よく晴れたとても天気がいい日、雪国の子・四郎とかん子の兄妹は、辺り一面銀世界といった感じの野原を散歩している。と、森の近くで狐の子・紺三郎に出会った。はじめ、四郎は、狐は人を騙すと警戒していたけれど、それは無実の罪を着せられたのだと主張する紺三郎の話を聞いて、その考えを改め、子狐と兄妹は仲良くなる。そして、紺三郎は四郎とかん子を狐の学校の幻燈会に招待する。幻燈会とは、教室の前の電子黒板にパソコンのプレゼン資料を映し出して発表会を行うあんな感じ。
私とお姉ちゃんは雪国の子ではないけれど、最近、四郎とかん子と同じように狐と出会って、びっくり。普通に道端で猫とケンカしてた。物知りなお姉ちゃんによるとアーバンフォックスっていうんだって。ニュースで見た熊と一緒だね。さっそく、近寄って撫でようとする私に、「ダメ」とお姉ちゃん。雪渡りを読んだ私は、「お姉ちゃん、狐が人を騙すなんて、無実の罪なんだよ。酔っ払いや臆病者のたわごとなんだよ。紺三郎が言ってたもん」、教えてあげた。偏見は差別となり、差別は世界貴族を、悲しみや憎しみを生み、やがて戦争が起きるんだよ。私達はたった一つの平和を願って、それを完成させるための最後の一片を探し出し、必ず、ひとつなぎの大秘宝を手に入れなければなりません。オタ先生が言ってた。すると、お姉ちゃんは「エキノコックス」。狐の体の毛にはエキノコックスの卵が付着していることがあるため、素手で触ってはいけないんだそう。エキノコックスとは寄生虫のことで、ヒトに感染すると肝臓をやられて、最悪の場合には死んでしまうんだって。包虫掌!!!! イヌイヌの実・現代種、モデル・アーバンフォックス、こわー。
約束の日、四郎とかん子はお土産のお餅を持って、狐の学校へ。狐の幻燈会は、枝からつるされた幕に写真を映して、歌ったり足踏みしたり、とっても楽しそう。休憩のときには黍団子がふるまわれた。ここでも、出された黍団子を食べるかどうか、二人はちょっと迷ったけれど、『紺三郎さんが僕らを欺すなんて思わないよ』と四郎が言って、完食。その味はほっぺたも落ちそうなほどおいしかったそう、いいな、私も黍団子を食べたい。その様子を見た狐の学校の生徒たちは大喜び。帰りには、二人の後を追いかけていって、どんぐりや栗や青びかりの石をポケットに入れて、見送ってくれた。
私が公園で、ライターを持って虫を焼いて遊んでいると、「そんなことしちゃダメだよ」、知らないおじさんが話しかけてきた。「よかったら、おじさんと一緒に来ない? もっと楽しい遊びを教えてあげるよ」「楽しい遊びって?」「動画を撮ってアップするんだよ。おじさん、動画配信者をしてるんだ。ローリハバーっていうんだけど。ヨーチューバーとか、学校でも人気じゃない? おじさんと一緒に動画に出たら、有名人になれちゃうかもよ」。私は有名人になることについて、ちょっとだけ考えてみた。もしも私が有名人になって、お母さんみたいにドラマや映画に出られるようになったら。そしたら、お母さんは、私が勉強が嫌いでも、もう叩かないでくれるかも。お姉ちゃんみたく頭のよくない私にもやさしくしてくれるかも。でも、お姉ちゃんが知らない人について行ったらダメって言ってたっけ。だけど、はじめから疑うばかりじゃ相手に失礼じゃないかしら。雪渡りの四郎のように相手の話をよく聞いて、信じてあげなくっちゃね。おじさんは、虫を焼く遊びがよくないことだって、教えてくれたし。だから、いいおじさんなんじゃないかな。四郎とかん子だって、勇気を出して紺三郎を信じて黍団子を食べたら、とってもおいしかった。見かけだけで人を判断するのは差別だって、お姉ちゃんも言ってた。たしか、ルッキズムって言ってた。でも一応、私はチラッとおじさんを観察してみた。普通にきれいないい服を着てた。クラスの男子曰く、ヨーチューバーって儲かるらしい。見た目的に怪しげなとこはない。けど、ちょっとだけ気になるのは、ズボンのお股のところが膨らんでいるところ。ポケットに入れた携帯が、変な位置にいっちゃったのかな? たまにブルブルしてるし。うん、我ながら名推理。とかなんとか考えていたら、「何してるの?」、お姉ちゃんが迎えに来てくれた。私は「このおじさん、ローリハバーなんだって。私、動画に出てみない? って、スカウトされてたんだよ。MUKAKINみたいになっちゃうかも」。それを聞いたお姉ちゃんはすごく冷たい目をしておじさんを一瞥。青白い月に照らされた雪原の真ん中みたいにひんやりとした時間がしばらく経った。でも、おじさんは逆に暑くなってきちゃったのかな、顔にいっぱい汗が浮いてる。私が何か言った方がいいのかな、口を開こうとしたとき、「携帯、鳴ってますよ」、お姉ちゃんはおじさんの震えるお股を指さして言った。あ、やっぱり携帯だったんだ。さすが、お姉ちゃん。見た目は子供、頭脳は大人、それって、ただの小生意気な子供じゃないんだからね? 「あ、ああ、仕事の電話が入っちゃったみたい。じゃ、じゃあ、おじさんはこれで……」、おじさんはそそくさとその場を立ち去っていった。私は雪渡りを読んで私が学んだことをお姉ちゃんに教えてあげた。「お姉ちゃん、誤解や偏見をなくして、純粋な気持ちで向き合うことが大切なんだよ」。そんな私にお姉ちゃんが教えてくれた。「第一がローリハバーには決してついて行くべからず、第二がエキノコックスに注意せよ、第三が火で虫を殺すべからず」だって。はーい。

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