第19話 少女とは可愛いだけではブラを選べない生き物である。

くまさんと出会った。
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「すやすや……」
裸の金髪少女がベッドの上で寝ている。
「ぐぅぐぅ……」
ベッドの上で眠る裸の金髪少女の上でくまが寝ている。

そう、お昼ご飯の後はお昼寝。
もはや言うまでもないことだ。

――え? まだそうでもない? 会社や学校にお昼寝の時間がない!?

お昼寝してる人を見るとサボってるって思っちゃう?
そいつぁいけない! 遅れてるぅ、ああ遅れてるぅ!

その理由とは――まずお昼寝に期待できる効果を以下の通り示す。

1.学習能力・仕事能率の向上
2.記憶の整理・作業ミス防止
3.子供の成長促進

とくに3.は重要だと考える。

子供は体が大きく成長するためにエネルギーをガシガシ使う。
体が休んでいる間にセーブしたエネルギーは成長に使われる。
ゆえに夜はしっかりと寝て、昼にもちゃんと寝る!

うんうん、理に適ってる!

最適なお昼寝の時間とは「15分~30分」といわれている。
ノンレムでスッキリ起きるためだといわれている。
しかし、年齢によって睡眠サイクルは違っている。

つまり、学校のお昼寝の時間、
もうちょっと長くてもいいんじゃないでしょうかと思ってる。

これを公約にしてくれたら、次の生徒会長選挙は
あなたに入れようと思ってる。

ただし、1時間超のお昼寝は死亡リスク3割増しともいわれている。
お昼寝は1時間以内に留めるのが賢明なようだ。

ちなみに、お昼寝の前にはコーヒーや緑茶を飲むのがオススメである。

え? コーヒーなんか飲んだらカフェインの作用で眠れなくなっちゃう?

いやいや、カフェインって吸収されるのに時間がかかる。
短い仮眠ならその前に飲んだ方がスッキリと起きられる。

もちろん、くまと少女もお昼寝の前にインプゥのコーヒーを飲んでいる。

そのとき少女が――

『な、なんでしょうか、この飲み物は……、黒くて苦くて、まるで悪魔のような飲み物です……』

と思ったのは、くまには内緒である。

なぜかくまはコーヒーだけは無糖派そしてブラック派であった。
なので、実は悪魔のコーヒーがとっても甘いことを
未だ少女は知らないのであった。

――教えてあげて! 青い看板が目印のあのお店に早く行ってきて!
はたして今年は新作は出るのか……、砂糖は何割増しなのか……、
コーヒーは甘い派の私は楽しみにしておりますぞ!

このように、実は子供の舌は苦いものを受けつけないようできている。
それは自然界では、苦いものには毒があることが往々にしてあるがため。
味覚の鋭い子供は本能的にそれと知り、苦いものを吐き出してしまう。

大人はそれを好き嫌いだといって怒ってはいけない。
無理矢理に食べさせてもいけない。
大人になれば味覚は自然と鈍り、毒味も致命的にはならなくなる。
自然と食べられるようになるのである。

味を感じるセンサーである味蕾は、その数が多いほど味覚を強く感じるが、
子供時代に発達し、ある時期を境に減少――30代40代では
およそ三分の一にまで減っている。

大人になって味の好みが変化し、
食べられなかったものが食べられるように。

そんな経験、誰しもあるのではなかろうか。

理由は大抵これ、舌が退化しているのである。
死神の内臓とは逆なのである。

反って、子供時代に無理矢理食べさせられ嘔吐するとそれがトラウマに……。
大人になっても食べられなくなることがあるので注意されたし。

――でも、子供の栄養のことを考えて……?
その日頃からのご配慮、誠にありがとうございます。
でもその栄養、他の食材で補えませんかね?

確かにわがままを言っているように聞こえているかもしれません。
それはホントに申し訳ない。でも、私はまだこれからの人生――、
トラウマで食の楽しみを台無しにされたくはないのです。

だからピーマンは……ピーマンだけは勘弁してください!

わかってはもらえないでしょうか? ――お母さん。お母ーさーん!
ちょっと、これどういうこと!?

今日のお弁当、ピーマン入ってたんですけど!?

……え、何? ヒソヒソ言われてもわかんない!

……え、ピーマンに含まれるβ-カロテンやビタミンCには
抗酸化作用があり、お肌の調子を整えてくれるの?
あなた、お肌の荒れを気にしていたでしょ、って?

ふ、ふーん、そうなんだ……。

え? これぞまさしく我が子を想う母の伸縮自在の愛?

薄っぺらな嘘で一度は納得したように見せかけて、
伸縮自在の愛でやっぱりピーマン! ――という、
母の能力?

愛さえあれば苦手だって克服できる?

くっ! そんなこと言ってるんじゃないんだし!
栄養は他の食材でも補えるって言ったし!

……え、他の食材って例えば何かって? ……あるじゃん、ほら、

……ゴ、ゴーヤ? とか!

……え、あなたゴーヤも苦手じゃないかって?

いやチャンプルーならいけるし!
……たぶん。

……え、ゴーヤって高いの?

うちってゴーヤ買えないくらい、そんなに家計が苦しいの?

え、ここ30年間で消費税は3倍以上に、社会保険料は約2倍に、
通信費は1.5倍に、物価は2%も上がってるって?

なのにお給料はちっとも上がっていないって。

ちょ、ちょっと、泣かないでよお母さん……、

ちょっと、誰よお母さんを泣かせるのは……、

隠れてないで出てきなさいよ……、

ええ、嘘でしょ、た、助けて、助けてよ誰かお国のお偉い人!!!

――って、はい、そんな噓泣きには騙されませんんん!

そんな薄っぺらな噓、二度は効きませんんん!

だいたいお母さんはいつもそうやってすぐ能力を使って――

――いや、文章にしてみると、何言ってんだろ昨日の私……
ホントごめんね、お母さん!

ピーマンをゴーヤに替えろ!

――だなんて、なんて贅沢な……、なんて親不孝者なんだ!

お母さんは私のためを思ってのピーマンだったのに!

ピーマンだったのに……いや、でも、やっぱり、

ピーマンだけは……

わかった、わかりました。

この文章がお金になったら、私がゴーヤを買ってくるからね!

いや!
本場のチャンプルーを食べに連れてってあげるからねっ!

期待しないで待っててね、お母さん。

ディンドンディッチ♪ ディンドンディッチ♪

おっと、そうこう言っている間に
何やらピンポンダッシュする音が
聞こえてきたぞ。

しかし森の中のマイホーム界隈に、ご近所さんは見当たらない。
必然、近所に住む悪ガキどもも住んではいない。

――と、

「ぐぅぐ……ぅ~ん」

金髪ロリ美少女ベッドのふくらみかけの枕の上、
くまが何かを探るようにお手々を動かす――
寝起きに目覚ましを止めるためによくやるやつ。

そんなくまの愛らしいお手々が
金髪ロリ美少女ベッドのふくらみかけの先端に当たる。

ディンドンディッチ♪ ディンドンディッチ♪

「すやす……、あ、い、い――」

お手々が触れるか触れないかのフェザーなタッチを繰り返す。

ディンドンディッチ♪ ディンドンディッチ♪

「あっ、あ、い、いぃ――」

すると、あ~ら不思議、

ディンドンディッチ♪ ディンドンディッチ♪

「い、い、いたいたいたい――」

金髪ロリ美少女ベッドが痛がっているじゃあーりませんか!

それもそのはず、少女のふくらみかけの時期は乳頭期。
女性ホルモンが働き始め、大人への階段をのぼっていく思春期。
成長するこの時期――そこにはたくさんの神経が集まりデリケートな時期。

「ぐぅぐ……ぅ~ん、ここか~? ここがええのんか~? ぐぅぐぅ……」

ディンドンディッチ♪ ディンドンディッチ♪

ゆえに師匠が如く、ここか~、ここがええのんか~、してはイけない。
優しくフェザーにタッチすればイイってもんじゃない。
少女のそこはとっても敏感――すぎて大人のようには感じないのだ。

誰でも乳頭が一番気持ちがいいのだ、と思い込んではいけない。

ある文豪も、思い込みがためプレイの最中耳を噛んでしまい、
相手を痛がらせてしまって空想が壊れた、
と掌編小説で綴っている。

自分がイイからといって、相手もイイとは限らない。
自分が感じるからって相手も感じるとは思わないで。

皆さんも注意されたし。……え、何を注意するのかって?
もちろん愛ぶぅえっくしょん、ばっしょい!

……うぁぁ失礼、突然のくしゃみが。
えっと、何の話でしたっけね――愛……そうそう!
愛らしいブラを選ぶときにね!

デリケートな乳頭を痛みから守りましょう――

年頃の少女の皆さんはかわいさだけじゃなく、
そんな視点でもブラを選んでみてね☆

ディンドンディッチ♪ ディンドンディッチ♪

「あっ、いたいたい――あっあー、いたたたたたた――」

ついに少女が百裂拳が如き叫声を上げ始め、ほあちゃあ!

――しそうになったたそのとき、

ディンドンディッチ♪ ディンドンディッチ♪

「……う~ん、あ、こっちか」

くまが今度は反対側の乳頭へお手々を伸ばした――わけじゃなし。
乳頭は同時ではなくて交互に弄って、片っぽずつ休憩挟んだ方が、
ずっと感じられる――わけじゃなし。

ディンドンディッチ♪ ディンドンディッチ♪

今度はちゃんとコンソールに手を伸ばし――

ディンドンディッチ♪ ディンドンディッチ♪

ちゃんとアラームを解除した。

ディンドン――

ようやく、ピンポンダッシュの音が止まる。
どうやら目覚ましアラームの音だった様子。

「う~ん! おはようメアリ君、気持ちのいい目覚めだね☆」

あれから30分。しっかりと死亡リスクを抑えて、
すっきりと気持ちよく目覚めを迎えたくまが言う。

「はぁはぁはぁ……、お、おはようございますぅご主人様……」

ほんのりと上気した涙目で目覚めを迎えた少女が喘ぐ。

はたして少女は気持ちのいい目覚めを迎えられたのか、
本当に痛いだけだったのか――、
痛いのが気持ちよかったんじゃなかったのか――

想像するだけならフリーダム! それともストライク! バッターアウト?

答えは、舞い降りたる剣はどちらだったでしょうか……

LOを愛でるGFならIMだよね! だってNOタッチだもんね!

 

* * *

 

「さて、それじゃあ午後は自由行動で。僕は読書に勤しむから、メアリも好きに過ごしてね」
「…………」

くまはそう言い置くと、金髪ロリ美少女ベッドから離れていく。
ふよふよと寝室内のロッキングチェアまで飛んでいく。

「あの、ご主人様……」
そこへ少女が躊躇いがちにしかし意を決したように声をかけた。

「うん?」
ロッキングチェアに着いたくまが少女を振り向いて短く応える。

「わたしも読書をしたいのですが」
メアリはついに勇を鼓してご主人様に願い出た。

「え、いいけど君、何か読める本持ってたっけ? 君の荷物の中見てみる?」

森に来たときメアリが背負っていた袋はくまに差し出されたがため、
今はアイテムボックスの中にある。
その中には確かに、森について書かれた本が入っている。
しかし――

「わたしもご主人様のいうマンガというものを読んでみたいのですが……」
と、メアリは勇気を振り絞って訴えてみた。

ご主人様なくまとペットな少女――暴君に余計なことは言わぬが吉だ。
それはメアリもわかってる。わかってはいるつもりではある。

されどこの少女、読んだことのない読み物があると聞いて
沈黙は金できる少女ではなかった。

ご主人様との出会い頭に聞いたマンガというどうやら読み物らしき単語を
メアリはしっかりと覚えていた。
マンガというものを読んでみたいです――と願わずにはいられなかった。

たとえ、好奇心は猫を殺すのだとしても、人をも殺すのだとしても。
猫であれ人であれ、好奇心とは抑え難いものなのである。

「もちろん僕も読ませてあげられるなら、読ませてあげたいよマンガを。その素晴らしさについて万の言葉を用いて語り尽くしてあげたいよ万葉集――あ、ここでいう『葉』は時代を示す『世』の意じゃなくそのまま言の『葉』の意ね万葉集、古文の授業でちゃんと先生の話を聞いてた人はそこツッコまないでね。僕だってちゃんと聞いてたんだからねっ――でもね……」

そして、くまは悲しいお知らせを少女に告げなきゃいけないのだった。

 

≪つづく≫

 

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