏になると工場へアルバイトに来た学生。
- 工場主の子供がそれを思い出す。
- 優しかった。勉強を見てくれた。
- 毎年のように来たのは、今思うと、姉のことが好きだったらしい。
- 長崎の原爆で青年は両親を失い、老いた祖母と二人暮らしだった。
- 結局、思いを打ち明けないまま姿を消した。
- 著者の池内さんは昭和15年生まれ。時折、小さく戦争にふれる。
- まだ鮮明に残る戦争の記憶。そのために人々が慎ましく生きていた時代。
- 静かに静かに浮き上がってくる。「十銭版画」
- その女性は、美大を出て中学校の美術教師になった。
- 父親が若い頃、版画の同人誌を作っていたことを知り好感をもつ。
- 父親は姫路の空襲で帰らぬ人に。
- 龍野は醤油作りで知られる。「麦つぶのこがし方」
- 龍野で醤油の研究に一生懸命な青年の話。語られるのはもちろん醬油作り。
- 赤穂では塩田で塩が作られていた。「浜子一代」
- (塩田で働いていた男衆が「浜子」なんだって)
- 網干のマッチ作り、龍野の醬油作り、赤穂の塩作り――。
- 小さな産業とともに思い出されていく故郷。
- 「三つ池」は、農家の溜め池に落ちた幼い妹を助けて亡くなる兄。
- 「夢の建物」は、夢叶って建築家になるも現場の事故で亡くなる兄。
- 小さな幸福の裏には痛ましい死があるって話。
- 池内さんはあまり故郷のことを話さなかったって。
- 同窓会も好きじゃなかったって。
- それでも「播州弁」は決して消えなかったって。
- そして晩年になって故郷のことを愛惜を込めて小説にしたんだって。
- 戦後まだ貧しかった時代、確かに生きた市井の人々の記憶がここにある。
- (故郷にいい思い出のある人の方が案外少ないのかもしれないね)
- (それでも晩年には故郷のことを思い出すのかなぁ)
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