『よむかも』な本の基本情報
- 著者 :モニク・トゥルン
- 翻訳 :吉田恭子
- 出版社 :集英社
- 定価 :2400円+税
- 発売日 :2022年4月5日
- 単行本 :320ページ
- ISBN-10:4087735176
- ISBN-13:978-4087735178
『よむかも』な本のポイント
- なんかそんな心霊探偵がいたような気がして。
『よむかも』な本のレビュー
- 『かくも甘き果実』よむかも。
- ラフカディオ・ハーン知ってる? じゃあ、小泉八雲は?
- 両方同一人物。ギリシャ生まれの新聞記者で、日本に帰化した英語作家の人。
- 日本の文化を世界に広めた作家・日本研究家として有名みたいな。
- この小説は、そんなハーン氏を題材にした作品。
- ただし、直接本人が語るわけじゃない。
- 曰く、三人の女たちが語るハーン氏。
- 三人は実在の人物だけど、本作の三人はもちろんフィクションである。
- その肉声が圧倒的に甘美。
- 新鮮で芳醇な熱帯の果実のような。
- 鼻をくすぐり、舌を躍らせ、心をゆったりとほぐしてくれる物語群。
- それらは蝶のようにページを横切っていく。
- そんなテイストの小説なんだって。なんか素敵っぽいよね。
- さて、三人の女たちとは誰のこと?
- まずは母親、ローザ・アントニア・カシマチ
- ハーン氏を産み、幼時に手放さざるをえなかった。
- つぎにアメリカでの妻、黒人女性のアリシア・フォーリー。
- ジャーナリストとして生計を立てるのに必死なハーン氏と暮らした。
- 最後に日本での妻、小泉セツ。
- 英語教師として松江に着任したハーン氏を支え、子をなした。
- ハーン氏との関係、性格、生活――まったく異なる三人の語り部。
- 彼女たちの存在感こそが、この小説の最大の魅力を引き出す。
- 冒頭から惹き込まれる。
- イオニア海の島の娘であるローザの語りだ。
- パトリシオ・ラフカディオ・ハーンはお腹を空かせて生まれてきました。
- それが最初のセンテンス。
- そのまま、乳児のハーン氏が知った味。
- それ以前にお腹の中で彼を育てた味へ。
- 蜂蜜と乳。茹でたバイ貝の身、エシャロットのかけらを入れて蒸したトリ貝。
- 卵黄のようなウニを厚切りのパンにのせたもの。
- じつに旨そう。誰にとっても舌の経験とは味覚から言語へと移行するもの。
- ラフカディオの名はサンタマウラ島の町レフカダに由来するという。
- 母親からはパトリシオ、黒人の妻からはパット、日本人の妻からは八雲。
- 彼はそれぞれの土地で、味覚と言語の経験を積みながらラフカディオへ。
- この小説は、料理という物質、言葉という物ならざる音。
- それらに細やかな注意を払っている。
- その上で、彼の生涯を「伝記」とは違った真実の相において描こうとしてる。
- それは、まるで幽霊のようなラフカディオ・ハーンの不在である。
- 三人の女の存在感が、不在という現象を浮き彫りにしている。
- この小説を読み終えたなら、もっとハーン氏のことを知りたいと思うだろう。
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