オーバーロード【ラノベ】の読書感想文【私の理想の上司キャラ第1位】

ラノベは怒られそう

理想の上司になりたい。そう思わない人はいないだろう。誰だってセクハラやパワハラで嫌われるような上司にはなりたくないはず。もちろん、まずは大会で優勝して、売れて有名になるのが先なのだが。長く有名で居続けなければならないのだが。まだまだ先の話ではあるが。しかし、何事も早くから準備しておくに越したことはない。今から理想の上司像を思い描いておいて、将来理想の上司ランキング第1位を目指すのも悪くない。うん、悪くない。そんなわけで、私は今回オーバーロードを小説でも読んでみることにした。アニメを見て、この主人公は私の理想の上司かもしれないと思ったからだ。

さて、オーバーロードの物語は、今やこの手の作品に数多見られる異世界転生あるいは異世界転移もの。主人公は、やり込んでいた体感型オンラインゲームのサービス終了日、自らが長を務めるギルドの本拠地、ナザリック地下大墳墓で名残を惜しみながらサービス終了の時刻を迎えるが、いつまで経っても強制ログアウトが起こらない。不審に思っていると、プレイヤーの命令なしには動かないはずのNPCが、まるで生きているかの如く意思を持って動き、話しをすることに驚く。そして、自身もまたゲーム内で使用していた骸骨の見た目をしたモンスターキャラになってしまっていた。NPCたちを使って調査を進めていくと、どうやらゲームと似ているがまったく違う異世界に、ナザリック地下大墳墓ごと転移しているらしいことが判明する。主人公はこの世界で生き延びるため、あるいは自分と同じように転移しているかもしれない仲間たちを見つけるため、はたまた、ぽろっと口にしてしまった世界征服のため、ゲーム時代のギルド名アインズ・ウール・ゴウンを名乗り、世界を探訪していくことになる。

では、本作の主人公であるアインズ様の、一体どの辺りが理想の上司かもしれないのか、見ていきたい。ちなみに、主人公の呼び名は本名だったりハンドルネームだったりあるのだが、ここではアインズ様で統一したい。

まず物語の冒頭部分、ゲームのサービス終了時間が訪れても強制ログアウトが発生せず、NPCがまるで生きているように話し、動き出したとき、アインズ様は混乱や驚愕を覚えながらも、必死にその感情を押し殺そうと努めていた。これはかつてのギルドメンバーの一人が言っていたことを実践した結果であるが、その言葉の意味は概ね、いつも冷静さを失うな、といった感じで、これこそまさに理想の上司が備えているべき能力の一つではなかろうか。冷静さを失ったときに、人は大きな過ちを犯す。始めは小さなミスだったのに、それを慌てて修正しようとして失敗、事態がより深刻化してしまったような経験は誰にだってあるだろう。何かミスをしてしまったときには一旦作業の手を休め、日の呼吸、傍らにコーヒーでもあればそっと一口、そうしてから、同僚だったり上司だったりに相談する。これで起こり得た大きなミスは、インシデントで済んだかもしれない。しかし、いざ問題が発生し、冷静でいるのはなかなか難しいと私も常々実感している。例えば、テスト終了間際、答案のケアレスミスに気づき、慌てて消しゴムで訂正しようとしてビリッ。そんなことがまれにある。学校のテストもDX化を進めてくれればいいのに、とはよく思う。ところが、アインズ様は冷静だった。ゲームから出られない、このままだったらどうしよう、明日の仕事は……、いろんな不安に襲われながらも、冷静な論理思考を回転させた。そして、絶世の美女たるNPCにこう言った。「胸を触っても良いか?」。……すごい。すごすぎる。これの何がすごいのかといえば、じつはゲーム内では18禁行為が固く禁じられており、女性NPCの胸が揉めるということはこれすなわち、仮想世界が現実になったという証左となる。つまりアインズ様は、この異常事態にやけっぱちとなり、普段から溜まりに溜まった性欲が暴走、したわけではなく、冷静に、論理的に、豊かな膨らみを持つNPCの、その豊穣たる果実にたっち・みーしてぷにっと萌え、決して、セクハラやらパワハラではないんだからね、さぁ、次行ってみよう。

アインズ様の実験は続く。今度は、ナザリック地下大墳墓第六階層にある円形闘技場へと移動。そこでは、十歳ほどの見た目をした少年少女のNPCが登場する。ここでアインズ様が見せる理想の上司の資質とは、優しさだ。まだ仕事に不慣れな新入社員にそっと差し出される午後ティー、同時にかけられる一言、二言の励ましの言葉。それだけでいい。それだけの気遣いが嬉しい。ああ、この上司に迷惑はかけられない。頑張ろう。そんな気持ちにさせてくれる。私もテストを破いてへこんでいたとき、大丈夫、テープで貼れば丸付けできるから。先生の優しい言葉にどれだけ救われただろうか。アインズ様もそう。一仕事終えた少年少女に自ら水を注いだグラスを差し出す。その後も軽く会話を交わして、少女の頭をぽふぽふと撫でるようにしている。……やばい。やばすぎる。これの何がやばいのかといえば、アインズ様は部下というだけでなく、子供にも優しい。私などは子供にどう接していいのか分からないタチなので、自然に子供と触れ合えるアインズ様は尊敬できる。決して、容姿端麗な少年少女たちにアソコがぶくぶく茶釜してセクハラ行為に及ぶような〇リコンあるいは〇ョタコンなんかじゃないないったらない、少年少女のNPCは闇妖精だから実際の年齢は76歳なんだからね、そりゃ、も一つ行ってみよう。

最後に、理想の上司が備えているべき器量として、コミュニケーション力を取り上げたい。アインズ様は別に女子供だけを特別扱いしているわけではない。ちゃんと男性の部下とも会話をしている。いろいろあって少し疲れたアインズ様。この非常時、精神に負担をかけるのは不味い、重要な局面で過ちを犯しかねない、とリフレッシュのため外へと向かう。さすがアインズ様、自己管理がちゃんとできている。とはいえ、ナザリック地下大墳墓の主たるアインズ様を一人で外に出すわけにはいかない。そこで、スーツ姿の男性NPCがお供をすることに。飛行の魔法で重力から解き放たれると、そこには満天の星空が。本当に素晴らしい。どこぞのブルー・プラネットとは違って、この世界には大気汚染も、水質汚染も、土壌汚染もないのだろう。そこでアインズ様は言う。私がこの地に来たのは、誰も手に入れていない宝石箱を手にするためかも知れない。それを聞いた部下はこう返す。お望みであればナザリックの全軍をもって、この宝石箱を手に入れてまいります。するとアインズ様は、世界征服なんて面白いかもしれないな。男の人は皆ロマンティスト。雰囲気に酔って、冗談を言い合う。私も学校で、大人の先生が、じつは私の好きなゲームを先生も好きなのだと話してくれたときには、非常に親近感を覚えた。やっぱり、結婚するなら幼なじみよりも大富豪の娘よね。そんな冗談が言い合えて楽しかった。ああ、いい。とってもいい。これの何がいいのかといえば、ちょっとした冗談を言い合える関係性を普段から築いておけば、仕事の際にも円滑なコミュニケーションが可能となり、勘違いや思い込みによる失敗を防げる。そう、この冗談を真に受けてしまった男性NPCが、後にこれをアインズ様のご意思であるとして他のNPCたちに共有したがために、ナザリックは世界征服に向って動き始めることになってしまうのだが、大虐殺が起こってしまうのだが……あれ? これはどう言い繕ってみても、アインズ様のミスなんじゃね? 弁解も擁護もできないんじゃね?

はい、そんなわけで私は今回オーバーロードを読んで、理想の上司に必要な、冷静さ、優しさ、コミュニケーション力を学んだ。これらを身につけられるよう日頃から努め、将来は理想の上司ランキング第1位を目指したいと決意を新たにした。と同時に、じつはアインズ様は私の理想の上司なんかじゃなかったことに気付いてしまった。どんな理由があったにせよ、結局、セクハラはセクハラだし、大虐殺は大虐殺だからね。まぁ、ロ〇コンやらシ〇タコンやらは、私もちょっと言い過ぎたなと反省している。アインズ様はたぶん純粋に子供が好きなだけであって、きっといいお父さんになれそうな気がしてる、頑張れアルベド。しかし、おかしいな。アニメで見たときには、もっと理想の上司っぽい感じがしたのだけれど。やっぱり、活字と映像とでは微妙に受ける印象が変わってきて、また違った味わいを楽しめるのだなと、再認識できた。大変有意義な読書だった。ちなみに、私の理想の上司キャラ第1位は、とある幼女であるから、この結果もまったく問題なし。とはいえ、これも原作を読めば、また印象が変わってくるのかしら。また来年の夏休みの宿題にでも、読書感想文を書いてみたいと思った。

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