【推しの子】【マンガ】の読書感想文【推しが3ピーしてたから】

マンガは怒られそう

【推しの子】を三つの要素で表すなら、転生×芸能界×復讐劇といった感じ。

主人公のアクアは、アイドル・星野アイの子として生を受けるが、じつはアイの熱狂的なファンであり、彼女の出産時の担当医でもあったゴローが、アイのストーカーに殺され、転生した姿。

アクアには双子の妹ルビーがいて、こちらはかつてゴローに懐いていた入院患者にして、彼がドルオタとなるきっかけを作り、十二歳という若さで病死したさりなの生まれ変わりであるのだが、お互いまだそのことには気づいていない。

推しの子となり、幸せな日々を過ごす二人だったが、生まれ変わって三年が経った頃、アイがゴローを殺したストーカーによって自宅玄関にて刺殺されてしまう。

出産時の病院、自宅の住所など、固く守られているはずのアイドルの情報が、なぜ一般人のストーカーに突き止められてしまったのか。

アクアが出した結論は、情報提供者がいて、それは誰も知らない自分達の父親で、芸能人である可能性が高い。

かくしてアクアは、アイを殺した真犯人を見つけ出し、自らの手で復讐を果たすため、芸能界へと足を踏み入れることになる。

とまぁ、1巻のあらすじはだいたいこんなところで、なにこれすごくおもしろいと、コミックスを全巻揃える決意を固めたのは、もはや言うまでもないだろう。

そんな単行本派の私が【推しの子】をここまで読んで思ったのは、「なんでそこまでアイドルにハマれるの?」ということと、「子供が欲しい人は試験と研修を受けるべきじゃないの?」ということ。この二点について順番に綴っていきたい。

まず、なんで本作の主人公のようなドルオタは、そこまでアイドルにハマれるの?

結局、アイドルも恋愛してるじゃん。

私とは別の人と。

セッして、子供作って、結婚するじゃん。

アイは言う。『アイドルは偶像だよ? 嘘という魔法で輝く生き物』

確かにそう。たぶん、ほとんどのファンの人はそれを分かっていて、「アイドルには綺麗に騙してほしい」と願ってる。

でもさ、どうせなら、騙されたくなくない?

そして、それって不可能なんかじゃなくない?

なぜなら、アイドルはアイドルをやっている期間だけは、真剣に恋愛を我慢してくれればいいんだから。

嘘を吐く原因をそもそも作らなければいいのだから。

世の中には恋愛禁止を謳っているアイドルグループだって少なくない。

なのに、熱愛報道されるアイドルのなんとまぁ多いこと。

それを見るたびに、まぁアイドルなんてこんなもの、きっと他のアイドルもやっているに違いない、実感させられてしまうではないか。

もちろん、恋愛禁止ルールが人権的にどうなの? という意見も分かる。

人間には幸福を追求する権利があるべきで、恋愛が一番楽しい年齢にそれを楽しめないのは、人生の大きな損失だとも理解できる。

しかし、ビジネスとして恋愛を売り物にするなら、そこは諦めざるを得ないのではないか。

アスリートだってあらゆることを犠牲にして、栄光を目指しているではないか。

犠牲の分だけ得られるものだって大きいはず。

だってこっちは、観賞用・保存用・布教用にと、CDやグッズをたくさん買っているんだぞ!

と思っていたら、どうやらそうでもないらしい。

『ねぇ、アイドルって月収100万くらい稼ぐものじゃないの?』

そう問いかけるルビーに対してアクアの答え、

『ンなワケないだろ。歌唱印税もテレビ出演料もメンバーと山分け……、ライブは物販が売れなきゃ余裕で赤字、そして衣装代は天引き……、月100万はマジで一握り』

さらに、アイのマネージャーであるミヤコさんによれば、

『アイドルグループって結局数十人が束になって、たった一人の芸能人と仕事を奪い合う業態なワケですよ…、セット売りでやっと仕事が取れる現状で単体で勝負ってなるとやっぱ壁は厚いですよ? 個人の仕事がしたくてアイドル卒業したものの一人じゃ仕事が取れず、六本木の高級飲食店でバイトしてたり、港区女子になってギャラ飲みで食い繋ぐ元アイドルも滅茶苦茶居るじゃないですかぁ』

……世知辛い。

そりゃあ、恋愛だってしたくなる。

いい男(女)を捕まえらんなきゃアイドルなんてやってらんない。

ただでさえ周りには魅力的な芸能人がわんさかいるわけだし。

……はぁ、推しがそんなふうに考えなくてもいいよう、もっと我々のお布施をアイドルに還元してあげてほしい。

『頑張ってる人にお金が行き届かないなんて世も末ね!!』

ホントにね。

でも、だからといって、アイドルの恋愛だけは絶対に許せない私がいる。

私の推しのアイドルが、私の推しじゃないアイドルを交えて、無論のこと私の推しじゃないセクシー女優と3ピーなんて聞いた日には、あなたを殺して私も死ぬ、そんなになってもおかしくない私がここにいるよ。

アイのストーカーのリョースケ君みたいにならないよう気をつけたいと私は思った。

つぎに、子供が欲しい人は試験と研修を受けるべきじゃないの?

アイは十六歳で子供を産む。

しかも、シングルマザー。

父親は誰も知らない。

さらに施設育ちで、頼れる親もいないときてる。

これで生まれてきた子供が絶対幸せになれると言えるだろうか。

もちろん、幸せになれないとも言えない。

漫画のようにミヤコさんの助力が得られ、生まれてきた子供もアクアみたいに物分かりがよく賢くて、なんやかんやでやさしいしっかりものに成長するかもしれない。

でも、現実的にそうなる可能性ははたしてどれほどあるだろう。

子供にとって一番実感しやすい父母の愛情バロメーターは、やはり一緒に過ごしてくれる時間だ。

そして、親の時間は有限だ。

仕事に消費され、日々の生活に消費され、残りの時間が子供と一緒に過ごすために使われる。

そうなってくると当然、片親よりも両親揃っていた方が良いことに、異論の余地はない。

その上、さらに生まれてくる子供が幸せになれる確率を飛躍的に上げるため、十六歳以上の人が子供を欲しいと願うなら、その都度試験を受けさせる。

問われるのは、その人が子供をしっかりと育てられるかどうか。

その人の健康・心理状態、経済的状況、仕事や学業の状態、助けてくれる人はいるのか、などなど。

書類審査から面接、筆記試験、実習、さらには特殊部隊の訓練さながらに受験者をこれでもかこれでもかと肉体的・精神的に追い詰め、ギリギリの心理状態にあって、それでもなお我が子を想う気持ちがあるか、徹底的にチェックする。

もちろん、この試験を98点以上で合格しなければ、子供を持つ資格は得られない。

そして、試験を合格した暁には、子供が生まれてくるまでの期間、子供を育てるのに必要な実質的知識・技術を学ぶための研修を受ける。

ここまですれば、親の遊び半分の気持ちで生まれてくる子、自分の見栄のために着せ替え人形みたく扱われる子、親の夢や跡を押しつけられ将来の可能性と職業選択の自由を奪われる子、ストレス解消のサンドバッグにされてしまう子、後先考えずキラキラネームをつけられてしまう子(愛久愛海は顔が良くなかったら、まじ地獄の将来しか予感できないからね)、そんな子供達が生まれなくて済むはず。

無論、こんなどこぞの国のような施策、私が暮らす国で現実的に困難なのは分かってる。

「総理! その予算は一体どこから出すんですか!」「そうだー」「すやすや……」「そんなの少子化を促進させるだけじゃありませんか!」「いいぞー」「ぐうぐう……」

議員さん達の答弁も仰る通り。

でもね、親がこの夏休みの間に離婚したりするとそういうことを考えてしまう子供の気持ちも分かってほしい。

【推しの子】の読書はそんなあれこれを私に思考させる。

アクアとルビーの母親であるところのアイは、親に捨てられ施設育ちという境遇から、『私は昔から何かを愛するのが苦手だ』と述懐する。子供達に本心から愛してると言えるのか、悩んでいる。

しかし死の間際、子供達にちゃんと愛してると言うことができる。

とても感動的なシーン。

ではあるんだけど、ひねくれものの私なんかは、いやアイ、ちゃんと子育ての苦労してたかしら。転生者である子供たちは、普通の子供よりも手間がかかっていないんじゃない? 夜泣きの対応とかおむつ交換とかしてた? てか、ほとんどミヤコさんがやっていたんじゃないの?

なんだか仕事のときはお手伝いさんに世話を任せっきりにして、たまの休みに帰ってきてはペットと戯れ、誇大に愛犬家をアピールしているあの感じを彷彿とさせる。

子育ての苦労も知らないで子供に愛してると言うのって、ペットを愛してると言うのと変わらないんじゃなかろうか。

いや、ペットだって我が子だって私も思うけど、それを宣う飼い主でペットを産まれたときからちゃんと育てている人って実際どれくらいいるだろうね。

まぁマンガ的な都合上、おむつ交換とかの細かい描写はされていない可能性が高く、一般的な子育てシーンは大幅にカットされているため、そのように感じられてしまうだけなのかもしれない。

ただただ私の性格が悪いだけなのかもしれない。

けれども、片親の限界、十六歳の限界というのも確かに存在しているはず。

そうした要因により、不幸な子供が生まれてしまう恐れも決して少なくないはずだ。

我が国の政府には安易な増税に走らず、寝ている議員を削減するなりなんなりして予算を捻出し、ぜひともこの施策を実現させてほしいと私は思った。

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「この芸能界(せかい)において嘘は武器だ」 地方都市で、産婦人科医として働くゴロー。芸能界とは無縁の日々。一方、彼の“推し”のアイドル・星野アイは、スターダムを上り始めていた。そんな二人が“最悪”の出会いを果たし、運命が動き出す…!? “赤...

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