夢的の人々

文学・評論

『よむかも』な本の基本情報

  • 著者      :もちぎ
  • 出版社   :KADOKAWA
  • 定価      :2000円+税
  • 発売日   :2021年10月25日
  • 単行本   :416ページ
  • ISBN-10:4048930923
  • ISBN-13:978-4048930925

『よむかも』な本のポイント

  • 失うものは何もない。ゆえに躊躇なく罪を犯す無敵の人。
  • しかし張りつめた心に一滴の水が落ちれば……
  • 私も一線を越えちゃうかも。

『よむかも』な本のレビュー

  • 『夢的の人々』よむかも。
  • タイムループ小説。
  • 著者は「ゲイ風俗のもちぎさん」「ゲイバーのもちぎさん」
  • ――で、おなじみの作家のもちぎさん。
  • 夢見る風俗嬢、童貞の大学生、不妊の元主婦、ゲイを隠す夫――
  • それぞれに「罪」を犯し、生きる希望を失った四人は集団自殺を決行。
  • しかし目を覚ますと……、時は罪を犯す前に戻っていた。
  • 大きくいうとタイムトラベル小説。
  • このジャンルは未来へジャンプしたり、過去で歴史を改変したり。
  • 時間の方向性でいろいろ書ける、そんなジャンル。
  • タイムループといえば時間ロマンより孤独や絶望が描かれるイメージ。
  • リゼロとか。シュタゲとか。
  • 何度も何度も繰り返される絶望は見えない牢獄そのもの。
  • この本では、罪を犯した四人の主人公が集団自殺を試みタイムループ。
  • 罪を犯す前に時間が戻るけど、人生やり直しはできず。
  • 同じ数日間を繰り返すだけの悪夢に突入する。
  • でも現実もタチの悪いループ小説だって思うことない?
  • 虐待や差別。親から子へ、それらは引き継がれて繰り返されてしまう。
  • 貧困。貧しさが貧しさを呼び、貧しい者はいつまでも貧しい社会構造。
  • 偏見から生まれる偏見。――みたいな。
  • 本人は抜け出した。でも抜け出せない。そんな地獄が現実にある。
  • 四人はタイムループの前から、社会の負のループにはまり込んでいた。
  • タイトル『夢的の人々』
  • 失うものなど何もない。
  • ゆえに躊躇なく罪を犯す人を指すネットスラング「無敵の人」からきてる。
  • (……たぶん。こういう言葉遊び的なのが私は好き)
  • 凶悪事件が起こる。「また無敵の人の犯行か」。そんな風によく耳にする?
  • けど、無敵の人たちって私たちとは全然違う人たちなんだろーか。
  • そこがたぶんポイント。『夢的の人々』で描かれる罪の境界はとても淡い。
  • それは表面張力ギリギリに張りつめたコップの水面のごとく。
  • 一滴の水が落ちれば、人は一線を越えてしまう。
  • 誰でも無敵の人になりうる。そんなじつは当たり前の事実に気が付く。
  • 今度は罪を犯さない。それだけではタイムループからは抜け出せない。
  • 時のループと負のループ、その相似性がもたらす絶望は深い。
  • しかしラストには希望がある。社会はたしかにつながってる。
  • 綺麗事じゃない一筋の光が穴の底から見える一冊。
夢的の人々
生きる希望を失くし、集団自殺をした四人に訪れた奇跡は救済かそれとも罰か 大阪の安アパート「詩名内荘」に住む四人の住人たちは、偶然にも時を同じくして取り返しのつかない“罪”を犯してしまう。生きる希望を失った四人は集団自殺を決行するが、何故か目...

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