第22話 そろそろおっぱいとおしりの話をしようか。

くまさんと出会った。
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〇月×日(△) 晴

今日の晩ご飯はなんと!?
お母さん特製チーズinハンバーグでした!
お好みソースとケチャップを1:1の割合で混ぜ合わせ軽く炒めた後、
ちょっとだけしょうゆを加えたこのデミグラスソースが絶品なのです!
まさにソースとケチャップの化学反応!
このようなハンバーグソースを発明したお母さんはすわ天才ですか!?
思います。

お母さんいつもありがとう!

……しかしこのソース、
ちょっとばかり塩分過剰気味なのが気になるところ。
なぜ美味しいものとは、
かくも塩分と糖分が過剰気味なんだろう……。

――さて!
それでは今日ももはや書くこともありませんので、
今日も今日とて物語のつづきでも
書くとしますか!

【主な登場人物紹介】

筆者:この物語の著者。いつか印税でお母さんを楽に! 母子家庭な少女。

くま:愛らしいくまのぬいぐるみ。中身は心にオッサンを宿す天使な少女。

メアリ:王国の国王疑惑浮上中? 森に捨てられたペットな少女。

【前話までのあらすじ】

雑貨屋さんでかわいいくまのぬいぐるみのイラストが入った
日記帳に一目ぼれした少女は、
お母さんにおねだりして買ってもらうとさっそく
少女のめくるめく日常を淡々と紡いでいくのだったが……、
何の変哲もない少女のめくるめく日常とは
面白くもなんともなかった。そこで物語を綴ることにした。

魂をチップ化して地球を脱出した
33億人を乗せた箱舟の守護天使たる少女は、
日常の暇つぶしにと、自らも仮想現実に遊ぶ。
くまのぬいぐるみのアバターに扮して踊り込んだワールドは森の中――
しかしそこにはハーレムも成り上がりも下剋上もざまぁもなかった。
それらを夢見て目下、森からの脱出を目指し奮闘中。
だが、仮想じゃない現実の方では彼女と同世代の天使である
ミシェルが任務中に消息を絶つ。

森に捨てられた孤児の少女はくまに出会ってペットになった。
とある成り行きから自分が実は王族で、
しかも事実上の現国王になっていることを知らされる。
ペットとしてご主人様のセク〇ラに健気に耐える日々。
でも、出される食事はどれも食べたことがないものでとてもおいしく、
ついには待望の漫画まで読むことができ――
この森から出たくないな……、引きこもり街道まっしぐらな予感。

そして今、少女の前には尻があった……。

 

* * *

 

「――と、ここまでが前話までのあらすじとなるんだけど、大丈夫?」

漫画の文字が読めていなかった少女のために、
くまはこれまでのあらすじを簡潔に説明した。

「――つまり主人公である彼は諸々の事情から、お尻とお胸どちらが好きか……、という選択を迫られ、お尻と答えたはいいものの今度はその理由、すなわち、なぜお尻なのか、という質問に答えなければならないのですね」

そして少女はついに、なぜ目の前に尻があるのか理解する。

「そう! その答え一つに彼らの人生がかかっているんだ!」

そう、その答え一つに彼らの人生(退学)がかかっていた。

「ところでメアリ君、君は尻と胸、どちらが好きか……ね?」

そして、その答え一つに少女の人生はかかっているのだろうか。

なにせくまといえば出会い頭の幼気な少女に対し

『ペットになるか食料になるか』

過酷な選択を迫る生き物であった(第1話参照

ここでの少女の回答が気に入らなければBAN!
――する可能性も決して低くはないとも思える。

「……お胸でしょうか」

しかして、そのことはあまり気にならずに――
少女はお胸とご回答。

「ほう! して、その心は?」
「……お胸はお母さんっぽいからです」
「ふぅむ……、つまり母×子の閃き! ということですね?」
「…………」

母×子の閃き! ――かどうかはわからなかった少女だけど、
そこはなんとなく黙っていた。

「母×子の閃き! ということでいいんですね!?」
「…………」

母×子の閃き! ――でいいんでしょうか……、
しかし少女はそこはかとなく黙っていた。

「母×子の閃き! その気持ち、わかります!」
「…………」

母×子の閃き! ――とかではたぶんないとは思うんだけど、
黙ってた。

それは、話が上手く回りそうな気配を敏感に察した少女の処世術――
つまり、打算的な処女はいつでも君の側にいる!
――まだ汚れを知らぬ男子諸君は注意してよね!

「母×子の閃き! について語らせたら、僕はちょっとうるさいよ!」

ともあれ、そんなことにはお構いなく、くまは話を続けてる。

「僕がマンガから得た知識として最古の母×子の閃き! ……といえば、そうそう! 一世紀のローマ帝国は――アグリッピーナ×ネロの閃き! ということになるでしょうか!」

どうやら気分もだいぶノってきた様子。

「母×子の閃き! は隙を生じぬ二段構え! 一撃目の衝撃と威力によって弾かれた空気は時間差を生じて急速に辺りの物体ごと戻ろうとする! それすなわち、真・空・空・間! 真空空間が生じるには少なくともマッハ1の速さが必要になる! マッハ1とは音の速さ……、秒速340m! 時速にしたらなんと約1225km! そんな速さで突かれたら……、ああ、突かれたら……、一体どうなってしまうんだ!?」

もしも子に9回も突かれたなら、母はどうなってしまうのか……。

非常に興味深い命題だ。しかし非常に興味深い命題だが……

――この話はその話じゃないよ、くまさんよ!

「――おっととっと! 僕としたことが、ついつい脱線しちゃったみたい。そろそろおっぱいとおしりの話をしようか!」

そうそう、今回はその話その話。

――二度も着地点を見誤るわけには参りません!(前話参照

「そんなわけで、彼は言った! 『人類が四足歩行の頃、目の前にあるのは尻だった』と」

そして、それもまた母×子の閃き! と同様に興味深い命題なのである。

「ちょっと待ってください。人類が四足歩行の頃――ということがあったのでしょうか?」

そう、少女の知っている人類の歴史とは異世界の歴史に他ならない。
それすなわち、聖典に刻まれた真実だ。
聖典によれば、この世界に存在する一切のものは女神様が創造した。
ゆえに人も、昔から今ある姿に女神様がお創りになったはず。
では――

「人は昔も今と同じように二本の足で歩いていたのでは……?」

そうなるはず。

「ん? それってつまり『人と猿の祖先が同じわけがない』ってこと? う~ん、ちょっと何言ってるかよくわかんない」

まあ、そうなるはず。

「ひょっとして『人は猿から進化した』じゃなくて『人は猿と共通の祖先から進化した』って話からしなくちゃいけないこの感じ?」

ある時点でのある調査ではある国家の三人に一人が

『人間と猿が同じ祖先を持つだなんて断じてありえない!』

と本気で思っていたそうな。

それはこの国の教育水準の低さを表すわけではなくて、
直接民主主義下において寛容な精神を持つことの難しさ
を示していたようであったそうな。

「さらに言えば、このマンガのそのコマに描かれているようなナックルウォークを人類もしていたのか否か、議論する必要もあるってこと?」

ちなみに、人がナックルウォークを経たのか、
それとも、いきなり二足歩行だったのか
――については諸説あるということだそうな。

そして、柔軟な思考力をいまだ失っていない少女は、
それらの話についても深く関心を抱いている様子――

「だが、断る!」

だがしかし、くまはそれを断る様子――

「そんなことよりも今はおっぱいとおしりの話でしょうがい!」

早く早くおっぱいとおしりのお話が致したいご様子。

もはやこうなってしまっては――

「それでは、お胸とお尻のお話をぜひお願いします」

と、少女は言う他になかった。

「うむ! よく言った! では、そのためにもマンガのつづきをもう少しだけ読み進めていくよ!」

そうして、くまと少女は漫画のつづきを読み進めた。
もちろん、くまの音読付きで少女の理解もばっちりだ。

「ここで彼は『人類の進化が胸をお尻に変えた』と言ってるけど、これは学術的には『臀部擬態仮説』と呼ばれる仮説なんだ」

霊長類のオスは、メスの臀部を見て発情し、ズキューンしようとする。
これは四足歩行をしていた頃のヒトも例外ではなかったと推察される。
しかしヒトは進化の過程でもって二足歩行へと移行――
すると、オスの目の前にメスの臀部が突き出されることはなくなった。
代わりに僕たちの目の前に現れたのが、そうおっぱい。
所詮、おっぱいなどお尻の代替品、まがいもの、コピーに過ぎない!!
コピーかオリジナルか、と問われるならば、当然オリジナルを取る!!

「ヒト以外の霊長類は胸を大きく膨らませたりしないし、オスもその部位にハァハァすることはない。なのに『なぜ人はおっぱいに性的魅力を感じるのか』――この命題の答えに『臀部擬態仮説』を採るのはもはや『お尻至上主義者』にとっての定石となってるよね。だがしかし『おっぱい至上主義者』から言わせると『それは酷い暴論』『臀部の方が乳房を模したことで丸くなったと言うに等しい』『それはもはや空想とも言うべき思考停止』『同じ学者として恥ずかしい』ということになり、僕もおっぱい至上主義者たちのその言い方は甚だ一方的過ぎな感あれども、その意見には一理あると認めるに吝かではないところ大ではあるんだ」

――なぜ人はおっぱいに性的魅力を感じるのか。

結論から述べるなら、この命題に正しい答えは未だ示されていない。
それは人類が広く宇宙に進出する時代においてでさえも――である。

その答は、まさに宇宙の深淵を覗くが如く、
開闢の光の純白コットンに秘められし如く、
森羅万象の漆黒ナイロンに包まれるが如く、
お尻が奥へ奥へとお控えめされてゆく如く、

未来永劫深く深ーく隠されている。

「臀部擬態仮説は確かに魅力的な仮説なんだ。なぜなら、人はおっぱいもお尻も大好き! ――なことに異論を挟む余地やなし! そして、おっぱいとお尻の形は似すぎてる! ――となれば、そこに答えを見出したくなる気持ち、ええ、わかります、わかりますとも!」

答えを決定できない要因としては、一部に強い説得力を持ち、
また一部に反証可能な、いくつもの仮説が乱立している点が
挙げられるだろう。

少なくとも現代、15以上の仮説が検討されているが、
どれも間違っているのかもしれず――あるいは正しく、
また複数の要因により生じた表現型なのかもしれず――
その答えは、未だ誰も知るところではないのであった。

「だがしかし! しかしてしかし! ちょっとだけ待ってほしい! もう少しだけじっくり考えてみてほしい! 形が似通っているからといって、その発生理由までもが同一であると断ずるのは聊か尚早過ぎるのではなかろうか!」

つまり、くまはこう言いたい。

おやおや~、
お尻に似ているからお胸も好きだとかいう臀部擬態仮説は、
ちょっと後づけっぽいぞ!

「そこで、じゃあなぜ霊長類のオスはメスの臀部に注目するのか? それはオスの発情を誘うメスの臀部が、排卵を伝えるサインとして性皮が腫脹したものだから!」

霊長類の発情とは基本的にはウートリ(ウーマントリガー)
メスは排卵直前になると発情ホルモン・エストロゲンを急激に分泌する!
――からの性皮の腫脹が引き起こされる。

これは妊娠準備オッケー❤サイン。
それはオスのムダ撃ちを防ぐため。

そしてセックスがリスクの高い行為であるため。

だって、もしもバキューン中の無防備な状態で、
敵にドキューンされたら、ジュンジュワーして、
ひとたまりもありませんものね!

――一溜まりできちゃいますものね!
……ん? 待てよ、二溜まりか?
まさか三溜まりってことは
ないですよね?

――あとこれって確か賢者タイムもそれ故に生じる生理だとか
いわれていましたよね!

また機会損失の点から見てもムダパコは避けるべきでしょう。
エサを探すのに使える時間を妊娠に繋がらないパコに使う――
こんなにももったいないことはないですね?

まさにタイム・イズ・マネー・イズ・パコ。
パコとお金と時間とは、密接に関係してる。
――と、お金持ち(パパ)ほどこの真理を
理解した上で行動している真実。

――これを例えるなら、

チャージ金額がいつも1000円の人は損をしている事実。
チャージの時間も、改札に引っかかる時間もムダにしてる。
チャージはクレカでオートチャージするのがよいでしょう。
え、チャージって? ダク代くらい普通出してあげるよね?

「そしてここでMなる淑女諸君は気が付くことでしょう。――ん、ちょっと待って? 私、スパンキングプレイ以外でお尻を真っ赤に腫らしたことなんてないわ……。そうなんです! 霊長類は必ずしもお尻を真っ赤っかに腫らして排卵をアピールするわけじゃあないんです!」

ヒトに近縁の種として、まずはゴリラ、チンパンジーが挙げられるだろう。
ゴリラには性皮の腫脹は見られず、チンパンジーは腫脹する。

次にヒトと共通の祖先を持つとされるオランウータン、
テナガザルはどうか。どちらも性皮は腫脹しない。

「では、なぜヒトのお尻は真っ赤っかに腫れないのか、すなわち排卵サインはどこへ消えた? ――はい、分かりますか? メアリ君」

ここで、くま先生はいきなり少女を指名する。

「すみませんご主人様、少し考える時間をください」

指名された少女は戸惑いながらも考えてみた。

「分からなければ、分かりませんと正直に言っていいんですよ。聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥。分からぬことを分からぬ者より分からぬことを分かる者の方が賢いんですからね!」

無知の知を諭すくま先生。なかなかいい先生じゃありませんか。

――と思われたそこのあなた、その理由、当然そこにあるのは
生徒を想う師の心、なんかじゃありませんよね。

「ん? ん? どうかね、どうなのかねメアリ君、分かるのかね、分からんのかね? 先生が手取り足取り優しぃく教えてあげるから、ほら、正直に『先生分かりません』と言ってみたらどうなのかね? ん? ん?」

無知な少女に性知識を教えることで興奮を得ようとする
女生徒に抱く下心――
そう、それはどこまでも自分本位なる無知無恥プレイ。

「………………」

されども、無知な少女にそんなことわかる由もなし。
ご主人様の期待に応えようと懸命に答えを探ってる。

「ご主人様は『伯爵様の素敵なハーレム』という昔話をご存じでしょうか?」

そしてついに少女は答えを導き出してしまうのだ。
それがご主人様の期待に反する行いだとも知らず。

「え、なにそれ素敵な初耳」

素敵な初耳なくまに少女は物語る。

「昔々ある二つの領地に、二人の伯爵様がいて、それぞれ素敵なハーレムを持っていました」
「なにそれ羨ま」
「あるとき、エイ領のエイ伯爵様はヴイ領のヴイ伯爵様の素敵なハーレムを見て言いました。『隣の花は赤い』」
「それは他人の物はなんでもよく見えることのたとえ。つまり羨ま!」
「そこでエイ伯爵様はヴイ領へ攻め入り、ヴイ伯爵様を殺してその素敵なハーレムを自分のものにしてしまったのです」
「なにその急転直下!?」
「そうしてヴイ伯爵様の素敵なハーレムを手に入れたエイ伯爵様は、ヴイ伯爵様の素敵なハーレムの女が生んだヴイ伯爵様の子供を皆殺しにしました。エイ伯爵様は十月十日も我慢して、まだ生まれていなかった子供も生まれてからすぐに殺してしまいました」
「なんと!? それってつまり子殺し!?」

そう、排卵サインの隠蔽は「子殺し」がもたらしたのだった。

霊長類の配偶システムは「乱婚型、ハーレム型、一夫一妻型」
3種類に分類できる。

まず乱婚型、ハーレム型の種で、
父性を攪乱し子殺しを防ぐため、
メスの排卵サインの隠蔽が発生。

と、オスは自分の子である確証を得るため、
最優のメスを囲い込むように。

こうしてヒトは一夫一妻型へ。

(しかしそうなると男性にとっての最優の女性とは……)

少女の思考は胸の奥へ奥へ――大宇宙の深淵へ、
冴え渡るように、進んでいく。

「……ひょっとして、将来どれだけ子孫を残せるか――その指標となるのがそう、女の人のお胸なのではないでしょうか」
「!?」

そしてついに少女は辿り着く。

それすなわち、

残存生殖価(RRV)

「もし女性を一人選ぶ必要がないならば、男性は若い女性を好む必要はありません」

実際に乱婚型のチンパンジーは、少女よりも熟女を好む。
体が熟れていた方が、妊娠・出産の成功率が高いからだ。

――ところで、少し前までは最古の人類ともいわれていた
アウストラロピテクスも乱婚型だったらしいよ。
だから、睾丸とか現代人の2、3倍の大きさだったって。

じゃあ、ネアンとかはどうだったんだろうね?

いやさ、睾丸の話じゃなくて。
……え、もうちょっとだけ睾丸の話がしたい?
もうエッチなんだからぁ、しょうがないなぁ、
それじゃあもうちょっとだけ。

――統計的に見て、イケメンは睾丸が小さい。

・性的装飾:女性を惹きつけるためのルックス
・生殖能力:睾丸のサイズ

性的形質を発達させるためのエネルギーには限りがあるから、
これらはトレードオフの関係にあることが、
生物学的にわかっているよ。

はい、じゃあ睾丸の話はここまで。

もしもネアンのオスにホモサピのメスが犯され孕んだとして、
ホモサピのオスはメスに対して

『子供は敵の子ではない、お前の子、俺たちの子供だ』

って、言うのかね。めっちゃいい男じゃんね。
いやさ、やや唐突なのはわかってるけど、いま言いたくって、
おもしろいよね! 創世の大河マンガはやっぱり!
狂戦士の先生も楽しみにしてた物語って納得です!

――しかし狂戦士のつづきがもはや読めないなんて
まさに朝露の涙だよホントにね。

「でも一人しか女性を選べないならば、将来どれだけ子孫が残せるか――その指標に優れた若い女性を、男性は選びたがるはず。ただし若ければ若いほどいいということもないですよね。まだ体が仕上がっていなければ当然妊娠はできません。男性も精力の最盛期をムダに過ごすのは好まないはずです。では男性は女性の適齢期をいかにして知るのでしょう。ただでさえ髪を切ったことにさえ気づかない男性がいかにして……、つまり女性は、鈍感な男性にも適齢期を分かりやすく表現してあげる必要があった」

そこで、はい出ました、その母性!
その最高の優しさこそがおっぱい!
そう、あなたこそ僕の最優の女性!
君に決めた!(君にキめたい!)

「女性のお胸が膨らみ始めるのは思春期……、個人差はあれど初経の時期と密接に関係しているということは、誰にも否定できない事実です。しかもお胸のボリューム、柔らかさ、形といったものは加齢とともに変化していく……、つまりお胸を見れば成熟と老化を一目で判断できる。しかもこれなら、ご主人様の仰られていた『巨乳だろうと微乳だろうと、同じおっぱい』――大きいお胸も小さいお胸も好まれる理由さえ説明できます」

そう、ギリシアやローマにおいては、
古代・中世・ルネッサーンスを通して

『巨乳は醜い』

と考えられてきた。

小さく、白く、リンゴのように丸く、引き締まったおっぱい。
そう、まさに白〇姫(スノウ〇ワイト)の如きちっぱい!(諸説あり)
それこそが、まさに至上のおっぱいだとされていたのである。

これはちっぱいの方が『RRVが高い』
この一言で充分な説明となるであろう。

古代ギリシア・ローマの人たちにとって
巨乳とは、
もはや子どもに授乳するだけの乳母のおっぱい
だったのである。

「もしかしたら大きなお胸が好まれるようになったのは補正下着が登場したためだったのかもしれません。大きなお胸の形を整え、小さなお胸のように引き締めることができれば、それは美しく性的なお胸として人々に認識されるに至ったのではないでしょうか? さらに言うなら、ヒトの男性は適齢期を判断するためお胸を見て興奮し、そこから一生懸命意中の女性に求愛――想い通じていよいよ本番となったとき、そこで初めて女性のお尻がお胸に似ていることに気づく……、つまりお胸がお尻に似ているから男性はお胸が好きなのではなくて、お尻がお胸に似ているからこそ男性はお尻が好きなのかも……、そうなってくるともはやお胸こそがオリジナル。お胸こそが生命の起源――とも言うことができるのではないでしょうか」

お尻が先か、おっぱいが先か――いやさ、おっぱいが先か、お尻が先か。
それは未だ熱く熱く議論されるべき人類が抱える永遠のジレンマだろう。

「いずれにしましても、お胸もお尻も等しく愛するご主人様のこと、いったい誰が非難できるでしょう」
「………………」

少女が見出したこの答えこそ、まさに見事な『適齢期仮説』
からの、一元じゃなくて多元主義。

――おっぱいが好きか、おしりが好きか。

その問にいずれか一つを答とする必要があるだろうか。
二つに一つを選ぶ必要がはたしてどこにあるのか?

――三択だっていいじゃない。

だってその問が出てくる時点で、
あなただって「どっちも好きだ」
言ってるようなもの。

――FFが好きか、DQが好きか。
言ってるようだもの。

――せっかくここまできたんだから、みんなで。

必要なのは極限の精神状態で二択を迫られて尚、
それをぶち壊す発想ができること。
それが君の凄いとこ。

ハーフエルフか、メイドか。たんなのか、それともりんなのか。

――両方好きでいい。選べなくったっていい。

だって、愛しているから。

たとえ、

クソが!

優柔不断だ!

蝙蝠野郎が!

売国奴だ!

罵られたって。

――ああ聞こえる。みんなの声が聞こえてくる。

『そりゃあ我々だってセックスがしたいよ! 子供を生みたいよ! でもこんなお国で! こんなお給料で! いったいどうやって子供を育てりゃいいのさ! どうやって少子化に歯止めをかけるのさ! ならもう少子化を止めるにはハーレムしかないじゃんか! 経済力のあるリア充に未来を託して我々非リアは他次元に生きるしかできることなんてないじゃんか! うっうー……』

――そう! だって、好きなんだもん!

おっぱいも! おしりも! 両方最高に好きなんだもん!

それを聞いたくまは――

「……ぶ……ぶらぼぅおっほん! えっへん! げっふんげふん! ふ、ふーん……、そう……、それが君の最終的な答えなんだぁ……、へ、へぇ、そう……、そっかぁ、そうなんだぁ、ふーん? 本当にそれでいいんだぁ? ……ふーん、……へぇ、……ほー、……ま、まぁ、べっ、べつにいいんだけど……、べつにいいんだけれども、今ならまだ、考え直しても、いいんだよ?」

明らかに正解サインを隠蔽できていなかった。

「ふぁ、ふぁいなるあんさー?」

聞かずもがなのことまで聞いてしまっていた。

「ファイナルアンサーです」

それで少女は自信を持ってのファイナルアンサー。
まだテレフォンも50:50だって残っているぞ!

「てれれん……」

頭の中で鳴り響くドラムロール――

「どきどき……」

ドキドキしている裸の金髪少女――

『ワクワク……』

ワクワクしてるオーディエンス――

「んんんん……」

憎たらしい顔で焦らすくまさん――

はたして、結果やいかに!?
――ここで『一旦CMでーす』はもはや常識ですよね?




そして……、

「正解!」

そんなこんなで正解した少女。

「いやはや、ぐれいとふるべすとな答えだ、同好の士……よ! 本当に、本当に素晴らしいよメアリ君! その結論に至るまで、僕がどれだけの歳月を無為に過ごしてきたことか……、約9年! それをわずか数分の熟考で導き出してしまうとは……、まさに天才! おっぱいの天才! いやさ、おっぱいのじーにあーす! 本当に本当にありがとうございました、H先生とそれからH先生!!!」
「……ありがとうございます」

しかして、おっぱいの天才とか言われても素直に喜べない、
複雑なきもちの十二歳の全裸の金髪の少女がここにいるよ。

――まあ十二歳の全裸の金髪の少女といえばまさに思春期だからね、
おっぱいも膨らみ始めたばっかりだからね、
おっぱいの天才って言われも、ね。

――ちなみにセックスの天才って言われて女優さんたちは嬉しいのかね?
あまりに安直すぎるだろ、って思っちゃうのは私だけなんでしょうかね?
されど、素直な気持ちで専属女優さんを率直に推さずにはいられない――
それが漢(カントク)という生き物なんです! ええ、わかりますとも!

「いよぉし! ようやくおっぱいとおしりの話もできたことだし、ここからはサクサクマンガを読み進めていくよ!」
「はい!」

それでも漫画を読めて幸せそうな少女がそこにはいたのであった。

 

* * *

 

こうして、少女とくまは昼夜を問わず、
むさぼるように漫画を読み、
お腹が空いたらジャンクなフードを食べて、
目が疲れたら湖の畔で日向ぼっこ、
また漫画を読んで、食べて、眠くなったらベッドで眠る――
という、
まさに怠惰なビューティフルライフを数日間過ごした。

森とくまのぬいぐるみと裸の金髪少女と――

そこはまさに地上に残されし最後の楽園――

と呼ぶにもふさわしき場所であった。

――彼女たちはまだ知らない。

この先どのような地獄が待ち受けているのかを。

それはくまも少女も、筆者も。

そして彼もまたそのことを知らなかった。

 

≪つづく≫

 

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