『よむかも』な本の基本情報
- 著者 :羽田圭介
- 出版社 :文藝春秋
- 定価 :1400円+税
- 発売日 :2021年7月14日
- 単行本 :176ページ
- ISBN-10:4163913971
- ISBN-13:978-4163913971
『よむかも』な本のポイント
- 今を犠牲にして将来に期待してどうする?
- お金を生み出すシステムへの、執着から脱却して見えてくるもの。
『よむかも』な本のレビュー
- 『Phantom』よむかも。
- 32歳の華美、事務職、千葉のUR賃貸住宅にひとり暮らし。
- 勤め先である食品会社の工場へ通う毎日。
- ある夜、大学時代の友人から結婚式二次会の案内がメールで届く。
- 一晩で1万円の出費。
- そのまま寝かせて運用すれば30年後にいくらプラスになるだろうか。
- 欠席の返信を即座に打つ。その場面から物語は始まる。
- 彼女の生きがい、それは株への投資。
- 今の年収と同等の金額の配当を得ることを目標にしている。
- (非正規雇用、上がらない給料……同じことを考える人はきっと多いはず)
- 株の投資に日々打ち込む華美。
- 彼女にも年齢なりに抱えているものがある。
- 同年代の彼、直幸から結婚話は出てこない。
- 都内に住む両親の老老介護問題も。
- 自分が定期的に実家に顔を見せる?
- いや、いつしか株の配当が生み出すお金が、家族を楽にしてくれるはず……。
- そんな華美に訪れる転機とは。昔からの友人とサーフィンに行った際。
- ふとしたタイミングで危うく命を落としかねない場面に遭遇。
- 今、我慢してお金を増やしても死んだらおしまい。
- それを肌で感じる体験をして、初めて見えてきたもの。
- 以降、気持ちの距離ができていた彼との関係も変えていく。
- 投資に夢中になる華美にどこか違和感を覚えていた直幸。
- 彼はコミュニティに居場所を見つけていた。
- そこでは、人間同士の『シンライ』をやりとりして暮らす。
- それは、現代の世の中に回っている貨幣ではない、支払いの対価だ。
- (貨幣経済に違和感を覚えることは誰にでもあるはず)
- (しかし、お金を通さず人と人とのつながりだけでやっていけるのだろうか)
- (結局、共同体からハブられたらそれでおしまいではないか)
- (常に他人の目を気にし続けなければならない苦痛もある)
- (それならば、まだお金を使って自由に生きていくほうが楽なのではないか)
- (いろいろと考えて、どちらにもおかしなところはある)
- 華美はコミュニティに居ついた彼との関係を修復するため大胆な行動をとる。
- 対価として大金をぽんと支払うことになる。
- 大事に貯めてきたお金を惜しげもなく投じて前進する。
- 生の体で、一瞬を濃く感じるような新たな生きがいを得た華美。
- その姿は清々しいかぎりだ。
- お金とは? 生きがいとは? 時間とは?
- そして、日々の暮らしの中で切り離すことのできない、自分と他者とは。
- さまざまに思い巡らす一冊である。
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